ではStandard-Bの方は? というと、こちらはもう少し大きな変化になっている。もともとUSBのB Plugの場合、こんな具合にShellの内側にコンタクトが配される型になっている(Photo01)。ここにどうやって追加するか、であるがコネクタそのものを盛り上げる方向で変更された(Photo02)。

Photo01: 手持ちのUSB CableのB Plugのアップ。Shellの内側に絶縁層が配され、その内側に上下2本づつコンタクトが用意される。

Photo02: Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-7からの抜粋。Double-Decker方式。

この場合、

USB 3.0 B Receptacle と USB 3.0 B Plug OK
USB 3.0 B Receptacle と USB 2.0 B Plug OK
USB 2.0 B Receptacle と USB 3.0 B Plug NG
USB 2.0 B Receptacle と USB 2.0 B Plug OK

という事になる。つまりUSB 3.0で追加された追加部分が、B Plugの上側にもりあがっているので、ここが邪魔になりUSB 2.0までのReceptacleには挿入できないことになる(Photo03)。この点で言えばケーブルの互換性が保てない事になるが、USB 3.0を使うのにはUSB 3.0に対応したケーブルが必要となる、という状況を鑑みると、むしろこの「挿入できない」事がケーブルの対応/非対応をわかりやすくするとも言えるだろう。またUSB 2.0レベルでの互換性は保てている訳で、これでよしとしたのかもしれない。

Photo03: 手持ちのUSB 2.0のHubのReceptacleのアップ。追加部分が邪魔になることが判る。

ちなみにReceptacleの方はこちら(Photo04)。Plugに対応して、こちらもやや縦に長い形になっている。ただし変更があるのは新しくUSB 3.0用に追加した5本の信号線の部分で、その下の部分は従来のUSB 1.1/2.0のものと互換性がある形状になっている。

Photo04: Universal Serial Bus 3.0 SpecificationのFigure 5-6からの抜粋。USB 2.0まではReceptacleのShellの高さは7.78±0.10mmで、これがUSB 3.0では10.44mmと3mm近く増えた。

ちなみにコンタクトの配置はPhoto02/04ではちょっと判りにくいが、これはA Plug/Receptacleと同様に、差し込む場合は、

(1) PlugとReceptacleのShell同士
(2) VBUS/GND
(3) USB 1.1/2.0のD+/D-
(4) USB 3.0の信号

という順で接する様になっており、逆に抜く場合は(4)→(1)の順で接触が切れるようになっている。

ところでMicroタイプに話を移す前にもう一つだけ。USB 2.0ではStackingタイプのUSB A Receptacleが多く利用されている(Photo05)。こうしたStackingタイプについてSpecificationでは「仕様書ではこうしたStackingについて説明はしていないが、そうしたものは仕様上許される。ただし全てのMechanical/Electricalの要求を満たす必要がある」という前書きの後で、いくつかの注意事項を示している。

Photo05: これはIntelのDX58SOのバックパネル部。これなんかはまだ2つを重ねただけだが、中にはReceptacleを4つ重ねたタイプのものもある。限られたバックパネルの面積でReceptacleを増やそうとすると、積み重ねるのは仕方ないかも。

特に問題なのは、図1の様な構造をとると上側のReceptacleの配線が長くなる事と、下側のReceptacleの配線とのCrosstalkの可能性が出やすいことで、こうした事が起きないような適切な配線と構造を求める、とされている(わざわざこれについてはSection 5.8.3に"Stacked Connectors"という節を設けている)。

現実問題として、おそらく2009年後半に最初に登場するUSB 3.0搭載マザーボードに使われるStacked Connectorは、図2の様にかなり厳重なシールドが施されたものになるだろう。従来のStacked Connectorの場合、外側のシールドを剥くと配線がそのまま見えたりするものもあったが、USB 3.0ではしっかりと絶縁体やShellで覆われたものになると思われる。当然ながらこれはコスト増加に繋がるが、何しろUSB 3.0はまだCommodityのI/Fではない。

Commodityになるのは、マザーボードのチップセットに標準で入る&様々なDeviceがUSB 3.0に対応した後だろうが、チップセットに入るのは昨今の状況を見る限り早くて2011年以降、下手をすると2012年までずれこみそうだし、Deviceの側の普及も似たようなものだろう。それまでの間、マザーボードには別途USB 3.0のHost Controllerが搭載される形だし、Deviceの側はUSB 3.0のBridgeを介して接続する様な形になるだろう。当然これらはかなりのコストになるため、当初は「そうしたコスト増を許容できる高付加価値向け」という扱いになるし、それであればReceptacleが多少コスト増になっても全く問題ないと考えられる。

(続く)