樹脂の利点の1つに、複雑な形状を容易に成形できることが挙げられます。そのため、他の材料であれば複数のパーツに分ける必要があるところが一つのパーツで済んでしまうこともあります。樹脂パーツで成形できる複雑な形状の中でも、特にスナップフィットはパーツを一体で成形することができるので、複数のパーツを繋ぐ際に必要なネジなどの細かいパーツや、接着といった二次加工が不要になります。

スナップフィットの設計でまず考えなくてはいけないのがどの樹脂を使うのかということです。スナップフィットが機能するためには、スナップフィット自体にある程度の柔軟性が必要です。スナップフィットにガラスやセラミックといった硬い材料ではなく、樹脂が使われるのはその柔軟性ゆえです。(一部の樹脂は除く)

スナップフィットに特に適しているのはABS、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレンやこれらに類似した特性を持つ樹脂です。樹脂成形されたスナップフィットで最も馴染み深いのは図1に示すような片持ち梁型のフック形状です。このようなスナップフィットの成形についての注意点は後ほど説明します。その他のタイプのスナップフィットとしては、環状型やねじれ型がありますが、こちらは次回の Part 2 で解説します。

図1: 面直に形成された片持ち梁型フック形状

片持ち梁型のスナップフィットは、電子機器の筺体上の取り外し可能なカバー等、多岐にわたります。その形状も用途に合わせてさまざまです。このタイプのスナップフィットを設計する際の確認事項が二つあります。

  1. スナップフィットをロックさせたいか、それとも引っ張れば外せるようにしたいか
  2. 一度はめたら永久的にロックさせるか、それとも外せるようにするか

スナップフィットの爪のひっかかる面を接続方向と垂直(90°)に設計することで、一度はめれば単純に引っ張っただけでは、スナップフィットを壊さない限りは抜けなくなります。しかし、図2に示すように、爪の引っかかる面を斜めにすれば、単純に引っ張っただけでも、スナップフィットを外すことができるようになります。

図2: 爪がひっかかる面を斜めに設計することで、引っ張れば外せるスナップ フィットになります。

ロックはさせたいが永久的にではない、という場合には爪がひっかかる面を90度になるよう設計します。外す時には爪の部分を横に押してやれば、穴から抜け、簡単に外すことができます。このように簡単な構造で済むのは、爪の引っかかり面が、相手側のパーツの外側に出ている場合です。爪の引っかかる面がパーツの内側になる場合には、図3に示すように、スナップの爪に触れるようにするための穴を設計する必要があります。

図3: スナップフィットを穴の部分に配置させて取り外せるようにした場合

片持ち梁型のスナップフィットがきちんとロックされるか、引っ張っても壊れないかは設計次第です。スナップフィットの長い腕の部分には取り外しの際に壊れたり、永久的に変形しないだけの柔軟性が必要です。柔軟性は樹脂のヤング率を初めとする材料物性値、スナップが曲がる角度、爪部分の深さ、腕の部分の長さや形状などに依存します。(スナップ設計のための計算式などの詳細は efunda.comのSnap Latches(英語)で紹介されています。また、スナップフィット設計のための機能が、CADソフトにあらかじめ含まれている場合もあります。さらに、有限要素プログラム(FEA)でスナップフィットを解析することで、その設計で大丈夫かどうかをあらかじめ検証することもできます。

スナップフィットの腕の長さは重要である一方、設計上、スナップフィットを収めることのできる空間は限られていることが多いため、その範囲内に腕を収めながら、必要な長さを確保するための設計手法がいくつかあります。

図4: スナップフィットをU字型に曲げることで求められる機能を確保しつつ、限られた空間内におさめている。

  1. 腕が伸びた先の部分にあたる相手側パーツの壁の部分に切り込み形状を入れて、その部分をスナップフィットの一部として機能させる。
  2. 腕が伸びた先の部分にあたる相手側パーツの壁の部分に柔軟性を与えて曲がるようにすることで、スナップフィットが曲がらなければならない量を少なくする

図5: スナップフィットが突き出している根元の部分に穴を開けることで、二方向抜き金型でも成形可能になります。

  1. スライドでスナップフィットを形成する方法もありますが、金型が複雑になります。
  2. 置き駒を配置して、成形後に手で取り外すという方法もあります。

次号では、他のスナップフィットについて解説します。

ご参考:

プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
ProtoQuote®無料解析&見積り

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。