RealView Microcontroller Development Kit

Keilのリリースする統合開発環境がこのRealView Microcontroller Development Kit(MDK)。Keilは2005年にARMに買収されており、そういう意味ではARMがリリースする純正ツールという事にもなるが、ARMはあくまでもMCUのコアを提供しているだけなので、その意味では別に純正だからいいという訳でもない。ARMコア用のMDK(MDK-ARM)こちらから入手できる。ちなみにここで入手できるのはMDK-ARM Lite Editionと呼ばれるもので、制約として、

・32KBのコード/データを超えるプログラムの生成が出来ない。
・デバッガが扱えるプログラムも32KB以内。
・コンパイラはディスアセンブルリストを出せない
・リロケータブルなプログラムを生成できない。
・3rdパーティのデバッガ用のシンボルを出力できない。

などの制約が付いている。リロケータブル云々というのは、通常だとARMのプログラムのロードされるベースアドレスは0x8000Hとか0x10000Hとか、MCU毎に特定のアドレスに決まっており、プログラムもこれを前提に出力されるのだが、このアドレスを後から変更できる内部構造(リロケータブル)にするオプションがMDK-ARMにある。これを悪用すると、例えば32KBのプログラムを2つ作り、後でベースアドレスを変更することで事実上64KBのプログラムを作る、なんてトリッキーな技がありえるからで、これを防止するためだと思われる。

ちなみにフルパッケージの価格は相変らず「お問い合わせください」なのだが、やはりLPC Tools LLC.での価格を見ると、256KB版で$2,895.00、Unlimited版で$4,895.00となっている。

Atollic TrueSTUDIO STM32

英国とスウェーデンの2箇所に本拠地を持つのがこのAtollic。2003年からAtollic TrueSTUDIOと呼ばれる統合開発環境をリリースしている。STM32向けにはAtollic TrueSTUDIO for STMicroelectronics STM32が用意されており、ここから無償のLite Versionと30日有効のPro Evaluation、フル機能が使えるProfessional Versionの3種類が入手できる。このLite VersionとFull Versionの違いであるが、

・C++が利用できない(アセンブラとCのみ)。
・IDEの拡張機能なし。
・ARM向けコマンドラインツールがBASICのみ。
・PC向けコマンドラインツールなし。
・Professional Debbuging Featureとかリアルタイムトレース機能なし。
・グラフィカルUMLモデリング、バージョン管理、Bugデータベース統合なし。
・コード比較(Code review & review meetings)機能なし。
・ランタイムにI/Oリダイレクト機能なし。
・省コードサイズのprintf()のサポートなし。
・JTAGプローブの利用に制限あり。
・静的ソース解析/コードカバレージ集計/自動テストがデモのみ。
・広告あり。
・テクニカルサポートなし。

といった項目が挙げられている。ただコードサイズや利用時間に制限が無い事は特筆すべきだろう。価格はやっぱり「お問い合わせください」だが、例えば(やや古いが)この記事だと995EURとなっている。

Altium TASKING VX-toolset for ARM v4.0

オーストラリアのAltium Limitedが提供しているTASKINGと呼ばれる開発ツール群。元々は自動車業界でのシステム開発に使われていたツールで、これを開発していたTaskingという会社をAltiumが2001年に買収、以後同社から提供されている。

STM32F4向けには同社のTASKING VX-toolset for ARM v4.0が対応しており、こちらから評価版が入手可能である。評価版の制約は「15日間利用可能」というもので、これを過ぎると利用できなくなる。ただ面白いのは「最初に起動してから15日間」ではなく、「実際に利用できる期間が15日分」なので、例えば週に1回起動すると15週間使えることになる(最小単位は「日」のようで、1分使おうが23時間59分使おうが、どちらも1日と勘定されるようだ)。

他に評価版の制約として、ライブラリのソースコードは展開できなくなっている。また上のダウンロードページから、評価版以外に"Debugger drivers for ST-Link, ST-Link/V2 and J-Link"を別途ダウンロードする必要があるとされている。ちなみにこちらはちゃんとお値段が出ていて、Standard Editionの場合$1,795もしくは1,495EURとなっている。

(続く)