水中で小魚を捕るのではなく、撮りたいのです

ウォータープルーフがリビングプルーフ? 水中撮影も可能な「アクションカムATC2K」

ビデオカメラとデジタルカメラの違いは、動画と静止画のどちらに特化しているかという機能差もさることながら、外へ持ち出すときに必要な"気合いの差"にある。デジタルカメラはヒョイと持ち出してホイホイ撮れるが、ビデオカメラの場合そうはいかない。バッテリーの残量など確認事項が多いうえ、撮影には時間がかかる。概してデジタルカメラより大型な筐体も、機動性という点ではデジタルカメラに劣後する。早い話が、ちょっと面倒くさいのだ。

それに、最近のデジタルカメラは動画撮影機能を搭載しているものが多い。撮影時間やズーム性能などシビアな動画撮影能力はさておき、数分程度の"スナップショットムービー"ならばデジタルカメラでも十分対応できる。オプションでハウジングが用意されている機種であれば、にわか雨で慌てずに済むばかりか、水中での撮影にも対応できてしまう(もちろんハウジングの防水性能によるが)。

だが、しかし。デジタルカメラにはデジタルカメラゆえの制約もある。ハウジングを装着すればそれなりのサイズとなり、体に取り付けて泳ぎながら撮影するといった使い方は難しい。撮影するときには構えが必要、というカメラとしてのあり方から逃れられぬ宿命だともいえる。

以上を踏まえ、沖縄への小旅行用に浜辺はもちろん、あわよくば水中でも使えるビデオカメラは……と探していたところ、ちょうど「ATC2K」が発売。国内販売元である加賀ハイテックのご厚意により、数日間ほど試用させていただいた次第。

見た目は単眼鏡だが、立派にビデオカメラとして機能する

中央の切れ込み部分にSDカードを装着する

水に濡らすときには、オーリングの周囲にグリースを塗らなければならない

なりは小さいがかなりのタフガイ

このATC2K、有り体に言えば"防水型デジタルビデオカメラ"。水深3mまでの耐水性能を備えるため、雨天時の撮影はもちろん水辺での使用もOK、深く潜らなければ水中での撮影にも使える。最大解像度はVGA(640×480)と高くはないが、フレームレートは最高30fpsと、動画としての一定の水準は満たしている。電池込みの重量は約170gほど、大きさもあわせると"ちょっと細めの缶コーヒー"といったイメージだ。

記録メディアにはSDを採用、最大2GBでSDHCには非対応だが、VGA / 30fps / 音声ONという条件で1時間の撮影が可能。画素数にはQVGA(320×240)とQQVGA(160×120)、フレームレートには15fpsを選択できるので、そのぶん撮影時間を延ばすこともできる。ちなみに、QQVGA / 15fps / 音声ONの場合、2GBのSDメモリカードに約13時間14分記録できる計算だ。

注目すべきはその価格。メーカーの直販サイトではなんと18,900円(税込)、デジタルカメラの水中ハウジング並みだ。別途SDメモリカードが必要になるものの、2GBのカードが2千円台から入手可能な可能なことを考えれば、まあ笑って見過ごせる程度の出費ともいえる。VGA / 30fpsの動画が1時間撮影でき、電源は単三電池×2本で充電の必要はなく、なんといっても水深3mの耐水性能。ニーズにぴたりとはまれば、猛烈に買い得感ある一品となるだろう。

電源は単三×2本、バッテリの心配がいらないことが強み

ATC2Kの付属品。ハンドルグリップやストラップなどのアタッチメントが付属している

我泣き濡れてATC2Kとたはむる

ATC2Kを試す予定だった沖縄旅行は、9月7日未明に首都圏を縦断した台風9号によって無惨に打ち砕かれた。筆者が搭乗する予定だったJAL0915便が欠航してしまったのだ。不運は重なるもので4歳の娘が発熱、キャンセル待ちの試練には到底耐えることはできまいとの判断のもと、やむなく無期延期となった。

そこで試験場に選んだのが、自宅から車で30分ほどの距離にある辻堂海岸。海水の透明度は沖縄と比べるべくもないが、選択の余地はない。耐水性を確認するため波打ち際で数分ほど、ビデオカメラとしての特性を調べるため国道134号をまたぐ歩道橋の上で30秒ほどの映像をそれぞれ撮影し、帰宅後に確認することにした。ATC2Kは固定焦点 / 画質調整不可のため、撮影に要した作業はカメラを指で支えたことと、撮影を開始するボタンを押した程度だ。

撮影した映像だが、PCの画面で見るかぎり悪くない。暗い部分はツブレてしまいがちで、全体的に解像感は不足気味だが、波が打ち寄せるシーンではMPEG系コーデックのようにブロックノイズが目立つことがなかった。ただし、帰宅後に屋内で撮影した映像を確認したところ明らかに光量不足で、明るい屋外でなければ画質的にはかなり厳しい印象。

なお、VLCでファイル(*.AVI)のコーデックを確認してみたところ、ビデオはMotion JPEG、オーディオは8Hz / 8bit / 64kbpsと判明。VLCにかぎらず、Windows Media PlayerやQuick Time Playerでも再生できることだろう。無編集のAVIファイルをアップロードしておくので、試しに見てほしい。

朝の辻堂海岸。サーファーがたくさんいました

海水の透明度は沖縄と比べるべくもなく、小魚を撮影することはできませんでした……

動画1 動画2
辻堂海岸の波打ち際を撮影。波に飲み込まれる瞬間がイイ感じ(AVI形式、47.2MB)
歩道橋から国道134号を撮影。沿道の松林がベタっとした印象だ(AVI形式、16.8MB)
○加賀ハイテック
「アクションカム ATC2K」
機能 ★★
価格 ★★★★
楽しさ ★★★★
怪しさ ★★★
衝動買い ★★★★
TOTAL ★★★★