Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第7回では著作権について考える。

著作権とは?

前回で頭を抱えてしまった「自分のキャラクターが何かに似ているかもしれない問題」ですが、とにもかくにも、誠実にがんばって描き上げてしまえば、それは間違いなく自分の作品です。しかし残念な事に、絶対に何かを参考にしていないとしても、誰かに難癖を付けられる可能性は残っています。繰り返しキャラクター化されている、ウサギやクマの絵を描けば、確実に「耳が○○に似てる」とか「鼻の楕円が××といっしょ」という事態が起こってくると思います。ここでがんばって反論しようとしても「何も参考にしていない事を証明する」というのは、とても困難です。

そこで、巷に溢れるキャラクターとの差別化をはかる為、発表する作品に「(c)」(マルシー)をつけてしまうという解決法があります。よくイラストの隅っこについている「(c)2009 Ryosuke Aoike All rights reserved」というような奴で、「これは私の著作物です」という宣言です。

厳密に著作権法と照らし合わせると、日本国内では全ての著作物の権利は、作品が制作された時点で何の手続きをしなくとも著作権者に帰属する無方式主義という方法をとっているので、実はマルシー表記はあってもなくてもどっちでも構いません。国際法に則っても、中東の一部、アフリカの一部、東南アジアの一部を除いてほとんどが、著作権をもっている人の特別な表記を必要とせずその権利が保障されています。例外となる国では、そもそもマルシーを書いていたとしても国際的な著作権法に加盟していないので、大した意味がありません。また、「All rights reserved」という表記についてはアメリカを中心とした著作権法に基づいた物で、そもそも日本ではまったく関係なかったりもします。

意味のない(C)が、どうして必要なのか

では、どうしてマルシーをつけるかというと、慣例的に「著作物」であるという表示にもなりますし、「誰の物」なのか、「いつ」作られた物かを明確にし、これらの情報を作品とともに広く知らせる意味があります。また、ネットの画像なんかでよくある「これって使って良いのかなぁ」というあいまいな二次利用に釘を刺すという効果もあります。

それとは別に、「この作品を自信を持って世に送り出します」という意思表明と「自分の名前を署名する」という大きな意味があると思います。ぶっちゃけて言えば、何かの丸パクリの作品に、自信をもってマルシーはつけにくいでしょう。心にやましい事がない証明ともなると思います。そして、ちゃんとつくった自分の作品に名前を書いて公開するのは、責任感が表に現れ作品の信頼度が増すと思っています。

また、このマルシー表示の書く名称ですが、正確には著作者(作った人)ではなく著作権者(著作権を所有している人)となりますので、依頼で受けた仕事では、権利ごと買取となり作者には著作権が残っていない場合もありますので注意が必要です。個人制作で、金銭的な支援をどこからも受けていないのであれば著作者=著作権者となると思います。もし誰かの支援を受けながら制作している場合には、著作権を共同で持ち、連名となる場合もあるので、それは確認した方がいいと思います。

あと、著作権者表記の所にペンネームやハンドルネームを書いている方がいますが、一応法律的には「周知の変名」という、その名前で個人が特定できるようなペンネームや芸名等ある程度有名なものは効果があるそうです。ただし、世間一般的に「これって誰?」というような変名はその効力がないという事になっています。まぁ、何を持って有名とするかは微妙な話だったりするのですが……。

法的意味の薄いマルシー表示ですが、多くのキャラクターが溢れる中で、確実にオリジナルであるという証明になるので、自分と作品の関係を明確にする意思表示として利用してみるべきだと思います。また変にひねったペンネームを使わずに本名での表記をすることで、作品への愛情と責任が表明できるのではないでしょうか。僕も初めて併記した時にはちょっと照れましたが、ちょっと気持ちのいい物でもあります。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『GIRLS BATTLE アロ恵』公開中。