『アイドルマスター ミリオンライブ!』の4thライブ「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」が、2017年3月10日~12日、東京・日本武道館にて開催。今回は最終日の「DAY3 Starlight Theater」公演を紹介しよう。
公演最終日のラストには、幾つかのスペシャルサプライズや発表が行われた。まずは4年間の応援に対する感謝のサプライズから紹介すると、一つ目は最終日のアンコールに、3DAYSに出演したミリオンスターズ36人がサプライズ登場。36人でテーマソング「Thank You!」を歌唱するという夢の光景が見られた。二つ目は、これまで『ミリオンライブ!』がリリースしてきた中で、ライブ披露の機会がなかった楽曲を全て4thライブで歌い尽くしたこと。これには公式コミックに特典CDとして付属した楽曲も含まれる。
最後は、アンコール前に上映された4周年記念アニメーションPVだ。PVには田中琴葉を含む37人のミリオンスターズが登場。PV中には、天海春香、星井美希たち765プロオールスターズも登場するという、まさにオールスタームービーだ。「PV」とは銘打ってはいるものの、実質は短編アニメーション作品といっていい内容。映像の冒頭はゲームで屈指の人気を誇るエピソード「アイドルヒーローズ」の世界観を再現した映画のワンシーンから始まるが、やりすぎクオリティの劇中劇で観客のつかむのはアニメ「アイドルマスター」チームが得意としていた技法だ。同PVは、GREEで配信中のゲーム『アイドルマスター ミリオンライブ!』内で既に見ることができる。
これらが『アイドルマスター ミリオンライブ!』を4年間応援してきたファンに対する感謝の、集大成のサプライズだった。
そして、もちろん本作の未来に関する発表も行われた。もっとも大きいのは新作スマートフォンアプリ『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』の制作決定だろう。配信予定は2017年。公開されたPV第1弾では、春日未来、最上静香、伊吹翼、箱崎星梨花、真壁瑞希、野々原茜、豊川風花といったアイドルがクインテット(五人組)でライブを行うゲームオリジナルモデルの映像を見ることができた。ゲームジャンルを含む詳細は未発表だが、坂上陽三総合プロデューサーによれば「舞台は765プロライブシアターで、ふれあいをテーマに作っています」とのことだった。
アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ PV第1弾
音楽方面では、新CDシリーズ「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION」の制作が発表されたが、「LIVE THE@TER ○○○○」というこれまでのCDシリーズの命名法則を外してきたのが興味深い。第1弾として『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 01 Brand New Theater!』の制作が決定しており、武道館公演最終日に歌唱された『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』のテーマソング「Brand New Theater!」と、4周年記念PVの挿入歌「インヴィンシブル・ジャスティス」(歌:伊吹 翼 (cv. Machico)×高坂海美 (cv. 上田麗奈))が収録されるとのことだ。
ミリオンスターズが一緒に過ごした4年間の集大成
さて、ライプのレポートに入ろう。最後には36名集合などのさらなるビッグサプライズがあったものの、アンコール前まではサプライズユニット登場も含めて、基本的に初日と2日目の流れを踏襲する形でライブが行われた。
4thライブ3日目のライブ本編には、日本武道館に向けて結成されたチーム「Starlight Melody」の山崎はるか(春日未来役)、麻倉もも(箱崎星梨花役)、雨宮天(北沢志保役)、稲川英里(大神環役)、上田麗奈(高坂海美役)、小笠原早紀(野々原茜役)、桐谷蝶々(宮尾美也役)、末柄里恵(豊川風花役)、諏訪彩花(徳川まつり役)、高橋未奈美(馬場このみ役)、村川梨衣(松田亜利沙役)、渡部恵子(周防桃子役)が出演。さらにサプライズとして、劇場映画をコンセプトにしたCD『THEATER ACTIVITY 02』に出演した愛美(ジュリア役)、田村奈央(木下ひなた役)、浜崎菜々(福田のり子役)、ユニット「灼熱少女」より藤井ゆきよ(所恵美役)、ゲッサン掲載のコミック版『アイドルマスター ミリオンライブ!』から生まれた楽曲「君との明日を願うから」歌唱メンバーより田所あずさ(最上静香役)、Machico(伊吹翼役)が登場した。
