正式発表以前から、その存在が何度かアナウンスされたこともあり、期待が寄せられていたAMDの新型チップセット「RS780」(開発コードネーム)。AMD 690シリーズの後継とされており、最大の特徴はDirectX 10をサポートする統合シェーダアーキテクチャのグラフィックスコアを内蔵していることだ。

ちなみにこのRS780チップセットだが、実はAMDの発表を待たずして、なぜか何社かの搭載マザーボードが秋葉原の店頭等で販売されてしまっていたりもした。そのRS780がこの度、「AMD 780シリーズ」として正式発表。是非とも手に入れねば! ということで、筆者も街に出かけてきたのだが、ちょうどエムエスアイコンピュータージャパンのAMD 780搭載マイクロATXマザーボード「K9A2GM V2」が新発売になっていたので、早速入手してきた。せっかくなので、今回はこれをざっと紹介してみたい。

MSI「K9A2GM V2」

AMD 690後継の高機能グラフィックス内蔵チップセットを搭載するとして発売された「K9A2GM V2」

主な仕様
メーカー MSI
製品名 K9A2GM V2
フォームファクタ マイクロATX
対応ソケット Socket AM2+
対応CPU Phenom、Athlon 64、Sempron
チップセット AMD 780V+SB700
対応メモリ PC2-8500/6400/5300/4200×2スロット(最大4GB)
拡張スロット PCI Express x16×1、PCI Express x1×1、PCI×2
ストレージ SATA×4
RAID機能 RAID 0/1/0+1/JBOD
ネットワーク 1000Mbps×1(Realtek RTL8111C)
オーディオ 8ch HDオーディオ(Realtek ALC888)
インタフェース USB2.0×4

搭載チップセットはAMD 780シリーズでは下位モデルにあたり、UVD機能の制限などが存在する代わりに価格が抑えられた「AMD 780V」だ。試しにヒートシンクはがしてチップを確認してみると、ノースブリッジには「CHIPSET 0752 ENG」の刻印。サウスブリッジは同じく"ENG"入りだが、こちらは「SB700 A12 0747 ENG」と"SB700"の刻印を見つけることができた。

ノースブリッジのチップには「CHIPSET 0752 ENG」の刻印。秋葉原などで販売されている他社製のRS780マザーでも、ほぼ同様の刻印が確認されているようだ

サウスブリッジには「SB700 A12 0747 ENG」。"A12"はシリコンのバージョンを示すと見られ、"ENG"の刻印から今後の製品ではバージョンアップした"A13"のものに変更される可能性が考えられる

ソケットはAM2+で、HyperTransportは3.0、もちろんPhenomに対応する。メモリサポートもPC2-8500(DDR2 1066)まであり、最新のAMDプロセッサの性能を十分に引き出すことが可能だ。拡張スロットはPCI Express x16が1本と、ほかPCI Express x1×1本、PCI×2本。SB700による4ポートのSATA IIはRAID 0/1/0+1/JBODに対応している。

マイクロATXサイズなので拡張スロットは必要最低限のスタンダードな構成

GigabitEthernetには「Realtek RTL8111C」

サウンドチップは8ch HDオーディオをサポートする「Realtek ALC888」

さて、RS780は高性能グラフィックスが売りとされるチップセットなのだが、シリーズ中では廉価版のAMD 780Vを搭載するからなのか、本製品のバックパネルに備えられたディスプレイ出力はVGAのみとちょっとさみしい。

最新マザーボードながらレガシーがキチンと残されているバックパネル部

レガシーの制御やハードウェアモニタ機能などを提供するSuper I/Oチップ「Fintek F71882FG」

しかしながら、バックパネルの画像を見ていただけるとよくわかるのだが、本製品はPS/2はもとより、パラレルポートを備え付けていたりと、最近は省かれる傾向にあるレガシーインタフェースを手厚くサポートしている点が特徴だったりする。製品パッケージにも"Essential I/O Connections"という売り文句を表記し、これらI/Oの充実をアピールしている。少数派かもしれないが、自作ユーザーに中にも、マザーボードの買い替えで「○○ポートが無い!?」と、困ってしまう人種が居るには居るのだ。こういった配慮のある製品が、新規製品であっても残ってくれることはちょっと嬉しい。

用途は使い手次第の便利マザー

「K9A2GM V2」は、低コストながら一般用途にはオールマイティーに対応できる、コンパクトPCなどに最適なマザーボード、と位置づけるのが適当だろうか。価格と機能からエントリー用としても丁度良いだろうし、サブマシン用として1枚用意しておいても色々と使い勝手の良さそうである。ボード上のヒートシンクの小ささなどを見るに、消費電力やそれにともなう発熱も少ないと考えられるので、低消費電力版のAthlonなどと組み合せて、格安静音PCなんて構成も一興だ。

ヒートシンクなど冷却機構の規模の小ささが、低消費電力であることを期待させる