9月26日に発売した、「サントリー天然水 PREMIUM MORNING TEA ミルク」。見た目は水のようだが、実際に飲んでみると確かにミルクティーの味がした。

しかし、よく考えてみてほしい。何で見た目は透明な水なのに、ミルクティーを飲んでいる気がするんだ。どう考えても水の中に、「ミルクティーを飲んでいると錯覚させられる何か」が入っているとしか思えない。つまり以下のような仮説が生まれる。

筆者の仮説

そうなると、「朝摘みオレンジ」や「ヨーグリーナ」など全てがそうなるのではないか。どうやって作られているんだこれ……。フレーバーウォーターを飲んでいる全ての読者のために、その謎を解き明かそう。と、いうことで「サントリー商品開発センター」(神奈川県川崎市)に行ってきた。

今回質問に答えてくれたのは、

サントリー食品インターナショナルのジャパン事業本部商品開発部の本坊瑞穂さんだ。

フレーバーウォーターは香りを抽出していた!?

福田: 「本日はよろしくお願いします」


本坊さん: 「お願いします」


福田: 「『サントリー天然水 PREMIUM MORNING TEA ミルク』を飲みました。見た目は普通の水なのに味はミルクティーだったので、正直怖かったです


本坊さん: 「そうですか(笑)。こちらとしては、皆さんに新しい紅茶を提案したかったんです。なんというか、ミルクティーって大人になってからは、甘さが気になってあまり飲まなくなったという方が多いですよね。なので、大人でもすっきり飲みやすいミルクティーが作れればなと」


福田: 「確かに新しい体験ですけど、斬新過ぎます。今回は、なぜ何で透明な水なのにミルクティー味なのか、仮説を立ててみました」


本坊さん: 「…………」


福田: 「…………どうでしょう?」


本坊さん: 「これは違いますね」


福田: 「えっ、脳が錯覚する薬みたいなの入れている訳じゃないんですか」


本坊さん: 「そんなわけないじゃないですか! いいですか、サントリーのフレーバーウォーターは、香りと糖、酸味、そして果汁や乳成分等の素材で構成されています」


福田: 「全然やばいものが入ってなかった」


本坊さん: 「中でも『香り』というのが特に重要です。人の味覚には香りが大きな影響を与えています。風邪を引いて鼻が詰まっているときって、味を感じづらいですよね」


福田: 「風邪のとき何を食べても味がしないのってそういうことだったのか。それじゃあ今回は、紅茶の香りっぽい何かを入れていると」


本坊さん: 「違います。『天然水』シリーズのフレーバーウォーターは、『香り』そのものを入れているんです」


福田: 「やべえ、何言っているのか分からなくなってきた。香りを入れる?


本坊さん: 「ピンと来ないと思いましたので、今回はその様子をお見せしましょう。こちらの装置を使って!!」


福田: 「すっごい。理科の実験みたいな装置が出てきた」


本坊さん: 「これを使って、香りだけを抽出します。まずはビーカーに水を注ぎます。水に触れないところに網を置き、そこに紅茶の茶葉をセット。それを火にかけると、水が沸騰して水蒸気が発生します」


本坊さん: 「その水蒸気が紅茶の茶葉に触れ、香りだけが溶け込むんです。最後にその香りの溶け込んだ水蒸気が管を通って冷却されれば、色や渋みを取り出さず、香りだけを抽出した紅茶アロマが出来上がります」


福田: 「説明が専門的過ぎて頭に入ってこないですね」


本坊さん: もう実際に見て感じていただいたほうが早いですね! では水を加熱してみましょう」


福田: うおおおおおお、沸騰してきた!


本坊さん: 「それが上のチューブを通って冷やされ……」


本坊さん: 「こうやって液体に戻って出てきます」


福田: 本当に透明なままだ。でもこれって本当に香りが抽出できているんですか?」


本坊さん: 「確かめてみます?」


本坊さん: 「香ってみてください」


福田: 「はい……」


福田: うそだろ……!? 本当に紅茶の匂いがする!!」


本坊さん: 「お分かりいただけましたか? こうやって素材から香りを取り出して、サントリーのフレーバーウォーターは作られているんです」


福田: 「飲んでみると後味も紅茶っぽい」


本坊さん: 「ミルクティーの場合は、ほかにも牛乳が必要ですよね。牛乳ってあんまり香りがないので、牛乳に含まれる乳糖と乳清ミネラルという透明な成分を配合してミルク感を生み出しているんです」


福田: 「そう! 商品を飲んでいて実際に牛乳っぽさも感じられました」


本坊さん: 「あとは糖類と酸味料で味を調整して、皆さんがすっきり飲めるミルクティーに仕上げました」


福田: 「透明なミルクティーの謎が解けた気がします」


フレーバーウォーターは何でも作れるのでは?

福田: 「結局、私が立てた仮説は全然違いましたね」


本坊さん: 「うーん、大きく外しているわけではないですよ。『ミルクティーを脱色して作られているのでは?』とおっしゃる方もいますし」


福田: 「確かに、それを疑ってもおかしくないくらいの味でしたもん」


本坊さん: 「普段飲んでいるものから香りだけを抽出していますので、誤解してしまうかもしれません」


福田: 「『朝摘みオレンジ&サントリー天然水』も同じ要領なんですか?」


本坊さん: 「同じような製法を使っています。朝摘みオレンジは、オレンジ果汁を加熱し、香りを蒸気に溶け込ませて濃縮しています。例えばお家でカレーを煮込んでいるときに、フタについた水滴はカレーの香りがしますよね。あれと同じです」


福田: 「確かに! 鍋のフタに付いた水も透明なのに、カレーの匂いがしますよね」


本坊さん: 「香りって人が味を感じる上でとても重要で、その香りをどこまで素材にこだわって作るかというのが大事ですね」


福田: 「香りが取り出せれば何でもフレーバーウォーターが作れそうな気がしますね。緑茶とか」


本坊さん: 「物理的には可能ですが、おいしい味わいにしていくのがかなり大変です。お客様に喜んでいただけるフレーバーウォーターを今後も生み出していきたいですね」


福田: 「今日はどうもありがとうございました!」



今回のインタビューで分かったことは、「サントリーのフレーバーウォーターは、素材から香りだけを抽出し、そこに糖や酸味などを合わせてその味を生み出している」ということだ。「香り」という要素が非常に大切で、その香りがあるかないかで味覚も変わってくるとのこと。次はどんなフレーバーが出てくるのだろう、期待に胸が膨らむばかりだ。