本ライブのオープニングナンバーでありラストナンバーである「Thank You!」は、2013年4月に発売された『ミリオンライブ!』最初のCD『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 01 Thank You!』に収録された最初のテーマソングだ。当時、「アイドルマスター」シリーズの作品である『ミリオンライブ!』のCDリリースや制作をランティスが担当することは驚きで迎えられた。そこに至るまでには初代『アイドルマスター』が2005年にアーケードで稼働するよりもさらに前の黎明期、アイマスの企画立ち上げ時期に協力した男たちのつながりもあったのだが、それはまた別の話。
それまで765プロの『アイドルマスター』の音楽にはタッチしておらず、ゼロから手探りで新しいアイマスサウンドを作り上げることになったランティスの制作チーム。彼らが世に出す最初のテーマソングとして、バンダイナムコスタジオ所属の佐藤貴文、モモキエイジが作り上げた楽曲が「Thank You!」だった。アイマスが積み重ねてきたサウンドの魂をこめた楽曲と、"みんなでつくったの 遅くまで残って 手作りの「ぶどーかん」"という歌詞に織り込まれた、いつか日本武道館へと続く物語の欠片。それは『ミリオンライブ!』に蒔かれた最初の種子だった。
ライブが開演するとゆったりとした荘厳なovertureが流れる中、星のステンドグラスを背景にチーム「Starlight Melody」の12人が登場。音楽に合わせた優美なダンスは天高くきらめく星と、流れる流星を象徴しているようだ。そんな12人のシルエットを、太陽、月、星のライトの内、星だけが点灯して照らし出す。
1曲目の「Thank You!」が始まって最初に感じたのは、「歌い出しのソロに、山崎はるかが、いる!」ということだった。そこにその人がいることがどれだけ重要かが、当人の不在で始めて浮き彫りになることはよくあることだ。2日目の「Thank You!」が始まった時、オープニングソロを田所が担当しているのを聴いて、楽曲全体のイメージまで変わってくることに驚いた。近い感覚を覚えたのが2日目の「Marionetteは眠らない」で、平山と愛美がこの曲を歌っている姿を見て、「この曲にMachicoがいないんだ!」という驚き(ミリオン単独ライブではほぼ全ての公演でMachicoがメンバーにいたイメージだ)が最初に来て、続いて「そこに平山が入ると、小悪魔的だった楽曲が、こんなに大人のニュアンスに変わるのか!」という新鮮さがやって来た。
3日間を通せば全員集合になるライブで、本作を牽引してきた3人が別日に別れてそれぞれのライブを作り上げる。そのことに3人も何かを感じていたのかな、と思ったのは、終盤にサプライズ楽曲「君との明日を願うから」を歌うために田所とMachicoが登場したことに対する山崎の喜びにあふれた「やっと会えたよ静香と翼に!」の言葉だった。離れて活動して切磋琢磨する時間が、お互いの大切さを教えてくれる。それはゲッサン連載のコミック版『アイドルマスター ミリオンライブ!』で描かれた物語そのものだった。
「Thank You!」の最初のワンフレーズでこそ山崎に意識が行ったが、全ての演者が次々と「何か」を見せて、その場の主役になっていくのが『ミリオンライブ!』の魅力だ。村川が決め所のMCを簡潔に、そつなく、完璧にまとめた、ただそれだけのことがどよめきと歓声に包まれたりするのは、彼女の共感力が強くて涙もろいパーソナリティをみんなが知っているからだ。
オープニングの「Thank You!」と「Starry Melody」の2曲を通して見れば、一番会場を沸かせたのは高橋未奈美だった。スクリーンが彼女を大写しにした瞬間のどよめきは、彼女が初めて染めたという髪色と、ウィッグだろうか、片側に自然に垂らされた編み込みの太いおさげ、表情やメイクがトータルで作り出すビジュアルがあまりにも"馬場このみ"そのものだったことから起こった。キャラクターと演者のイメージが近づき重なることは多いが、ことビジュアルの再現性の一点が武道館を驚きで揺らしたのは、やはり特異なできごとだ。3日間全体を見渡せば、髪型髪色を限りなく未来に近づけた山崎、2次元ならではの髪の配色をどれだけ再現できるかに挑戦した戸田、ばっさり切って髪を赤く染めた姿がライブを追うごとにジュリアに近づいていく愛美など、もっとアイドルに近づきたい、一緒にステージに立ちたいという気持ちが演者たちからみなぎっていたように思う。
