何ごとにも大事なのが仕組み作り。自分のお金の流れの中に、貯まる仕組みを組み込んでしまうのが一番です。自動的に貯まっていく積立の活用法を紹介します。


必ず行うべきこと、給与振込口座に自動積立定期をセット

超個性的にお金を管理したいと意気込んだとしても、会社員のお金の流れは、給与を受け取る、使う、翌月も受取る、また使う、その翌月も受け取る、またまた使う…の繰り返し。そして月に1回、給与を受け取れるということは、月に1回貯めるチャンスがあるということだ。この流れの中に、自動的に貯まる仕組みをセットできるのが、銀行の自動積立定期。都市銀行、ゆうちょ銀行、地方銀行など、ほとんどの銀行で取り扱っている。毎月、指定した日に、指定の金額を、普通預金から定期預金に振り替えてもらえる(ゆうちょ銀行は、通常貯金から定期貯金に振り替え)。

給与振込口座で、給与振込日のすぐ後に設定するのが鉄則だ。申し込みは店舗窓口のほか、銀行によっては郵送やインターネットバンキングでもできる。最初にひと手間かけて設定すれば、後は自動的に定期預金が毎月、作成されて残高が増えていくのだから、お金を貯めたいなら必ず利用したい。まだの人は1日も早く申し込みを!

積立の期間は、銀行により、5年などの一定期間のところもあれば、期間の定めなし(やめると申し出ない限り続く)の2パターン。一定期間の銀行なら、最初の期間が終わったら、続けて次の積立を申し込もう。

毎月の積立額は手取り収入の1.5~2割

自動積立定期における1回あたりの積立額は、銀行により1000円以上、5000円以上、1万円以上など。この連載の2回目で提案した通り、毎月、手取り収入の1.5~2割を貯蓄に回していくのが目標だ。給与振込銀行の積立単位を確認し、1.5~2割に近い積立額になるように設定しよう。

銀行の自動積立定期のほか、勤務先に財形貯蓄があれば、それもぜひ併用したい。投資信託やETFでの積み立てを加える方法もある(投資商品については、連載の中盤に解説予定)。自動積立定期に、財形貯蓄、投資信託などを併用する場合は、合計で手取りの1.5~2割になるように割り振ろう。その際も、3分の1から2分の1は銀行の自動積立定期にしておきたい。イザというときに解約しやすく、すぐに使えるお金を一定額持っていることは、おひとりさまにとって、いや、おひとりさまに限らず重要だからだ。

まずは収入から確実に貯蓄分を取り分けていく、その一部は使いやすい状態に置いておく。銀行の定期預金は期間が決まっているとはいえ、中途解約しても元本割れする心配がないのがメリット。資産を作る際のベースとなる。もちろん、使いやすいからといって、あまりにあっさりと解約して取り崩してしまうのは困るけれど、そもそもお金を貯めるのは、将来のためであり、同時にイザというときのため。今こそ貯めたお金が役に立つ場面だと判断するなら使うことだ。

そして、失業して収入が途絶えたのでもない限り、積立は現役時代を通してずっと行っていく。繰り返しになるが、手取りの1.5~2割を自動積立定期を中心にして貯めつつ、本当に必要なときには貯めたお金を引き出して使い、窮地を脱する、あるいは自分の欲しいものを手に入れる。そしてまた、毎月の積立に戻るのである。

適正な積立額かどうかの確認を

おひとりさまと一口にいっても、1人暮らしで家賃や光熱費がかかる人もいれば、実家にいて家賃がかからない人もいるだろう。必要なとき以外は引き出さず、次の給与が入るまで口座に残ったお金でやりくりするのがポイントだが、支出を見直しても、どうしてもやりくりがむずかしいなら、無理をせずに積立額を減らそう。継続は力なり。続けることが大事だ。一度、自動積立定期を設定すると、その口座には、ATMやインターネットバンキングで随時、積立をすることができる。毎月の積立額は無理のない金額にしておいて、余裕がある月や、ボーナスが出たときに自分で積立を追加してもいいのだ。もちろん収入が増えて積立額を増やせる場合は、毎月の積立額を増やそう。自動積立定期は、ボーナス月などに積立を増額する設定も可能だ。

勤務先に財形貯蓄制度がある人は併用しよう

勤労者が財産を形成するための制度として財形貯蓄がある。勤務先を通して申込み、給与から天引きで貯められるのが特徴だ。

貯めたお金を使う目的を問われない一般財形、住宅資金のための財形住宅、老後資金のための財形年金の3種類。財形住宅と財形年金は目的通りに使えば利子が非課税になる。20代から30代の人であれば、一般財形か財形住宅が選択肢だ。ここ数年、導入している企業は減少傾向だが、勤務先に制度があるなら利用したい。財形用の定期預金は、通常の定期預金よりも金利が高い銀行もある。

毎月毎月コツコツと積立てる。平凡なようだが、お金を貯めるには、これが一番の早道。その仕組みを作れるのが、銀行の自動積立定期であり、財形貯蓄制度だ。いずれも、一度申込んだあとも、積立額は変更できるので、気負わずに始めたい。


次回は、さらに掘り下げて金融機関との上手な付き合い方を紹介します。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。