糖類ゼロ(左)と糖質ゼロ(右)の商品例。両者の違いはちょっと複雑だ

糖類は糖質の一部、ともに100mlあたり0.5g未満ならゼロ

世間で何かと話題の「ゼロ」飲料。今回は糖分の表示を取り上げます。コンビニをサッと眺めただけでも上の写真のような商品が売られてます。コーヒーと発泡酒ということで商品の種類は違いますが、大きく表示されているのが「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」。

似通った表現ということで、「一体どこが違うの?」という疑問は当然かと思います。ただ、そこを言葉だけで説明しようとすると分かりにくいので、図にしてみました。

糖類は糖質の一部である(表記した物質名は一例)

要するに、
・糖類というのは糖質の一部である
・世間の多くが糖分としてイメージするであろう砂糖は糖類に分類される
ということですね。

さらに、健康増進法に基づく栄養表示基準により、糖質・糖類ともに「100mlあたり0.5g未満であればゼロ表示」が可能、という点を指摘しておきたいと思います。

甘味料や基準値内の糖類で「ゼロ」表記

さて、ここまでなら普通の説明ですが、上記3つのポイントを頭に入れて原材料表示を見ると面白い事実が見えてきます。

「糖類ゼロ」(左)でも甘味料、「糖質ゼロ」(右)でも糖類が含まれていることも

・糖類の使用を避け甘味料を用いることで「糖類ゼロ」表示
・糖アルコールや甘味料を使わず、ゼロ表示への基準値(100mlあたり0.5g)内で糖類を使用することで「糖質ゼロ」表示
がされていることにお気づきでしょうか?

写真は「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」の表記の一例です。「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」で考えられる原材料を以下にまとめてみました。

「糖類ゼロ」
・添加物としての基準値内の甘味料を使用
・ゼロ表示への基準値内の糖類を使用

「糖質ゼロ」
・ゼロ表示への基準値内の糖類を使用
・ゼロ表示への基準値内の甘味料を使用
・ゼロ表示への基準値内の糖類+甘味料を使用

つまり、基準値内で糖類や甘味料を使用した場合には、「糖類ゼロ」「糖質ゼロ」ともに表示可能という場合が出てきます。ならば「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」で迷ったらどちらを選んだらいいのでしょうか? 基準値一杯に糖類や甘味料が使われているとすればですが、甘味料まで少なく制限できる「糖質ゼロ」の方が無難かもしれません。

ただ、実際の使用量は表示からだけでは分からないことが多いです。そのため、「ゼロだから大丈夫」ではなく「ゼロでも適量」を心がけるといいのではないかと思います。

なお、ブラックコーヒーでよく見る無糖表示ですが、糖類や糖質が使われていないだけでなく、もともと含まれていないという意味です。なので、今回のようなゼロ商品には、無糖を表示することはできないのです。

筆者プロフィール : 梶原 茂(かじはら しげる)

食品表示コンサルタントとして「食品表示情報ネット神戸」を主宰。「無果汁と書いてあるのになぜキリンレモンはOKなのか?」という疑問から、商品表示に関心を持ち始め、法令知識を深めるために行政書士の資格を取得。有料通信講座「食品表示関連業務担当者の為の知っておくべき法規制とQ&A講座」(技術情報協会)の講師を務める。現在はホームページ「食品表示情報局」で食品表示関連情報を発信するとともに、個人・法人問わず食品表示に関する質問に無料で答えている。

「食品表示情報局」