『ミリオンライブ!』の未歌唱曲を全て網羅して歌うというコンセプト上、セットリストは初披露曲も多くなる。小笠原が歌う初期ソロ曲「Heart・デイズ・Night」の初披露では繰り返される「も~いっかい!」で大合唱が起こったのだが、最初は熱心な茜ちゃんファンを中心とした層が反応。それがだんだん大きくなって、最後は武道館全体での「も~いっかい!」に広がっていったのは、この曲の披露を待ち続けた数年間の時間を取り戻していくかのようだった。
初披露まで待つ時間の長さは、悪いことばかりではない。桐谷が歌う「ハッピ~ エフェクト!」のとろけるような甘さはCD音源の歌声のイメージに限りなく近いものだったが、間奏で彼女が見せた優雅に舞うようなダンスのみとれてしまうほどの美しさについては、この数年の時間の努力で手に入れたものに思えた。そういえば今回の3日間では、激しいダンスよりも、ゆったりとした動きの中にあるメリハリにはっとすることが多かった気がする。それは雨宮の「ライアー・ルージュ」にも感じるものだった。
最終日の初披露曲の多さは、日本武道館ライブ3日目のために作られたCD『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER FORWARD 03』のリリースイベント開催日が、日程上武道館ライブより後に設定されたことによる部分も大きい。4つの星座ユニット曲全てが武道館で初披露されるのは「Starlight Melody」だけなのである。スコーピオの「リフレインキス」は、そのアイドルがその楽曲を歌えばどんな表現を見せるかを考え抜いた雨宮、上田、村川の役者としての凄みを感じた。偶然かもしれないが、3日目は役者として役をまとって化けるタイプのキャストが多いかもしれない。ジェミニ「永遠の花」で渡部恵子が漂わせる少女性はただ事ではなかったし、対称的に高橋は包み込むような大人の微笑みを見せる。そんな2人の表現を末柄の情感豊かな歌唱がつなぐのはとてもバランスがいい。タウラスの「メメント?モメント♪ルルルルル☆」は、パステルな世界で"カワイイ"に特化したパフォーマンスがこれだけの大会場を酔わせることができると証明した。それは諏訪が演じるまつり姫のほんわかしてコミカルで、見ているだけでこちらも笑顔になるような魅力があればこそだろう。
だがしかし、それでもこの日の星座ユニットソングの白眉は、やはりアリエスの「Sweet Sweet Soul」だと思う。ラップテイストをふんだんに取り入れた実験的な楽曲だが、この曲の中で稲川、小笠原、麻倉の内にいるアイドルたちの個性と魅力が爆発する。それぞれの表現があまりに楽しくてキュートで個性的で、一体誰を見たらいいのかわからないほどだ。アリエスは世界に通用するのではないか、そんな馬鹿な考えがよぎるほど途方もなくハッピーな時間だった。
武道館ライブでは多くの曲でオリジナルメンバーが「集結」したが、その中でちょっと雰囲気が違ったのが「瞳の中のシリウス」だ。この曲は原曲は四条貴音、高坂海美、徳川まつり、宮尾美也がオリジナルメンバーで、個々のキャラクター性を強く出すというよりは、それぞれの高く繊細なトーンでの歌声のハーモニーを聴かせる楽曲だ。ここからは完全に私感になるが、今までのライブで歌われてきた「瞳の中のシリウス」は貴音のかわりに誰かが歌うというよりは、複数人数で歌う楽曲として魅力的な、汎用曲的に扱われてきたイメージが強い。ライブ歌唱にオリジナルメンバーが入るにしても、たとえば高坂海美の歌声の「情念」の部分を切り出して、他の強い個性と合わせるような、新しい解釈がされてきた気がする。その意味で言えば、「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 10」に収録されたオリジナルの「瞳の中のシリウス」に近い方向性を目指すパフォーマンスは、初めて目にしたようにも思える。それを可能たらしめたのは、貴音のかわりにこの曲に入った雨宮だと思う。3人と楽曲に寄り添うような表現と、それを支える確かな歌唱力。そんな一見地味で大切な役割を、劇場版『アイドルマスター』で全体の和を拒む役回りだった「北沢志保役」の雨宮が果たしていたことに、『ミリオンライブ!』の四年間の物語のひとつの結実を見た思いがした。
冒頭、誰かの不在こそがその人の大切さを際立たせることがある、と書いた。4年間の集大成ライブの最終日、『アイドルマスター ミリオンライブ!』が向き合ったのは、一時休業中の種田梨沙が演じる田中琴葉の不在だった。センシティブな話であり、今回琴葉がリーダーであるユニット「灼熱少女」の楽曲「ジレるハートに火をつけて」を歌うためにサプライズで登場した藤井ゆきよは、この歌を今日歌うべきかどうかに強い葛藤があり、メンバーと話し合い、所恵美ならどうするかを考えに考えたことを語っていた。その選択に、きっと正解はない。だが彼女たちがどうすることが一番琴葉と種田と自分たちにとって良いことか、真剣に考えたこと。『ミリオンライブ!』を支えるスタッフたちが、その判断の一部を彼女たち自身に委ね、受け入れたこと。そして、プロデューサーたちの暖かい大歓声に背中を押された藤井が「胸張って琴葉に報告ができます!」と力強い言葉を残したことの全てが、とても大切なことだったと思う。「灼熱少女」のステージを照らし出すスポットライトは、5つあった。
