Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第6回では、オリジナルキャラクターを確立する方法を探る。

巷に溢れるキャラクターの中での迷走

「良いキャラクターはないかなぁ」と悩んでいると、世の中に溢れる他のキャラクターに目を奪われまくって困ってしまう事ってありませんか? キャラクターのデザイン(第4回)内面(第5回)をある程度まとめてみても、「可愛いクマを主人公にしよう」なんて決めたら、自分のデザインを考えるより、すでに世の中に出ている他のデザイナーの考えたキャラクターと被らないようにすることばかりに頭がいってしまいます。実際、自分で一生懸命考えキャラクターならば、れっきとしたオリジナルなのですが、全力を尽くしたのに、パクリだのトレースだのとケチをつけられるのも腹が立ちます。

重箱の隅をつつく様に難癖を付ければ、世界中に溢れる映画、アニメ、イラスト、絵本などのキャラクターと自分のキャラクターとの類似点を見いだす事はほぼ確実に可能だと思いますし、有名で売れているキャラの方が「元祖」を主張するパワーはあると思います。ゼロから立ち上げる新しいキャラクターは、ベテランキャラクターの中でボコボコにされてしまうでしょう。

あるプロデューサーの方に、「個人作品は面白いと思うけど、パクってないっていう証明ができないからねぇ」と言われた事があります。ネット等で発表される作品が多くなればなるほど、「オリジナルである」ことが重要視されていますし、オリジナルである事が難しくなって来ているとも言えると思います。情報に簡単にアクセスできる様になり、便利になった反面、これからのクリエイターが考えていかなければいけない問題でもあると思います。

オリジナルとパクリのボーダーラインとは?

意図的に他の著作物をコピーせず、自分で考えたキャラクターがそれまで知らなかった別の作品に結果的に似てしまったとしても、法律的にはオッケーなんだと言う話もありますし、こつこつと自分で考えたキャラクターはちゃんと作者の癖を受け継いでオリジナルとして自立します。とは言え、作品に取りかかる前に、万が一「似すぎてしまっている」という事態を避ける為に多少気を使っても良いのではないかと思います。

作品のタイトルや、キャラクターの名前はネットで簡単に検索をかけてみてもよいと思います。タイトルはシンプルな方がインパクトがありますが、シンプルな単語は多くの物に利用されている場合があります。「タイトルのカブリ」だけでなく、将来的に作品をネットで公開しようと思っているのであれば映像作品と全く関係のない名称であっても、あまりに有名な物と同じ名前では、検索上位に表示するまでに余分な手間がかかってしまうでしょう。

また、キャラクターのルックスに関しては、「自分が欲しいもの」を第一にするべきですが、それが何かに似ていた場合、「似ない様に修正を加える」、「大きな特徴をつける差別化をはかる」、「全体のトーンを変える」など、一時的に回避する方法もありますが、小手先の修正で自分の大切なキャラクターを歪めてしまうぐらいなら、一度白紙に戻してデザインし直した方が健康的かもしれません。

多くのクリエイターが身につけているその人固有のテイストというのは、その人の歴史を反映しています。どんなアニメや漫画が好きだったか、どんな絵に感動したか、そしてどういうものが人に訴えかけると感じて来たかというのは、かならず作品に反映されてきます。そこに絵の技術や熟練度、試行錯誤が加味され自分のスタイルが練り上げられているのだと思います。

他人とは違う作品のオリジナリティを追求する事とは、言い換えれば「オリジナルな歴史」を積み重ねる事かもしれません。キャラクターの類似性に悩んでしまう場合には、自分の作ろうとする作品と同じジャンルの作品群の鑑賞を止め、全く別の世界から刺激を受け、自分の内面のテイストに変化をつけてゆくのが良いかと思います。自分の作品、自分のキャラクターなので、なるべく気持ちよく思い切り表現したい所です。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。