PCシェア世界No.1を誇るHP。外資系メーカーというイメージを強く持つ人が多いと思うが、国内に出荷されている分は、実は古くから東京で生産されていることを知っているだろうか。「MADE IN TOKYO」にこだわる理由とは何なのか? 今回は、東京都昭島市にある日本HP昭島事業所を訪れて、その秘密を探ってみた。

日本HPの工場は東京にあった!

新宿から中央線に揺られて約30分弱、立川で乗り換えて10分程先にある、東京都昭島市の昭島駅。ここから徒歩12分程度の位置に、日本HP昭島事業所は存在している。同社のノートPC以外では、国内向けワークステーション、エンタープライズサーバーなどのほぼすべて、特にデスクトップPCの100%がここで生産されている。従業員数は、協力会社を含め、約400名という規模になる。

東京都昭島市にある、日本HP昭島事業所。デスクトップPCやエンタープライズサーバなどを生産している

運搬用トラックがひっきりなしに行き交い、多くの従業員が働く日本HP昭島事業所だが、これまで閉鎖の危機を幾度か経験しているという。HPとコンパックの合併が決まった2002年などHPが事業を見直した際に、そうした懸念が発生した。しかし、現在ではそうした危機を乗り越え、日本HP昭島事業所が全世界におけるHP工場のモデルとなるほどに成長している。日本の、しかも東京という地で生産するメリットとは何なのか? 「MADE IN TOKYO」へのこだわりの理由を伺ってみた。

今回はまず、昭島事業所長の宮崎尚人氏(右)と、製造・技術管理部長の清水直行氏(左)にお話を伺った

日本市場の特殊性と短納期実現の秘密

昭島事業所長の宮崎氏は、「日本の顧客は、世界でもっとも製品クオリティにうるさいといわれており、そういった顧客のニーズに品質や納期を維持したまま対応するには現地で生産する以外に方法はない」と語る。

HPのアジアにおける生産拠点は、中国やシンガポール、インドなどに存在するが、これらの工場では、「普通のスペックであるPCを、安く、大量に」生産する、いわゆるBTS(Build To Stock:計画生産)やBTO(Build To Order:注文生産)が中心だという。一方、PCの普及率が既に高い日本では、個々の顧客から寄せられるニーズが多岐に渡り、それに応じてPCの多様化が著しく進んでいる。HP Directplusでは、約30,000通りの組み合わせからスペック等を選べるCTO(Configure To Order:注文仕様生産)が中心だ。このようにオーダーの約90%が5台未満の小口注文であるため、一台一台がバラバラの構成となっている。

また、個人であれば「設定は自分で行いたい」、企業であれば「自社のソフトを予め入れてほしい」といった具合に、個々の要望も生じる。こうした細かい要望にもリアルタイムに対応していくため、できる限り使用される現場に近い、東京に生産拠点を置いているのだ。 

古くから工場を支える宮崎氏。幾多の閉鎖の危機を乗り越え、最先端の工場を構築してきた