今日は、オバマ大統領が主(あるじ)となった米ホワイトハウスは、実に愉しそうという話題を中心に、いくつかの話をいっぺんにしてみる。

大統領候補だったころからハリウッド(エンターテイメント業界)との結びつきが強かったバラク・オバマ米大統領。デンバーで開かれた前回の民主党全国大会(2008年8月)では、その少し前に映画『ドリームガールズ』で一躍スターダムに駆け上がっていたジェニファー・ハドソンが国家を斉唱していたし、2009月2月の就任式前後には、実に豪華な顔ぶれが揃ったお祝いのコンサートが開かれたり、ネイバーフッド・ボウルとよばれるダンスパーティでビヨンセが(映画『キャディラック・レコーズ』の挿入歌だった)「アット・ラスト」を歓喜の涙をうっすらと浮かべながら熱唱していたことなどがそれぞれ話題となっていた。


(ボノやブルース・スプリングスティーン、ジョン・ボン・ジョヴィから、ジョシュ・グローバンまでいろんな人が登場したお祝いのコンサートだったが、どれを選んでいいか悩んだ末に、やはりこの人、ということで。ちなみに、"America The Beautiful"は国家と同じくらいよく歌われる米国人にとって大切な歌、とのこと)

(MCはいわずと知れた映画界の大物、デンゼル・ワシントン。2007年の主演映画『アメリカン・ギャングスター』では、ジェイ・Zの曲が音楽を担当し、同名のアルバムもリリースされていた)。

このネイバーフッドボールではほかに、R&B/ヒップポップ界の「大姉御」、メアリー・J・ブライジなども登場。

[Mary J. Blige-Just Fine (live at The Neighborhood Ball:An Inauguration Celebration)]

さらに就任式本番では、あのアレサ・フランクリンが(もはや解説不要?)。

[Aretha Franklin MY COUNTRY 'TIS OF THEE Inauguration Day 2009]

そんなオバマ大統領のことだから、ホワイトハウスの主となってからも機会がある毎に、いろんなアーティストを招いているようだ。

たとえば、毎年4月のはじめに行われるイースター(復活祭:ここからが春の始まり)のイベント「Easter Egg Roll」の際には、若手タレントが招かれて国歌を斉唱したり、遊びに来た子供たちに歌を披露したりしている。今年の春には、X-ファクターUS(シーズン1)でサイモン・コーウェルのお気に入りとなり、比較的後まで勝ち残っていたレイチェル・クロウが登場。

[Opening the 2012 White House Easter Egg Roll]

前年の2011年には、シンガーソングライターのコルビー・キャレイ(Colbie Caillat)。

[Opening the 2011 White House Easter Egg Roll]

そして、その前年2010年には、人気ドラマ『グリー』にメルセデス役で登場していたアンバー・ライリー(Amber Riley)も。

[ Glee at the White House - National Anthem]

この年にはグリー(オリジナル)キャストの面々も一緒に呼ばれて、ホワイトハウスの庭に設けられたステージで子供らを前にパフォーマンスを披露していた。みな、いまよりも少しずつ幼い感じ。レイチェル役のリア・ミシェルが力一杯なのはいつも変わらないが。

[Glee @ WhiteHouse1.mp4]

さて。

次は、米PBSで昨年初めに放映された「IN PERFORMANCE AT THE WHITE HOUSE:The Motown Sound」という催しから。

その幕開けとなったメドレーは、ニック・ジョナス(ジョナス・ブラザーズ三男)、シール(ハイディ・クルムの元夫)、ジョン・レジェンド、それにジェイミー・フォックスというある意味「夢の豪華メンバー競演」で、ザ・テンプテーションズのヒット曲の数々を披露。

[IN PERFORMANCE AT THE WHITE HOUSE | Jamie Foxx and Opening Medley]

この日はほかにもいろんあアーティストがお呼ばれしていたようだが、そのなかでも「意外性」でおそらく一、二を争うのが、シェリル・クロウのカバーしたジャクソン5の曲かもしれない。

[[HD] Sheryl Crow - "I Want You Back" (The Motown Sound: In Performance at the White House)]

なお、オバマ大統領がアフリカ系アメリカ人のアーティストや音楽ばかりを贔屓しているというわけではなく、「モータウンのゆうべ」や「ブルースのゆうべ」のほかに、「カントリーのゆうべ」などもしっかり開催されていた。

ブルースのゆうべには、いまやほとんど神様に近いBBキング、ジェフベックとミック・ジャガー、それにオバマ大統領自ら歌を披露する場面も。

[In Performance at the White House | B.B. King "The Thrill is Gone" | PBS]

[Jeff Beck, Mick Jagger - "Commit a Crime" (Red White and Blues at the White House)]

[President Obama Sings "Sweet Home Chicago"]

いっぽう、カントリーのゆうべには、アメリカン・アイドル(シーズン10)の準優勝者、ローレン・アレイナなどがさっそく呼ばれて歌を披露。またフォーク界の大御所で、9月はじめの民主党全国大会でも歌を披露していたジェームズ・テイラーの姿も。

