Windows Mobileが徐々に浸透し始めてきている。もちろん、PDA向けのOSとして愛された「Pocket PC」時代をないがしろにするつもりはないのだが、ここ最近のいわゆる「スマートフォン市場」における裾野の広がりと人気には、着目しないわけにはいかないだろう。2005年末にブレイクしたウィルコムの「W-ZERO3」の名前を挙げるまでもなく、この手のガジェットに敏感な人であれば、モバイルシーンにおけるWindows Mobileの台頭ぶりを、大なり小なり確実に感じていることだろう。

しかし、このWindows Mobileと付き合い始めると、これがなかなかめんどうな相手であることに気付く。長時間使い続けているうちに発生する厄介事は、レスポンスの悪化、フリーズ、描画速度の極端な遅延、無反応……と、数え上げればきりがない状況である。酸いも甘いも噛み分けてきたマニアであればともかく、モバイル機器使用の経験が浅いユーザーにはいささかキツいのも確かである。

ただし、名前こそ多少違えども、そこはやはりWindowsファミリーである。あれやこれやと対策を施しつつ、多少の操作感覚の違いや癖、組込機器ゆえの制限も乗り越えて、自分なりの使いこなしをされている方も多いのではないだろうか。

もちろん、そうした我流の中から自分なりの安定したスタイルを確立させることも、この手のモバイルガジェットの醍醐味ともいえるだろう。しかし、スタイル確立に際して、得られる情報は多いにこしたことはないはずだ。

本連載では、あまり大上段に構えた内容をつづるつもりはない。むしろもっと軽めの、ちょっと「よさげなTips」のような情報をメインに、書き進めていきたいと考えている。思いきったカスタマイズも可能なWindows Mobileの特徴を考慮して、おすすめできるアプリケーションソフトの紹介を通じて、みなさんのスタイル確立に寄与できれば幸いだ。

Magic Button

連載の初めにまず紹介したいのが、人気の高い定番タスク管理ユーティリティ「MagicButton」だ。まだ導入されていない方は、本稿をよく読んでいただいて、是非その効果を試してみてほしい。

ソフト名 Magic Button
作者 TranCreative
区分 フリーウェア
動作確認機種(※) W-ZERO3
W-ZERO3 [es]
EM・ONE
※:記事執筆時点における確認結果であり、これらの製品ですべての機能が確実に動作することを保証するものではありません。また、ここに挙げた以外のWindows Mobile搭載製品でも動作する場合があります。

Magic Buttonとは

Windows Mobileで動作するアプリケーションは、画面右上に配置されている「×」のアイコンをタップしても、アプリケーション自体は終了しない。単に裏側に隠れて見えなくなるだけである。そのおかげで次回起動時はスムーズにアプリケーションを呼び出すことができるのだが、これでは起動したアプリケーションの数だけ、限られたメインメモリを消費してしまう。度を超してしまうと、OS全体の動作に悪影響が出てしまう場合もある。

Windows Mobileのメモリ利用状況画面。気を抜くとメモリ不足に陥りやすいのは、Windows Mobileの構造的な特徴といえるかもしれない

「Magic Button」は、終わらせたいアプリケーションを確実に「終了」させ、無駄なメモリの消費を解消させることが可能なツールなのだ。Windows Mobileを使っていく上で、同時に多数のアプリケーションを動かす機会が多い人は、デバイスの安定運用を考える上でも、導入を検討する価値が非常に高いといえるだろう。

導入方法と詳しい機能については次週解説する。

Magic Buttonのバージョン画面。英語表記だが、内容はシンプルである