大ヒットしたPCMレコーダが使い勝手を向上して新登場
【2008年6月号掲載】



スペック

[発売元] ローランド [価格] オープンプライス [実勢価格] 4万円前後 [OS] Mac OS 10.2以上  [インターフェイス] USB2.0 [サイズ/重量] W62×D113×H27/174g [備考] 記録方式:WAVE、MP3、記録メディア:SDメモリーカード、電源:ACアダプタ、単3型乾電池×2 [掲載号] 「Mac Fan」2008年6月号

OVERVIEW

現在各社から発売され、ブームを呼んでいるポータブルMP3/リニアPCMレコーダの走りとして登場したのが「R-09」だ。その後継モデルとして登場した本製品は、「コンパクト&高音質」という基本コンセプトはそのままに、PCMの中でも最高レベルの24ビット/96kHzサンプリング録音を可能にしたほか、アナログリミッタ回路の搭載、ワイヤレスリモコンの付属など、音質や機能面で改良を図ったモデルだ。

また、使い勝手の面でもさまざまな改良が施されている。筐体はラバーコーティングされたことで全体に持ちやすくなり、有機ELディスプレイは大きさが2倍になったことで視認性がアップ。さらに、SDメモリカードと電池収納部分が別になり、スピーカを背面に搭載したりと、R-09でやや使いにくかった箇所も改善されている。

(1) 見やすい有機ELディスプレイ
大型の有機ELはコントラストが高く、一般的な液晶よりも見やすい。スイッチや操作ボタン類は使いやすくまとまっている

(2) 電池やSDカードが扱いやすく
R-09ではSDメモリーカードと電池を同じ箇所に収納するため、やや使いにくかった。しかし、R-09HRでは電池は背面に、SDメモリーカードは下部に別々に入れられる

(3) 背面スイッチで詳細設定
入力レベルを自動的にコントロールできるオートゲインコントロール(AGC)など、レコーディングのミスを最低限に押さえてくれる機能を背面に搭載している

FOCUS ON

現在、ポータブル型のリニアPCMレコーダは2万円から20万円台まで8社11機種も製品が存在している。その中で、24ビット/96kHzで録れるものは6機種。4万円前後の本製品を同クラスの他社製品と比べてみると、明らかに音質面に優れているのがわかる。

実際にPCM録音してみると、内蔵マイクの性能もさることながら、特にSNがよくノイズが少ない(従来より10dB改善)せいか、高域の歪感が少なくクリアだ。中低域のブーミーな(音がたわむ)感じもない。

(4) マイクは振動に強い構造(上)
マイクは変形XY型を採用するPCMレコーダが多い中、オーソドックスな配置。フローティング構造で振動にも強い。マイクの間にあるのはヘッドフォン端子だ
(5) 録音レベルを調整可能(左)
本体左側面には、録音レベルの調整ボタンと外部マイク入力、ライン入力端子がある。ライン入力にはほかのオーディオ機器のアナログ出力や、Macのヘッドフォン/ライン出力をつないで録音できる

口述録音など一般的な用途ではMP3の高ビットレート(2GBメモリに797分録音可能)で充分だが、より高音質に録音したい時は24ビット/48kHzのPCM(2GBメモリに110分録音可能)を選ぶなど、用途によって使い分けられる。24ビット/96kHzにすれば解像度やダイナミックレンジがさらに増す。

MacとはUSBケーブルで接続後、マウントされたボリュームから、ドラッグ&ドロップでMP3もしくはWAV形式のデータをやりとりできる。録音したソースをMacに取り込んで編集/CD化したり、逆にMacに取り込んだ曲をコピーすればプレーヤとしても利用できる。 50~150%の変速再生が可能なため、楽器練習やインタビュー起こしなどに重宝する。

(6) ドラッグ&ドロップでデータをやりとり
USB接続するとデスクトップにボリュームがマウントされるので、ドラッグ&ドロップでMacから本機に音声ファイルをコピーできる。逆に本機で録音したファイルをMacに転送することも可能

(7) iTunesで変換して転送
本製品で再生できるのはWAVとMP3形式の音声ファイル。iTunesにCDを取り込む際に際に変換しておくのがいいだろう。曲名はアルファベットにしておこう

プロにも愛用者の多いR-09同様、生録やバンド練習、CD制作まで含めた、クオリティの高い音源作りに最適なレコーダだ。

AFTER REVIEW

R-09のややチープな外観に不満を覚えた人もいるだろうが、新しいラバーコーティングのボディは高級感があって手触りも良い。また、落下させてしまった時にも衝撃を吸収してくれる。AACが再生できないのは残念だが、現在発売されている他社製品でも実は対応していない。24ビット/96kHzのリニアPCM録音品質は高い。しかし、24ビット/48kHzでも十分に高品質だったので、それを目当てに購入する場合は自分に必要かどうか検討しよう。