PC自作の中上級者なら、自分でRAIDを構築して高速なストレージ環境を実現している人も多いと思う。また、RAIDという言葉を聞いたことはあっても、実際にRAIDを構築したことがない人も多いのではないだろうか。以前は、RAIDを構築するには専用RAIDカードを購入する必要があったり、OSのインストールが面倒だったりで、ハードルが比較的高かった。
しかし最近は、チップセットが標準でRAID機能をサポートするようになり、RAIDのための追加投資が不要になった(チップセットの種類やマザーボードによっては、RAIDに対応していないものもある)。OSのインストール時も追加ドライバが不要になり、RAID構築のハードルは格段に低くなった。ここでは、まだRAIDを構築したことがないという人向けに、Samsung SSD 840 EVO(120GB)×2台を使ってRAID 0を構築する手順を丁寧に紹介していきたい。
RAIDとは
まずRAIDとは何か、簡単に説明しよう。RAIDとは「Redundant Arrays of Inexpensive Disks」の略で、複数台のディスクを組み合わせて、仮想的な1台のディスクとして使う技術のことである。RAIDには「RAID 0」から「RAID 6」まで7種類のレベルがあり、それぞれディスクの構成が異なり、信頼性や性能も違う。一般的に使われているRAIDレベルは、RAID 0、RAID 1、RAID 5、RAID 6の4種類で、RAID 1+0のように組み合わせて利用されることもある。
RAID 5やRAID 6は信頼性は高いが、RAID 5では最低3台、RAID 6では最低4台のディスクが必要なので、主に企業やエンタープライズ用途で利用されている(もちろん個人で運用しているユーザーもいる)。コンシューマー用途では、最低2台のディスクで構築できるRAID 0やRAID 1が主流だ。チップセット標準のRAID機能も、RAID 0とRAID 1をサポートしているのが一般的である。
そのRAID 0はストライピングとも呼ばれ、複数台のディスクにデータを分散して読み書きすることで高速化する仕組みだ。ディスクを2台使うと、ディスクが1台のときと比較して、シーケンシャルアクセス速度が2倍近くに向上する。ただし、他のRAIDレベルと違って冗長性がないため、耐障害性は低い(ディスク×2台を使う場合、1台が故障すると全体のデータが失われる)。
もう1つのRAID 1はミラーリングとも呼ばれ、複数台のディスクに対して同じ内容を書き込むことで、耐障害性を高めるものだ。1台のディスクが壊れても、別のディスクが健在なら、データを読み出すことができる。その代わり、ディスク×1台の場合とアクセス速度はほぼ変わらず、複数台のディスクを使っても1台分の容量しか利用できない(1TBのHDD×2台を使っても、総容量は1TB)。
RAID 0(ストライピング) |
RAID 1(ミラーリング) |
RAID 0とRAID 1の概念図。RAID 0は2台のSSDにデータを分散して書き込み、RAID 1は2台のSSDに同じデータを書き込む。赤枠で囲った部分が書き込みデータの違い |
SSD×2台なら、爆速を実現できるRAID 0がおすすめ
もともとRAIDは、安価なHDDを使って信頼性やスピードを上げるための技術だ。その意味では、性能だけを高めるRAID 0は、RAID本来の考え方からはやや外れる。とはいえ、ディスク容量を無駄にせず性能を大きく高められるRAID 0は、コンシューマーにとって魅力的だ。
そこでSSDだが、HDDより高速で、機械的に動く部分がないため耐衝撃性も高く、ディスクが物理的にクラッシュする可能性はかなり低い。特にランダムアクセスが高速なSSDは、RAID 0の構築にも最適なのだ。
SSDはシングル構成で使っても十分に高速だが、SSD×2台でRAID 0を構築すると、「爆速」と呼ぶにふさわしい性能を叩き出す。しかも今回の例とするSamsung SSD 840 EVO(120GB)×2台なら、1台あたり9,000円前後で購入でき(2014年4月時点)、コストパフォーマンスも高い。ただし上述したように、RAID 0では1台のSSDが故障すると、すべてのデータが読み出せなくなってしまう。RAID 0を利用するなら、重要なファイルのこまめなバックアップが必須だ(RAID 0におけるバックアップのポイントについては後述)。
バックアップとともに、運用上の注意点がある。RAID環境のSamsung SSD 840 EVOでは、Samsung SSD専用ユーティリティ「Samsung Magician」が使えないことだ。よって、Samsung SSD 840 EVOのファームウェアを更新したり、詳細なステータスを調べたりできなくなる。RAIDを組む前にファームウェアのバージョンを調べ、必要に応じてファームウェアを更新しておくとよいだろう。