[Country Music: In Performance at the White House | Sneak Peek: Lauren Alaina | PBS]

[James Taylor Performs Witchita Lineman Directed by Leon Knoles]

さらに、ラテン系のスターが勢揃いした別の催しも。

[ White House - Fiesta Latina 2009 - Marc Anthony - Valio la Pena]

(まだ別れる前のJ-Loがマーク・アンソニーを紹介しているMCぶりや声援がちょっと可愛らしい)

ほかに、ポール・マッカートニーとスティーヴィー・ワンダーの競演など、Youtubeでホワイトハウスに関連するビデオを探し始めるとそれこそきりがなくなるので、そろそろ打ち止めにすることにする。

締めに紹介するのは、米国の公民権運動(Civil Rights Movement)に関係するもの。「公民権運動」なんて言葉を目にするのは、高校の世界史の授業の時以来かもしれないが、1960年代にあった人種差別撤廃に向けたこの大きな動きがなければ、その後50年近く経ってアフリカ系アメリカ人の大統領が誕生したり、あるいは女性の大統領候補が登場したりすることも決してなかっただろうというとても重要な出来事である。

この公民権運動に関係の深い音楽を祝うゆうべが2010年のはじめにホワイトハウスで開かれていた。さまざまな、そしてある意味でお馴染みのアーティストが歌を披露していたが、そのなかにはジェニファー・ハドソンとモータウンの大御所スモーキー・ロビンソンがデュエットした「People Get Ready」(1965年のヒット曲。作曲はあのカーティス・メイフィールド)、そのスモーキー・ロビンソンが切々と歌い上げる「Abraham Martin and John」(1968年のヒット曲)なども見られる。

[Smokey Robinson & Jennifer Hudson Perform at the White House: 2 of 11]

[Smokey Robinson Performs at the White House: 10 of 11]

さらに、ボブ・ディランの恋人で、近年では故スティーブ・ジョブズ(アップル共同創業者)の「元カノ」であったことも知られるようになったジョーン・バエズも名曲「We Shall Overcome」を披露。

[Joan Baez Performs at the White House: 5 of 11]

なお、この催し自体は明らかに大人向けのものであることがその雰囲気などから読み取れるが、そこに大統領夫妻の子供らが同席を許されているのは、たぶんそうした「歴史のお勉強」あるいは「米国市民としての人格形成」といったことへの配慮からかも知れない。

追記1

前回の記事の終わりのほうで、LAレイカーズなど複数のプロスポーツチームや、コーチェラなど多数の音楽イベントを開催するアンシュッツ・エンターテイメント・グループ(Anschutz Entertainment Group:AEG)が売りに出される可能性について少しだけ触れていた。このAEGの獲得に、オラクル(Oracle)創業者のラリー・エリソンが動くかも知れない、という話が米国時間12日に報じられていた。

Exclusive: Ellison eyes fellow billionaire's AEG empire - sources - Reuters

次回はこの話と、数々の「豪快なお買い物」で知られるエリソンの話を少しくわしく記すことにする。

追記2

グリーのレイチェル=リア・ミシェルといえば、最近では映画『ニュー・イヤーズ・イブ』でジョン・ボン・ジョヴィやアシュトン・カッチャーと競演したりとなかなかの人気ぶりのようだが、本人が『グリー ザ・コンサート 3Dムービー』のなかで「憧れの人はバーブラ(ストライサンド)」と言っているように、やはりその本領はブロードウェイ系の曲のように思える。その「レイチェル」が2010年のトニー賞授賞式の際にバーブラの「Don't Rain On My Parade」を歌った映像を見つけた。

[Lea Michele Don't Rain On My Parade (The 64th Annual Tony Awards)]

このビデオ、本人の歌(気合いの入った歌いっぷり)もすごいが、それ以上に列席する著名人の顔ぶれもすごい。いまやすっかりアクション女優となった感のあるスカーレット・ヨハンソン、フィラデルフィア76ers(NBA)の小数株主にもなっている俳優のウィル・スミスと例の美人の奥さん、それに我らがジェイ・Z&ビヨンセ夫妻、と驚くべき「密集度」……。

追記3

バーブラ・ストライサンドといえば先週11日に、例のバークレイズ・センターでの公演("Back to Brooklyn"ツアー)を済ませたところだが、このステージで「Don't Rain On My Parade」を披露したかどうかは定かではない。

[Barbra Streisand a proud Brooklynite at Barclays Center concert - CBS News]

御年70歳になるストライサンドだが、この晩は3時間に及ぶステージを務めたとか。生まれ故郷での帰還公演、しかも「三十数年来の夢がかなった」とのことで、ご本人も相当に嬉しかったにちがいない。なお、オバマ支持者としても知られるバーブラはこの日のステージ上でも、ミット・ロムニー(共和党大統領候補)をからかうコメントを発していたとか。