韓国のKTは、韓国版WiMAXのWiBroとWi-Fi、W-CDMAに対応した端末をリリースする。シームレスに高速回線を利用できる端末の登場はWiMAXの利用者数を拡大することが期待できそうである。

WiMAXエリア内外で高速データ回線を利用できる

韓国の通信事業社KTは来月、WiBro / Wi-Fi / W-CDMAに対応した「3W」端末を発売するとしている。製品はSamsung M8400で、Windows Mobile OSを採用するスマートフォンだ。3.7インチWVGA(800×480ピクセル)ディスプレイ、5メガピクセルカメラなどを搭載した端末になると言われている。ちなみにM8400のベースとなったモデルは、同社のフルタッチスマートフォン「OMNIA II」であると言われている。OMNIA IIはハイスペックスマートフォンとして市場に投入されており、M8400も同様に高機能な製品となるだろう。

SamsungはWiMAXとHSDPA複合端末「M830」も出している。こちらはWi-Fiは搭載していない

WiMAX/WiBro(以下WiMAXと統合して表記)の主な用途はPC用の高速インターネットアクセス回線だろう。WiMAX用のデータ通信端末は各社から多数発売されており、日本でもUQコミュニケーションズがUSB型やExpressカード型などの製品を市場に投入している。最近ではネットブックにWiMAXを搭載したものも増えているようだ。

韓国やロシアではスマートフォンタイプのWiMAX端末も登場している。形状はW-CDMAやHSPAのスマートフォンと同等で、WebアクセスだけではなくVoIPアプリを使えば音声通話をすることも可能だ。

だが、各国で展開されているWiMAXも携帯電話ネットワークと比較するとカバーエリアが狭いのが普及拡大のネックの1つになっている。都市部でも地下やビルの奥では電波が届かないことがあり、スマートフォンタイプのWiMAX端末を携帯電話感覚で利用することは難しい。WiMAXとWi-Fiの2つに対応した端末もあるが、非WiMAXエリアがWi-FiのホットスポットだとしてもWi-Fiはハンドオーバーしないため移動しながらの利用ができない。

最近はWiMAXとGSMを搭載した端末も出てきている。しかし、GSMはデータ通信速度が遅ので、GSMはあくまでも「音声通話用」あるいは「海外ローミング用」として搭載しているものだろう。GSMのデータ通信速度はGPRS / EDGEで最速でも100kbps前後。これに対してWiMAXは数Mbps以上であり、速度差は数十倍以上にもなるのである。特に携帯回線は接続時に認証が必要であり、GPRS / EDGEでは数十秒もかかる場合もある。データ通信をしたいときにすぐに接続できず、しかも速度も遅いとあってはWiMAXとGSMのデュアル端末だったとしても、GSM回線でデータ通信を使う気にはなれないだろう。だが、Samsung M8400なら携帯回線でのデータ通信もWiMAXほどではないにせよ、それほどストレスを感じない3G回線が利用できる。WiMAXエリア内外でシームレスに高速データ通信が可能というわけである。

WiMAX利用者拡大を牽引

KTはWiBroサービスを提供しているものの加入者の増加に悩んでいる。同社は固定サービスのKTと携帯サービスのKTFが合併したため、WiBroとHSPA、両方式のサービスを提供中だ。しかし音声通話のできる端末種類の豊富さやカバーエリアの広さから大半のユーザーはWiBroではなくHSPAを選んでいる。KTとしてはM8400の投入で「音声通話対応、WiBroエリアでは高速データ通信、非WiBroエリアでも3Gデータ通信が可能」という点を全面に出し、WiBroユーザーの獲得に励むことになるだろう。

なお固定サービスを提供していることからもちろんWi-Fiのホットスポットも提供している。3W対応端末で同社の「3Wサービス」をそのまま利用できるわけだ。端末が高機能でフルタッチ対応、スタイリッシュなデザインであることも端末として売りやすい。なおもしかするとWiBro端末としてではなく「3GスマートフォンにWiBroを搭載」という売り方がされるかもしれない。

M8400は韓国向けのWiBro(2.3GHz)版だが、海外のWiMAXに対応する2.5GHz版の製品化は難しくないだろう。そうなれば海外のWiMAX事業者にとっても、このM8400の存在は魅力的なものになるだろう。「WiMAXはデータ通信用途のみ、エリアは狭い」というネガティブな印象もM8400の提供で解決できる。さらに海外渡航の多いビジネス層にも、海外では3G回線を利用できることをアピールできるわけだ。M8400がもし海外展開されることになれば、海外のWiMAX利用者を拡大することが大きく期待できそうである。