「CG-i」の開発を担当した鷹尾充輝氏

モニターで見る色と質感を紙で再現できる画期的な出力規格「CG-i」が話題を呼んでいる。「モニターで見る色と印刷された色が別物になってしまう」という体験に悩んだことがあるクリエイターの方なら、これがどれだけありがたいことなのかピンとくるだろう。

少し専門的な話になるが、CGのイラストは「RGB(レッド・グリーン・ブルー)」という"光の三原色"を用いて制作されている。ところが、実際の印刷では"色料の三原色"である「CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・キープレート)」でしか出力できないため、印刷時には「RGB」から「CMYK」への変換を行わなければならない。その際、RGBで作成した色はCMYKで表現できるもっとも近い色に置き換えられてしまうため、クリエイターが本当に表現したかった色や質感が再現できないという問題があるのだ。

これを解決するのが「CG-i」である。「CG-i」はバンプレストが開発した独自の出力規格で、RGBの色域に限りなく近い色と質感を引き出すことができる。クリエイターにとっては待ち望んでいた技術と言えるだろう。その「CG-i」が生まれた経緯やクリエイターの反響などについて、バンプレストの鷹尾充輝氏に話を伺った。

「CG-i」誕生の経緯とこだわったポイント

――「CG-i」の開発はいつ頃から行われていたのでしょうか。

出力商材で新しい価値観を提案したいというコアコンセプトでの開発は、5年前の2012年から始まっていました。試作第1号ができたのが3年前、その後1年ブランクを経て、本格的に開発して2年になります。

――これまでCGイラストと印刷されたイラストでは、RGBとCMYKの違いからクリエイターの思い描くそのままの世界を出力できませんでした。障壁となっていたのはどういった点なのでしょうか。

イラストを構成している要素(規格)が違うという事に対して理解したうえで、それ(モニター)はそれ、これ(印刷)はこれと線引きがあった点だと考えています。

――ある意味、「そういうものだから」と受け入れていたわけですね。「CG-i」開発の上でこだわられたポイント、また最も大切にしてきた点はどのようなものでしょうか。

モニターで見ている"色"と"質感"の再現です。数値化できない感応的な部分を、いかに技術で再現するかを大切にしました。

開発チームはわずか数人。プロフェッショナルが集結した社内ベンチャー

――2016年9月21日には東京・秋葉原で発表会を開催しました。実際にお客さんたちの反応を見て、どのような印象を持ちましたか。

新しい出力表現として喜んでいただけて、とてもうれしかったです! と同時に、やはり直接、実物を見ていただかないと理解いただけないものだと実感しました。そのためにも、直接「CG-i」出力を鑑賞できる場所が今後は必要になると考えました。

――発表会では、フィギュアや立体物を専門にされてきた経緯から色や質感の再現性にこだわりがあったとおっしゃっていましたが、フィギュア制作での経験が開発に生かされたような部分もありましたか。

フィギュアの企画開発で経験した"造形と塗装であらゆる質感を表現する"という試行錯誤が大いに役立っています。「CG-i」の"質感"の再現は、この経験なくしては発想の時点からありえなかったと思います。

――他の開発チームの方もフィギュア等の制作に関わっていらっしゃったのでしょうか。あるいは映像表現のプロフェッショナルも多かったのでしょうか。チーム内部の詳細を教えていただけますか。

実はこのプロジェクトは企画開発とディレクションが私で、プロデュースとしてもう1人いるだけの小さなユニットなのです。現在はプロモーションや製品化の面で助けてくださる方が増えましたが、それでもコアメンバーとして動くのは6人ぐらいです。

バンプレストで活躍されている各方面のプロフェッショナルに協力いただいています。皆がそれぞれのメインの仕事を持ちながら"面白い"と思った方が参加する社内ベンチャー的な感じです。そんな私も、メインの仕事は海外向け製品の開発です。バンプレストという会社の懐の深さに感謝しています。