【レポート】

産官学連携研究の拠点、東大生研の新しい実験施設が公開 - 西千葉から柏キャンパスへと機能移転

東京大学生産技術研究所(東大生研)の附属千葉実験所が今年4月、千葉市稲毛区から東京大学柏キャンパスへと機能を移転した。これに伴って5月2日、機能移転式典が行われるとともに新しい施設が報道関係者に公開された。

柏キャンパスへと機能移転した東大生研の実験所

東大生研は、生産に関する技術的諸問題の科学的総合研究ならびに研究成果の実用試験を目的とした日本最大規模の大学附置研究所。1949年に現在の千葉市稲毛区弥生町に設立され、産学連携を推進してきた。

研究所本体は1962年に六本木へ、2001年には駒場キャンパスへと移転された一方で、都心のキャンパスでは実施が難しい大規模な実験的研究やフィールドテストのための大型実験設備を含む施設は、附属千葉実験所としてそのまま運営されてきた。しかし今回、キャンパス計画の一環として、千葉実験所から柏キャンパスへ機能が移転されることとなった。

東大生研の概要

キャンパスの変遷

新たな東大生研の実験所は、柏キャンパス北西部の敷地内にその実験棟や施設を構える。以下、報道関係者に公開された実験棟や施設について順に見ていこう。

柏キャンパス北西部の一角が東大生研の新たな実験所となる

約8400m2という広さを持つ実験棟Iは、東大生研の今井公太郎教授が設計したもので、大空間実験室を持つことが特徴。ここでは、産学官連携プロジェクト「CMI(先進ものづくりシステム連携研究センター)」の研究開発などが行われる。CMIでは、ボーイングや三菱重工など25社の民間企業が参画し、複合材加工技術や難加工材の切削技術、高速切削技術などの向上によって、航空機製造技術の高度化を目指していく。

大空間実験室。CMIの研究開発などが行われる

ロボット切削システム

熱間ストレッチ成形加工機

熱間ストレッチで成形されたチタン合金

5軸マシニングセンター

実験棟Iの手前にある少し不思議な形をした建造物は、張力型空間構造モデルドーム観測システム「ホワイト・ライノII」だ。太い柱を用いず、張力で一体化する超軽量構造「テンセグリティ」を活用して設計されていることが特徴。その不思議な外観からアートとしての価値が重視されているが、世界に例のない構造であるため、すべての部材の歪みをモニタリングし、温度変化などによる張力変化を観測していくという。

「ホワイト・ライノII」

テンセグリティ構造

テンセグリティ構造を骨組みとして利用

海洋工学の研究開発を目的とした実験棟IIには、長さ50m、幅10m、深さ5mの海洋工学水槽と、長さ22m、奥行き5mの風路付造波回流水槽が設置されており、波浪による海面環境や風による空中環境、流れによる水中環境を人工的に作り出すことができる。船舶や海洋構造物の性能実験に加えて、変動水面におけるマイクロ波散乱実験、大水深構造物の挙動計測実験、海中ロボットの性能実験などが行われる。

海洋工学水槽

波を作り出している様子

竣工式の様子

屋外には、千葉試験線2.0および走行試験走路・交通実験用信号機から構成されるITS R&Rという実験フィールドが広がっている。電車車両や自動運転バスの走行実験など、実スケールのさまざまな実験を行うことがその目的だ。千葉試験線2.0は、全長約333mの実スケールの試験線であり、直線、緩和曲線、定常曲線、分岐器、踏切などが設けられている。今回の移転にあたって、研究用車両として銀座線01系が東京メトロより寄贈された。

千葉試験線2.0の開通式の様子。今回寄贈された銀座線01系もみえる

千葉試験線2.0では車両や台車の走行試験などを行う

一方、走行試験走路はアスファルト舗装されており、自動車や二輪車、飛行体などに関する実験に対応できる。式典当日には、自動運転バス試乗会が行われていた。

自動運転バスの外観

自動運転バスの内部の様子

東大生研所長 藤井輝夫教授

以上のように、大規模な実験棟や施設を備えた東大生研から今後、いったいどんな成果が生み出されてくるのだろうか。東大生研所長 藤井輝夫教授は「千葉実験所で培った産官学連携や大規模実験、実践的研究のスピリットを受け継ぎつつ、新しい環境で他の研究所、研究科とのシナジーを生かしていきたい。本郷、駒場、柏という大きな拠点のひとつに加わるということもあり、柏キャンパス自体の活性化にも貢献していきたい」と意気込みを語っていた。産官学連携研究の拠点として、場所を新たにした東大生研の発展に期待したい。

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