ネットバンキングが登場し、残高照会や振り込みはネットでできるようになったものの、現金の出し入れだけはネットでできないので、キャッシュカードを使ってATMで引き出すのがふつうです。ATMは生活に欠かせないものといるでしょう。とはいえ、意外にわからないのが手数料のこと。今回は、ATMの手数料についてみてみましょう。
預金から差し引くATMの手数料、いくらにするかは銀行によって異なる
ATMでお金を引き出すとき、自分が口座を持っている銀行のATMなら手数料はかかりませんが、他の銀行のATMやコンビニのATMだと手数料がかかります。
例えば、XさんがA銀行の口座にあるお金を、提携しているB銀行のATMで引き出したとします。この場合、A銀行はB銀行に対し、ATMを使わせてもらったことに対して手数料を支払います。それをいくらにするかは、あらかじめA銀行とB銀行の間で決めています。
そして、A銀行は、B銀行に払った手数料分を、Xさんの預金から手数料として差し引きます。その金額はA銀行が決めています。
B銀行へ払った全額を預金者から徴収する銀行もあれば、その一部だけを徴収する銀行もあるし、全部を銀行が負担して預金者への手数料をゼロにする銀行もあるなど、手数料をいくらにするかは銀行によって異なります。
時間外手数料を取るのは、営業時間外のほうがATMに関するコストがかかるから
コンビニのATMも、そのATMを設置している会社と各銀行で手数料を決めています。そのため、「どの銀行のキャッシュカードが使えるか」はコンビニATMを運営している会社によって違います。また、曜日や時間帯によっても手数料が細かく決まっています。
自分が口座を持っている銀行のATMでお金をおろす場合、平日の昼間は手数料がかかりませんが、早朝や夜、土日祝祭日は105円とか210円の手数料がかかります。「自分のお金を引き出すのに、なぜ手数料を取られるのか」と疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。
時間外手数料を取るのは、銀行の営業時間外のほうがATMに関するコストがかかるから、というのが理由のようです。銀行の店舗内にあるATMの場合、営業時間中なら、顧客からの問い合わせにすぐ応えられるし、機械の不具合(お札がつまるなど)の場合でも、すぐに行員が対応できます。
でも、営業時間外になると、コールセンターやメンテナンスのためのスタッフに割増の賃金を払って常駐させておかなければなりません。ただ、こうした時間外のコストをきちんと計算して、105円や210円という手数料の額を決めているわけではないようです。
ATM単体で考えると、105円や210円の手数料では完全に"赤字"
それでも、特に銀行の店舗外にあるATMは、設置してある土地の賃貸料や電気代、清掃費などのコストがかかり、ATM単体で考えると、105円や210円の手数料では完全に"赤字"なのだそうです。
ATMの手数料は、他行やコンビニのATMが使えたり、銀行の営業時間外でもお金をおろせたりする利便性やサービスに対する対価と考えられます。
とはいえ預金者にとって、1年ものの定期預金金利が0.025%の時代に、105円や210円の手数料を払うのは大きなムダであることは間違いありません。利用するATMや時間帯を選んで、できるだけ手数料を払わないようにしたいものです。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。