以前、こんな記事を書いたが、この続編として同社CTOである佐藤友美氏へのインタビューを行っていたものの、色々な事情でインタビュー記事の執筆が滞っていた。その間にも同社は後継製品であるDAPDNA-IMXをMicroProcessor Forum 2007で発表するなど、着々とビジネスを進めつつある。そんなわけで今回から暫く、2005年11月に横浜で開催されたEmbedded Technology 2005の際に佐藤氏と行ったインタビューの内容をご紹介したいと思う。

CPUコアについて

Q:全般的な話は斯波様にお聞きしたので、色々と突っ込みたいところが(笑)。まずDAPですが、オリジナルのRISCのコアを使っておられる。要するにMIPSやARMを使わずに、敢えてオリジナルのCPUコアを作った理由のひとつは、アーキテクチャ的にコントロールが利くというお話だったのですが。

A:そうですね。MIPSとかARMを使わずに、自分たちでCPUコアを作った理由のうち、判りやすいものの一つは、やはりベンチャーでスタートとしたという話です。ベンチャー企業でやるという事自体、資金的なことが色々ありますよね。最近はだいぶ緩やかになったんですが、2000年に最初に作った当時というのは、Processerの中の再販権というのが色々厳しかった。ある目的に応じて色々なものに改良を加えるという事にに関して、かなりのリスクがありました。リスクと言うのは、例えば自由に再販するんであれば、RTLの価格にプラスして再販権まで含めたお金を何億円か乗せるとかいう事ですね。最近は徐々に緩やかになって来たのですが、当時はデータパーツとか色々な物を含めてコントロールを自由に出来なかった。例えばDAPDNAのDNAのProcesser周りの細かなエンジンですとか、DAPのデータパスをシームレスに繋ごうとするとするとき、それ自体は技術的には可能なのですが、その一方で性能を上げたり効率を上げたりする為には、色々な許可を取らなければいけないんです。そうすると、そういったモノに対してお金をどこまで払っていくんですか、という議論がありまして。

常に我々が何かやろうとすると、例えばいいアイデアがあったが、そのアイデアというのは、もしかしてパテントになっていた場合に、切り分けどうするのかといった話もだいぶありまして。今でも勿論ありますが。ユーザーさんからは良くMIPSとかARMとか使った方がいいんじゃないか、などと言われるのですが、そうした時にお客さんにお答えしているのが、MIPSも最初はマーケットが無かったんですよね、と。無かったマーケットを、自分達でいろんなお金を掛けて開発して、マーケットにもお金を掛けたりして、彼らが取ってきたマーケットな訳です。

で、私は基本的に便利だからといって、勿論お金の問題も切り離せないわけですが、そこのマーケットがあたかも自分達のもので使い易いから利用しようって言うのは、分かるんですが、会社を創って興してやって行くというチャレンジを行う技術会社としては違うんじゃないかと思っています。実際に例えばMIPSであれば、非常に優れたテクノロジーを持ってますよね。パイプラインも含め細分化とか分岐のペナルティを消したりとか、そういう為に彼らも、物凄いお金掛けて物凄い研究をやっておられるわけです。それは評価する必要性があると思いますが、でも我々もやはり技術者である以上はそういったものとフェアに競争する出発点をどこに置くかというのは非常に大きい問題になります。

今も述べたように、経済的な理由と技術的にチャレンジの度合いの理由、それからパテントも一応取ってファイリングしたところも、ダイナミックにデータパーツの並列度を組替えられるといったあたりも、独自の視点で、我々もフレームとしたかったと言うことですね。単にパテントだけじゃなく、そういった事を考えていく時に、(Processorが)我々が取るべきそのパーツの一つとしてどうあるべきかという問題がありまして、それが非常に大きかったですね。

それからもう一つ、再販権の問題があるんですが、それは単にデバイスだけの問題ではなく、開発環境やコンパイラにも関係してきます。例えばシミュレーションを行う場合、Processer側の役割分担と、並列動作をさせる所の役割分担を上手く決めて、効率よく繋いでゆかないといけないわけです。ここで外のものを、例えばProcessor一つにしても持ってくるという場合、拡張性とか機能性を考えてライブラリなど色々な物を繋いでゆく時に、本来は元々内部に持っていたデータパーツを外に拡張して持たせる構造を取ることにしなければなりません。ところが、それをしようとすると、相手(=外から持ってきたProcessor)側の開発環境に許可を頂きながら、もしくは更にお金何億円も追加しながら、ソースコードをオープンにしてもらったりしなければならない。ここで仮に自分たちの技術で、そうしたProcessorのコアを勝手に解析して導入したりしたら、これは当然クレームですよね。