アルテアエンジニアリングは、クリエイターやデザイナーに向けたイベント「solidThinking Converge 2017(以下Converge)」を11月22日に開催する。コンピュータシミュレーション技術を提供する同社がデザイナーへ発するメッセージとは。同社の代表取締役 社長を務める綾目正朋氏に話を伺った。

11月22日に開催される「solidThinking Converge 2017」。基調講演ではリオオリンピック公式卓球台など、印象的な曲線を生み出すプロダクトデザイナー澄川伸一氏、『マツコロイド』や『ジェミノイド』などのアンドロイド開発で著名な石黒浩氏が登壇

アルテアエンジニアリング 代表取締役 社長 綾目正朋氏

30年にわたり培われたシミュレーション技術

アルテアエンジニアリングは、1985年に米国ミシガン州トロイで設立された。ミシガン州といえば、デトロイトを中心とした自動車産業の盛んな地域。創業当時は自動車開発向けの技術コンサルティングを行っていたが、コンピュータを使ったシミュレーションソフトの重要性に着目し、ソフトウェアの開発を開始する。モデリングソフト「HyperMesh」をはじめ、1994年にテクノロジー・オブ・ザ・イヤーを受賞した構造解析・最適化ソフト「OptiStruct」、衝撃・衝突解析、流体解析、機構解析、電磁場解析など、モノづくりに欠かせないさまざまなシミュレーションソフトを展開。これらは現在「HyperWorks」というスイートにまとめられており、自動車産業のほか、さまざまな産業のR&D部門を支えている。

さまざまなシミュレーションソフトを統合したスイート「HyperWorks」

設計者がシミュレーション技術を利用できる「solidThinking」

だが、現代では携帯電話やスマートフォンに代表されるように、製品ライフサイクルがどんどん短期化している。なおかつグローバル化によって競合との開発競争も激化。シミュレーションはもともと実験を減らすための技術で、CADを作成してからシミュレーションを行うのが通例だったが、同社はより早い段階で適用し、設計の初期段階でデザイナー自身がある程度のエンジニアリングを行うことで、さらに設計時間の短縮が行えると考えた。そのために開発されたのが、solidThinkingブランドだ。GUIやワークフローを見直し、CAE(Computer Aided Engineering)の専門家でなくても同社のシミュレーション技術を利用することができる。

solidThinkingにはデザイナー自身が3Dデザイン、構造解析・構造最適化、システムモデリング、製造性解析等を行い、設計コンセプトを決定できるさまざまソフトウェアが含まれる

solidThinkingの2つのソフトウェア「Inspire」と「Evolve」

solidThinkingには設計コンセプトを決定するためのさまざまソフトウェアが含まれているが、今回のConvergeでピックアップするのはInspireとEvolveだ。Inspireは、CADのように3Dモデリングを行いつつ、前述のOptiStructをベースとした高度な構造解析、構造最適化を抵抗なく行える。Evolveは工業デザイナーがデザインに集中して発想を広げることができるソフトウェアで、個人や学生を中心に利用が広がっている。2製品とも年一回メジャーアップデートを行い、機能追加や改良スピードが速いのが特長だ。

分かりやすいGUIで、高度な最適化技術を利用できるInspire

価格が抑えられ個人でも導入が容易なEvolve

solidThinking事例と手法を知ることができる「solidThinking Converge 2017」

Convergeでは、この2つのソフトウェアを使った事例や手法を聞くことが可能だ。代表取締役社長の綾目氏は、Convergeを開催する理由について「solidThinkingを使ってほしいというよりも、クリエイターやデザイナーに向けた『デザインにエンジニアリング的なアプローチを導入してみませんか?』というメッセージです」と説明する。

構造や応力などのシミュレーションは、これまで解析エンジニアが担当していた分野だが、「実際に図面を描く人たちが、自分で解析を行えるようになることで、新しいエビデンスを得られるのではないでしょうか」と綾目氏は言う。

例えば、既存のデザインからさらに軽量かつ壊れない形の追求、一定の力が加わった場合にどのような不具合が発生するのか、といったシミュレーションをコンセプトデザイン段階で事前に行うことができる。これによって手戻りが減り設計期間を短縮できるのはもちろんのこと、逆にこれまでにない新しいデザインを生み出すことも可能になるという。

こういった解析技術をうまく利用しているのが、Convergeで講演予定のインテリア・プロダクトデザイナー、柴田映司氏だ。同氏は現行モデルのハンドバイクの構造最適化を行い、それをもとに設計を一新。軽量化や高剛性化と同時に、イノベーティブなデザインを実現しているという。

柴田映司氏がsolidThinking InspireおよびEvolveを使って開発した新型ハンドバイク

大企業でもこのような取り組みが進められており、例えば日野自動車では、「クリエイティブ」と「エンジニアリング」の両立のためにInspireを採用。工業デザイナーの多くがもつ「工程が進むごとに設計したデザインが変化してしまう」という不満を軽減した。その成果はコンセプトカー「PeopleMover」の提案などに表れている。

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CADソフトとは逆のアプローチで進化したsolidThinking

昨今ではCADソフトにもシミュレーション技術が導入されてきており、デザイナーが構造解析を行える機会は増えている。しかし綾目氏は、「solidThinkingはCADソフトと似ているようですが、CADのシミュレーションとはバックグラウンドが違います。GUIは近づいていますが、CADかというと、CADではありません」と説明する。

CADとは逆方向からアプローチした設計ソフトが、solidThinkingだ。高度な安全性が求められる自動車産業などで培われたハイエンドなシミュレーション技術こそが、solidThinkingの特徴といえるだろう。設計者が事前に知りたい情報をすべて提供できるという点が、同社ソフトの信頼性に結び付いている。

最後に、綾目氏からクリエイターやデザイナーといった設計者に向けたメッセージをいただいた。

「我々は、これまでのエビデンスを元にした本当のシミュレーションを提供したいと思っています。設計者が、安心してシミュレーションをシームレスに使えるような環境ですね。そのために1つのソフトで完結できたり、他のソフトに簡単に持っていけたりといったユーザーエクスペリエンスを追求しさらに改善していきたいと考えています。新しいアプローチに興味のある方には、ぜひ一度Convergeにご来場いただきたいと思います」

デザイン×テクノロジー「solidThinking Converge 2017」

solidThinking Convergeは、第一線で活躍するデザイナーのノウハウ、工学ソフトウェアの取り入れ方などの講演を通して、デザインにテクノロジーをプラスするためのヒントや手法を得るセミナーです。今年は世界の5ヶ所で開催されます。

基調講演として、昨年リオオリンピック公式卓球台をデザインして世界的脚光を浴びた澄川伸一様と、エリカやハグビーなどのアンドロイドの開発で著名な石黒浩様にご登壇いただきます。また、ユーザーセッションではトポロジー最適化ツールInspire等を使用したパラリンピック眞田卓選手の義足カバーのリデザインプロジェクト、ハンドバイクの設計プロジェクトなどをご紹介します。

分野、企業/ 個人を問わず、デザイン・設計に関わる方は奮ってご参加ください。

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