トヨタ自動車は先日の「プリウスPHV」発表会で、エコカーの大本命はプラグインハイブリッド車(PHV)だと言い切った。これまでエコカーの主力はハイブリッド車(HV)と語っていたトヨタが、PHVに舵を切った理由とは何か。PHVを取り巻く状況を踏まえて解説していこう。
「これがトヨタの答え」
2017年2月15日に行われたトヨタのプリウスPHV発表会。 最初に壇上に立ったのは、トヨタの代表取締役会長を務める内山田竹志氏だった。 内山田氏はちょうど20年前にデビューした初代プリウスのチーフエンジニア。「ミスターハイブリッド」が直々にPHVを紹介したのだ。
壇上で内山田氏は、まずHVが1,000万台の販売を達成し、7,700万トンのCO2を削減したことを発表した。合わせてトヨタは、2050年までに販売車種のCO2排出量を90%削減するという目標も掲げた。
この方針の中で、トヨタが究極のエコカーと考えているのが燃料電池自動車(FCV)だ。しかしFCVは、インフラ整備も必要であり普及には時間がかかる。しばらくは石油が自動車用エネルギーの主流であり続けると内山田氏は解説し、その中で大本命のエコカーがPHVだと語った。
壇上背後のスクリーンには、「ハイブリッドの次は、なんだ?」という言葉が掲げられていた。内山田氏はプレゼンテーションの最後でそれに答えるように、「これがトヨタの、答えです。」というメッセージを残した。
先代の教訓も糧に
なぜトヨタはここまでプリウスPHV推しなのか。その裏には、2012年1月に発売した先代プリウスPHVが思うような結果を挙げられなかったことがある。
これについてトヨタは、先代プリウスPHVはデビュー当初で約100万円、価格を下げた最終型でも約70万円の差があったにもかかわらず、HVのプリウスとの差別化が少なく、 バッテリーだけで走れる電動走行距離も26.4キロと短かったことなどを理由に挙げていた。しかし筆者は、それに加えて、周辺環境が大きく変わったことが関係していると思っている。
たとえば欧州。EUは2013年に、2021年までに1キロ当たりのCO2排出量を95グラム以下に抑えるという規制値を発表したが、現在の欧州の自動車メーカーの状況を見ると、この数値をクリアするのは難しい。そこで同時に、PHVを優遇する排出係数が用意された。
同じ時期、北米や中国でもこのような優遇策が相次いで発表された。背景に日本が主導権を握るHVへの対抗心があるのは明らかだ。つまり、昨今のPHVブームは戦略という側面が強いことを理解すべきだろう。