NTTドコモは5月24日、2017年夏期に発売する新端末および新サービスの発表会を開催した。発表された新端末数は9台と控えめながら、新しい割引プラン「docomo with」との組み合わせでこれまでにない低価格を実現する端末など、新しい試みも発表された。

■ドコモ2017夏新製品、全9モデルと新サービスを一挙解説!【後編】

必要最小限まで絞り込まれた端末ラインナップ

NTTドコモの吉澤和弘社長によってプレゼンテーションが行われた

今回の発表会だが、全体として非常に「絞り込んで来た」という印象が強い。端末数は全9モデル(スマートフォン8機種、タブレット1機種)だが、冬春モデルの「mono」のようなローエンド向け端末や折りたたみ型端末も入っていない。2016年の冬春モデルが13機種発表されたことを考えると、かなりシンプルだ。

近年はMVNO向けを中心にSIMフリー端末も多く流通するようになり、その多くはドコモ回線で利用できる。安い端末が中心ではあるが、機能面・性能面ではハイエンドに比肩するモデルも多く、SIMフリー版iPhoneの販売も好調だ。そんな中、以前のように大量の端末を投入するのでは、販売在庫などの無駄が大量に生じてしまう恐れが高い。結果的に、無駄なく魅力的な端末を提供するという意味でも、このくらいの数に絞り込まれることになったのだろう。

発表会の後半では新CMに登場する俳優の綾野剛さん、高畑充希さん、堤真一さん、お笑いタレントのブルゾンちえみさんらが登壇し軽妙なトークを披露した

今年の夏モデルの特徴としては、国内最高速となる788Mbpsの通信やHDR動画コンテンツへの対応モデルなどが中心。また後編で紹介する「すぐ電」のアップデートや「ケータイお探しサービス」のように、今回のモデルからしか利用できない新サービスもある。前編では、端末を一挙紹介していく。2014年~15年ごろに機種変更して、そろそろ新しい端末への乗り換えを考えているユーザーは、ぜひ参考にしてほしい。

4K HDRディスプレイ搭載でカメラも強化

  • Xperia XZ Premium SO-04J(2017年6月下旬)
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Xperiaらしい、全体に派手すぎず渋いデザイン。背面は光沢仕上げになっている

ソニーのフラッグシップモデル。2月のMWC 2017で最優秀端末の栄誉を手にした同機だが、日本国内ではNTTドコモからの専売となり、ドコモのAndroid端末としてもフラッグシップモデルといえる存在になる。

2015年に発売されたXperia Z5 Premium以来となる5.5インチ・4Kディスプレイを搭載。このディスプレイはスマートフォンとしては世界初となる4K・HDR対応をうたい、単なる4Kコンテンツではなく、色の再現性がはるかに優れたHDRコンテンツが再生できる。4Kコンテンツは「dTV」および「ひかりTV 4K」で配信されているが、特にdTVでは4K・HDRに対応した映画5本が期間限定で提供される。

4K HDR(上)は通常の4K映像(下)と比べて明らかに明暗差が大きく、色も肉眼で見たかのように鮮やかだ

また、メインカメラにはソニーのメモリ積層型イメージセンサ「Motion Eye」を採用。4K動画の撮影(HDR撮影は非対応)に加え、最大で960fpsというハイスピード撮影が可能。通常30fpsで撮影するビデオの32倍ものスロー撮影ができるので、さまざまな動きのあるシーンで、映画などの特撮シーンのような印象的なスロー撮影が可能になる。なお画素数はメインカメラがXperia XZの2,300万画素から1,920万画素へと減少しているが、事実上問題はないだろう(インカメラは変わらず1,320万画素)。

SoCはハイエンドモデルらしく、Qualcommの最上位モデルであるSnapdragon 835(MSM8998)を搭載。2.45GHz+1.9GHzのオクタコアとなっており、4GBのメインメモリと合わせて高速な処理を実現している。MSM8998はモデムチップがLTEカテゴリー16(ダウンロード速度最大1Gbps)に対応しており、今回の788Mbps対応もこのSoCのおかげといえる。

なお、788Mbpsは東名阪地域の1.7GHz帯が利用できるエリアのみで、それ以外の地域では1.7GHz帯の代わりに2GHz帯を使用するため、738Mbps止まりとなる。

6.2型の有機ELを搭載、VRバイザーのプレゼントも

  • Galaxy S8+ SC-03J(2017年6月上旬)
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背面は鏡面仕上げになっており、美しいがなかなか撮影泣かせ。指紋もやや目立つのでケース必須か

6.2インチと大型の液晶を搭載したGalaxyシリーズのフラッグシップモデル。前モデルのS7シリーズはバッテリーの発火問題もあって日本での発売を見送った経緯があるが、S8シリーズではドコモによる検証が行われ、問題がないことが確認されているという。

液晶は「QHD+」(横1,440×縦2,960ドット)という変則的なサイズで、アスペクト比は18.5:9になる。また、左右は液晶がエッジに向かって曲線を描いているGalaxyおなじみになったスタイルで、ほとんど縁がない。このため6.2インチというサイズの割には幅が小さく、5.5インチクラスよりも持ちやすい。

4Kには非対応だが、有機EL(Super AMOLED)ディスプレイによりHDR動画にも対応。高い色再現性を実現している。SoCはサムスン電子独自のExynosシリーズではなく、Xperia XZ Premiumと同じくMSM8998を採用しており、下り788Mbps通信への対応も同等だ。

VRバイザーの「Galaxy Gear VR with Controller」に対応しており、Oculus Riftと互換性のあるVRコンテンツを楽しめる点も従来通り。なお、発売前に予約した全ユーザーに対し、Galaxy Gear VR with Controllerがプレゼントされるキャンペーンも実施される。4Kには非対応だが、VRコンテンツを楽しみたいという場合はXperia XZ Premiumよりもこちらのほうが優位そうだ。

Galaxy Gear VR with Controllerについては、S8シリーズの購入者向けにプレゼントキャンペーンが行われる模様

120HzのハイスピードIGZ0で"ヌルサク"操作

  • AQUOS R SH-03J(2017年7月)
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シンプルなデザインながら秘めたパワーは強烈。羊の皮を被った狼的端末だ

今回、Xperia XZ Premiumと並んで788Mbps通信に対応する国産端末となる。ディスプレイは同社のIGZOパネルを採用し、解像度は5.3インチ・WQHD(1,440×2,560ドット)。120Hzの高速描画に加えて反応速度が従来比1.5倍になり、スクロールや動画再生時の残像感がほとんど感じられなくなっている。HDR動画にも対応しているほか、非HDR動画でも明暗差の激しいシーンなどでダイナミックレンジを向上させる「バーチャルHDR」に対応している。

SoCはMSM8998だが、クロックは2.2GHz+1.9GHzと、同じMSM8998を採用しているXperia XZ Premium(2.45GHz+1.9GHz)やGalaxy S8+(2.35GHz+1.9GHz)よりも遅い設定になっている。おそらく、発熱量の多いMSM8998をできるだけ長時間利用できるようにクロックを下げているのだろう。

788MbpsとHDR動画に対応した今夏モデルの中ではもっとも「普通」なモデルだが、手に馴染みやすい5.3インチというサイズ感、通常利用で約3日以上利用可能な電池持ちなど、日常の道具としての使い勝手はよさそうだ。高性能で手堅い端末を探しているなら、候補に入れておきたい一台だ。