4thライブが行われた3日間。こちらも「Thank You!」の一節「看板は虹色」のフレーズに沿って、日本武道館の入口に備え付けられた看板を、37個の色とりどりの花飾りが彩った。花飾りの中にあったのは、出演キャスト36人の手書きのメッセージと、ひとつの空白。 藤井と上田と稲川と桐谷が"灼熱少女"として「ジレるハートに火をつけて」を歌い、36人がステージいっぱいに広がる「Thank You!」を歌う背後のスクリーンに(おそらく『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』のモデルの)田中琴葉が笑顔で歌い踊る姿が映し出されていたその頃。37の花のひとつ、空白だった千草色の花飾りがそっとかけかえられた。最高のライブを終えて上気した顔で帰宅するプロデューサーたちが見上げたその花には、丁寧な字でこう書かれていた。
「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVEにご来場下さり、ありがとうございます! 沢山のありがとうを、皆さまに。 田中琴葉役 種田梨沙」
「Thank You!」の歌詞に綴られた日本武道館への物語。それはきっと最初はこうなればいいなという願いを込めた、ちょっとした遊び心。だが初日、2日目、12人がライブの最初に歌った「Thank You!」と、4年間の努力と成長の全てを注いだ夢のライブを経験した想いを込めた、各日ラストの「Thank You!」は、まるで別の曲であるかのように響いた。最終日、ステージに集った36人は、笑って泣いて、時にカメラに向かって円陣を組んだり、抱きしめ合ったりと自由に、本当に幸せそうに、輝く時間を楽しんでいた。
4年前に蒔かれた小さな種はやがて大樹となって、本物の日本武道館に虹色の感謝の花を咲かせた。その光景と、走り続けたアイドルたちに。
きらめく出会いを、ありがとう。
「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」最終日セットリスト
M-01 : Thank You! / Starlight Melody全員
M-02 : Starry Melody / Starlight Melody全員
M-03 : Heart・デイズ・Night / 小笠原
M-04 : ホップ♪ステップ♪レインボウ♪ / 稲川
M-05 : トキメキの音符になって / 麻倉
M-06 : リフレインキス / スコーピオ[雨宮、上田、村川]
M-07 : フェスタ・イルミネーション / 諏訪
M-08 : 素敵なキセキ / 山崎
M-09 : ハッピ~ エフェクト! / 桐谷
M-10 : 永遠の花 / ジェミニ[渡部恵子、末柄、高橋]
M-11 : デコレーション・ドリ~ミンッ♪ / 渡部恵子
M-12 : dear... / 高橋
M-13 : オレンジの空の下 / 末柄
M-14 : Sweet Sweet Soul / アリエス[稲川、小笠原、麻倉]
M-15 : 恋愛ロードランナー / 上田
M-16 : Up!10sion Pleeeeeeeeease! / 村川
M-17 : ライアー・ルージュ / 雨宮
M-18 : メメント?モメント♪ルルルルル☆ / タウラス[山崎、諏訪、桐谷]
M-19 : 侠気乱舞 / 愛美、浜崎、稲川、渡部恵子、田村
M-20 : ジャングル☆パーティー / 稲川、小笠原
M-21 : little trip around the world / 麻倉、渡部恵子
M-22 : PRETTY DREAMER / 高橋、末柄、山崎、村川
M-23 : 瞳の中のシリウス / 諏訪、雨宮、上田、桐谷
M-24 : ジレるハートに火をつけて / 藤井、桐谷、稲川、上田
M-25 : 君との明日を願うから / 山崎、田所、Machico
M-26 : Brand New Theater! / 新曲・Starlight Melody全員
【ENCORE】
EC-01 : Dreaming! / Starlight Melody全員
EC-02 : Thank You! / MILLIONSTARS (36人+田中琴葉)
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