Lattice Semiconductorは5月19日、都内で記者説明会を開催し、同社社長兼CEOのDarin G. Billerbeck氏(Photo01)による同社の近況と製品展開などについて説明を行った。

Photo01:同社社長兼CEOのDarin G. Billerbeck氏。2010年11月に就任なので、そろそろ6年半ほど経過していることになる

同社はこれまで定期的に、こうした説明会を行ってきたが、前回からは2年ほど経過している。この間に同社はまず株式上場会社から株式非上場の会社に変わったほか、2015年にはSilicon Imageを買収して、単なるFPGAのみならず映像関連規格製品も取り扱うようになっている。これに先立ち2004年にはSiBEAMを買収してミリ波関連製品の充実も図っている関係で、同社の製品ポートフォリオはなかなか面白いことになっている。

さてそんな同社であるが、ここ数年は平均11%程度の売り上げの伸びを示しており、足元は堅調だとする(Photo02)。ただセグメント別売り上げを見ると、コミュニケーションが急速に減っているが、これはLTEの普及が一段落したためで、次に立ち上がるのは5Gの展開が始まる2020年以降になるだろうという見積もりだった。ただそのコミュニケーションの落ち込みを上手くカバーする形で、特にオートモーティブが増えていることで全体としてはバランスが取れている形だ。

Photo02:地域別で言うと圧倒的にアジアが多く、そのメインは中国・韓国・日本だそうだ

そんなLatticeの現在の製品群は大きく3種類。同社の元々のFPGA群、旧Silicon Imageの技術やポートフォリオをベースにしたASSP/pASSP、それとSiBEAMベースとなるmmWaveとなる(Photo03)。

Photo03:pASSPはProgrammable ASSPのこと。要するにASSPにFPGA Fabricを加えた形の製品。例えばコチラがpASSPにあたる

まずそのFPGAについてだが、以前から同社はAlteraやXilinxの様な大型なFPGAではなく、小型省電力の製品を狙うと公言しており、この路線に変更はない(Photo04)。この結果としてAlteraはIntelの、XilinxはTSMCのFinFETを利用する方向に舵を切っているが、Latticeはここに28nmのFD-SOIを投入するとしている。その理由は、省電力性にあると同氏は説明している(Photo05)。同社は従来の製品は、リークの少ないTSMCの40nmを使ってきた(例えばコレ)が、そろそろ性能面でのネガティブ面も見えてきた。そこで28nmに移行することで性能を改善しようとしたが、ここでバルクの28nmではなくFD-SOIを採用することで、性能/消費電力比を改善できるとしており、これを同社としては差別化の要因としたいと考えている様だ。ちなみに28nm FD-SOIはSamsung Electronicsで製造され、出荷は2018年を予定しているという話であった。

Photo04:Latticeはエッジノードを狙う、としている

Photo05:もう1つFD-SOIのメリットを挙げれば、FinFETのプロセスと比較してアナログ部品を構成しやすいことだろうか。これは将来pASSPもまた28nm FD-SOIに移行させる際にはメリットになってくるかと思う

一方のASSPやpASSPであるが、こちらはHDMIに関しては4K~8Kを現在は中心としつつ、さらに今後の高速化が期待され、一方pASSPに関してはさまざまなスマートビジョンが今後出てくることを想定しているとする(Photo06)。

Photo06:元々同社のFPGAはI/Fのグルー・ロジックとして使われることが少なくなかったが、pASSPによって映像向けのグルー・ロジック(例えば利用するカメラのタイプが変わってしまって、そのままでは接続できない場合に利用するなど)の分野まで広がった、と考えるのが正解かもしれない

3つ目のmmWaveは、数cm~百mオーダーという、両極端のソリューションが用意されているのが面白い。数cmは「Snap」(Photo07)である。これは何かと言うと、アプリケーションから見るとUSB 3.0に見えながら、物理配線をミリ波に置き換えた、というもので、5Gbpsでの送受信が可能と言う訳だ。短距離のソリューションなので消費電力もそう大きくない。次は映像のミリ波伝送である「WirelessHD」(Photo08)で、これは10mまでの範囲で運用ができるとする。3つ目が100mオーダーのソリューションである「GigaRay」で、これは例えば4G/5Gのバックホール向けに利用できるとしている。

Photo07:Snapそのものは最大12Gbpsの双方向通信なので、規格的にはUSB 3.1 Gen2であっても追いつく可能性はあるが、今はUSB 3.0(というか、USB 3.1 Gen1)相当に抑えている模様

Photo08:最初はHTC Vive向けのTPCASTに採用されたそうだ。現在は4K@30fps、ないし1080p@120fpsをサポートするという

Photo09:同社はGigaRayを使ったメトロエリアのメッシュネットワークを5Gのバックボーン用に提案しており、同種のものがすでにGoogleのキャンパス内で利用されているとした

ちなみに「車載向けはやらないのか? と良く聞かれる」(Billerbeck氏)そうだが、すでにAES-Q100に対応した製品を幾つかラインアップしており、またPhoto02でも"Industrial & Automotive"が伸びていることからも判るように、車載向けももちろん視野に入れているという。

もっとも同社の場合、AlteraやXilinxの様に自動車向け部門を作って製品を投入する、というほどには自動車に傾倒している訳ではないようだ。例えばADASやらセンサフュージョンやらでカメラの数が増えてくると、当然そのうちグルー・ロジック(Glue Logic)が必要になるケースも増えてくる。同社はそうしたケースに向けて、言ってみれば「AES-Q100に対応したデバイスを用意するだけ」でしかないが、そうした形であっても確実に利用される数は今後増えると見ているようだ。

Photo10:「日本ではオートモーティブが今後伸びると思う」という話もあった

ちなみにAlteraやXilinxも、Latticeのメイン市場である低価格/低容量の領域を狙って、(例えばAlteraはCyclone 10)製品を投入しているが、これに関して「確かにCyloneは価格的には競合し得る。ただあちらは言ってみればウォーターフォール方式で、6入力LUTの構造を維持したままロジック数を減らした、効率のよくないものだ。Latticeの製品は効率を重視した4入力LUT構成だし、電力効率もずっと高い」と、こうした低価格品に関しては競合になりえないと見ているようだ。

製品ポートフォリオは随分充実したが、それでも「我が道を行く」という方針は2年前からまったくブレていないことが再確認できた説明会であった。