普段Macを使っている筆者だが、「Mac」ではなく「OS X」を利用している、という認識が強い。確かにOS Xは(ハードウェアとしての)Macでなければ動作せず、不可分な製品として市場に供給されているが、筆者の心の内ではきれいに分かれている。

OS Xと他のデスクトップOSを比較したとき、さまざまな角度から見てOS Xの魅力を実感している筆者だが、正直、ハードウェアはそこまでではない。たとえば、iMacには心惹かれないし(用途が違い過ぎる)、MacBook Proにも薄さや重量など合点のいかない部分がある。ありえないことは承知のうえだが、Intelプラットフォーム移行後に"あのWindowsマシン"でOS Xが動かないものか、と夢想した経験が何度もあることを告白しておこう。

それに、日頃利用しているのはMacだけではない。多くの時間をMacとともに過ごしていることは事実だが、稼働中のWindowsマシンもある。そもそも仕事柄、多くの新モデルに触れる機会があるし、いろいろ試さないことには製品の優劣は語れない。だから、この「New XPS 13」についても興味津々なのだ。

New XPS 13

海上忍
テクニカルライター。MacやiOSを中心に活動しており、技術的にな裏付けのある解説と一歩踏み込んだ解析には定評がある。現在、マイナビニュースにて「新・OS Xハッキング」を連載中。

外観とスペック

「New XPS 13」の意匠はシンプルだ。天板部分に「DELL」のロゴが配されているほか、特に目立つ意匠はなく、緩めに設計された四隅のカーブからは、WindowsノートPCによくある"業務用感"が感じられない。天板はアルミで底面はカーボンファイバー、パームレスト部分はマグネシウム加工材と、一体成形ではないが質感は高い。

ボディは最厚部18mm/最薄部6mmのくさび型、奥が厚めで手前に向かい細くなる形状だ。くさび型デザインは、Ultrabookを標榜するWindows薄型ノートに多く採用されているが、そのデザイン上の長所はシンプルさにあるはず。本機はそれを心得てか、トラックパッドの周囲に凹みを設けたり、ロゴを浮き彫りにしたりといった意匠は見送られている。

パームレスト部の堅牢性は高く、強く押してもたわみは発生しないし、液晶を開閉するときの"頼りなさ"も感じない。ゆがみに強いゴリラガラスが13.3型ワイド液晶の保護パネルとして採用されていることも、安心材料といえる。

底面は淡い市松模様で悪くない。カーボンファイバーの採用はボディ重量を抑えるとともに、高い断熱効果があるため膝に載せてもさほど熱さを感じない。美観は一体成形のほうに分があるとは思うが、代わりに得られる軽さには捨てがたいものがある。

ハードウェアスペックは、この価格帯の製品にしてはかなり競争力のあるものだ。もっとも安価なスタンダードモデルでもIntel Core i5-3317U(2コア/TurboBoost時最大2.60GHz)を搭載、メモリも標準4GB/最大8GBを積むことができる。内蔵ドライブにはSSD 128GBを採用するなど、Windows 8時代にもじゅうぶん対応可能だ。Macで競合となると目されるMacBook Air 13インチモデルとの価格差を考えれば、バリューの大きいモデルであることは確かだろう。

本体の四隅は緩いカーブを描く

保護パネルにはタフネスさで知られるゴリラガラスを採用、ひっかき傷の心配はいらない

バッテリ残量は最大5つのLEDで表示される。外出前の慌ただしいときのチェックに役立つはず

「iPhone世代のWindowsユーザ」向き?

筆者が新たにマシンを導入して最初に行うことは「Emacs」のインストール。使い慣れたテキストエディタであり、これなしには仕事ができない。各種のキーコンビネーションはもはや"手クセ"と化しており、いまさら変えようがないのだ。逆にいえば、いちどEmacsで日本語入力できる環境を整えてしまうと、執筆自体はこともなく進む。

むしろ問題は、ノートPCとともに持ち歩くデバイスとの相性だ。従来外出先で通信する場合はモバイルルータを経由していたが、先日iPhone 5(au)を購入してテザリングを利用できるようになったため、これが必要なくなった。iOS 5以降、iPhoneなどiOSデバイスはAppleのクラウドサービス「iCloud」を使いデータ共有やバックアップを行うことを基本としているため、母艦のOSがMacかWindowsかという違いはかつてより小さくなっている。

実際に試してみたところ、テザリングの利用はまったく問題なし。iPhone 5がLTEエリア内にあるとき、『設定』の画面で「インターネット共有」をオンにしておくだけで、「New XPS 13」の側でWindows 8の無線LAN接続候補にiPhone 5が現れた。Macと比べても接続の容易さはほぼ変わらず、その意味でiPhone 5との相性は良好といえる。

Windows 8が動作する「New XPS 13」のデスクトップ。接続先候補に、テザリングを有効にしたiPhone 5の名前が表示されている

テザリングを有効にしたiPhone 5経由でインターネットに接続したときのネットワーク状況。72.0Mbpsという速度が表示されている

カレンダーや連絡先(アドレスブック)といったデータも、iCloudコントロールパネルをインストールすればWindowsで利用できる。iPhone 5で撮影した写真が自動的にダウンロードされる「フォトストリーム」もOKだ。ブラウザでiCloud.comにアクセスする場合も、Internet Explorerならば「iCloud Web App Plugin」というアドオンをインストールすれば、Macとほぼ同じ機能と操作性を得られる。

iCloudを利用すれば、MacやiOSデバイスとのデータ連携もスムーズ。MacとWindowsの連携に苦労したのは過去の話だ

ところで、現行のMacには「BootCamp」や「仮想化ソフト」でWindowsを使うという手がある。それはそれで利便性が高いことは事実だが、BootCampにはシステム再起動という手間がついて回る。仮想化ソフトにしても、大量の物理メモリを必要とするため、ノートブック――とくにMacBook Air――には荷が重く、SSDの領域も消費してしまう。Windowsを快適に使いたければ、Windows PCを導入したほうがいいことは現在も変わらない。

iPhoneの大ヒットは、AppleイコールMacというかつての認識を変えた。iPhoneはWindowsユーザーにも歓迎されている製品であり、「Macに興味はないがiPhoneはお気に入り」という向きも多いことだろう。ただ、iPhoneと並べて置いてもデザイン的に違和感がなく、かつプライスバリューを感じさせるWindows PCがなかなか登場しなかった。そういう意味で、この「New XPS 13」は"iPhone世代のWindowsユーザー"にぴったりの製品と言えるだろう。

iPhone 5と並べたところ。デザイン的な相性も上々だ

(マイナビニュース広告企画)

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