連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
社会人20年目です。一人暮らしも長く、今後結婚するかどうかわかりません。でもそろそろ人生も折り返し地点なので、最近になって老後のことが心配になってきました。老後を豊かに暮らすためには、今からどうしたらいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 結婚するかどうかわからない状態だとしても、老後を含めた今後の生活を豊かなものにするためには貯蓄を増やすことが必要です。趣味も楽しみながら貯蓄を殖やすために家計の見直しをして支出を減らしましょう。余裕資金で投資に挑戦してみるのも良いでしょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


老後の生活を豊かにするにはいくらあればいい?

社会人としての経験も十分、プライベートも充実した日々をお過ごしの大島様。独身生活を楽しんでいらっしゃいますが、老後のことも気になる年齢になってこられたようです。今後、結婚するかどうかわからないということですが、このまま独身で過ごされた場合、老後の生活費はいったいいくらぐらい必要なのでしょうか。

平成24年の総務省家計調査によりますと、65歳以上の独身男性が1カ月に使う生活費は約14万7千円。この場合の住居費は約1万5千円で、持家の方との平均値となっていますので、賃貸の方は家賃分との差額を上乗せする必要があります。大島様が老後もこのままの住居に住まわれるとすると約20万円7千円ほど必要になる計算になります。

一方、老後の収入はどのくらいになるかというと、男性の厚生年金の受給額の平均は約17万円(出典:厚生労働省年金局「平成23年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)です。老後を豊かに暮らしたいと考えるならば、賃貸住宅の家賃や、趣味やレジャー費など月に5万円ほどのお金が不足しそうです。また、介護状態になった時の費用や、施設に入居することになるかもしれないというリスクにも備えておきたいものです。

自分が将来どのくらいの年金を受け取ることができるかは、日本年金機構「ねんきんネット」の年金額試算でわかりますので利用してみましょう。

老後の生活を見据えて貯蓄を殖やそう

現在の家計データを拝見すると、趣味を楽しみながらも毎月5万円程度、ボーナスで50万円と年間100万円以上の貯蓄ができているようです。しかし、貯蓄残高が100万円となっているのは、車や旅行などでまとまったお金が出て行っているのかもしれません。このままですと、豊かな老後生活が難しくなってしまいますので、家計の見直しが必要です。

また、定年退職してから年金受給までの「空白期間」がある場合、その分をこれから貯蓄で用意しておく必要があります。このままの家計ですと、退職時の年齢が60歳として、年金を受給できる65歳までの生活費が約1,380万円。前述のように老後の平均年金収入と、「豊かな老後生活」の支出との間には月に5万円程度の差がありましたので、65歳から85歳まで生きるとすると、年間60万円×20年=1,200万円。合わせて約2,580万円のお金が必要になります。退職金という大きな収入もありますが、今後、年金を受け取り始める年齢も遅くなるかもしれませんし、病気や介護などのリスクもありますので、退職金はそちらのお金に回すことにしましょう。

先取り貯蓄で必要資金を確保しながら、NISAで投資を始めても

現在の貯蓄残高100万円を引いて残り約2,500万円の老後資金を、60歳までの18年間で貯めるならば、年間約140万円の貯蓄が必要です。現在の貯蓄ペースでもクリアできる金額ですが、車の買い替えや旅行など、まとまったお金を使う予定があるなら、別途貯蓄が必要です。必要な金額を見積もり、年間貯蓄額に上乗せしましょう。

毎月、給料から生活をして残ったお金を貯めるのではなく、先に財形貯蓄や自動積立預金などで貯蓄を確保するようにしましょう。趣味のお金を減らすとストレスもたまると思いますので、自炊を増やしたり、外食を減らしたりして食費を減らすよう心がけましょう。

投資にも興味があるということでしたら、今年から始まったNISA(少額投資非課税制度)を活用して、投資を始めてみても良いでしょう。NISAは、毎年100万円を上限として、その配当や譲渡益を最長5年間非課税にする制度ですが、損失が出た場合の損益通算や繰越控除ができないなどデメリットもあります。メリットとデメリットを理解し、うまく利用していきましょう。まずは、貯蓄の1割程度を投資に振り分け、毎月一定額の投資信託を買い付けるようなやり方で始められてはいかがでしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 福島佳奈美

金融系SE(システムエンジニア)からファイナンシャルプランナーに転身。Webサイト中心にマネーコラム執筆を行うほか、教育費やライフプランニング、保険、家計見直しなどのセミナー講師、個人相談などの活動を行っている。