『アイドルマスターSideM』の2ndライブ「THE IDOLM@STER SideM 2nd STAGE ~ORIGIN@L STARS~」が2017年2月11日~12日、千葉・幕張メッセイベントホールにて開催。今回は初日に開催された[Shining Side]の模様を紹介しよう。
初日と2日目でメンバーのほとんどが入れ替わる今回のライブ。初日の[Shining Side]にはDRAMATIC STARS[仲村宗悟(天道輝 役)、内田雄馬(桜庭薫 役)、八代拓(柏木翼 役)]、High×Joker[野上翔(伊瀬谷四季 役)、千葉翔也(秋山隼人 役)、白井悠介(若里春名 役)、永塚拓馬(冬美旬 役)、渡辺紘(榊夏来 役)]、彩[バレッタ裕(華村翔真 役)、山下大輝(猫柳キリオ 役)、中田祐矢(清澄九郎 役)]、FRAME [熊谷健太郎(握野英雄 役)、濱健人(木村龍 役)、増元拓也(信玄誠司 役)]、神速一魂[益山武明(紅井朱雀 役)、深町寿成(黒野玄武 役)]、Altessimo[永野由祐(神楽麗 役)、土岐隼一(都築圭 役)]、F-LAGS[三瓶由布子(秋月涼 役)、浦尾岳大(兜大吾 役)、徳武竜也(九十九一希 役)]、Legenders[笠間淳(葛之葉雨彦 役)、汐谷文康(北村想楽 役)、駒田航(古論クリス 役)]が出演した。
『THE IDOLM@STER SideM』は2015年5月よりイベントをスタートし、小さなライブハウスを中心にリリースイベントを重ねた。ディファ有明での実質ライブと言うべき充実の公開録音、そして2015年12月にアンフィシアターで行われた「THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE~ST@RTING!~」というステップは踏んできたものの、キャパは200人~2000人という感じだった。そのマックスのさらに数倍を収容するであろう幕張イベントホールの開演前の「熱気」はちょっとうまく説明できない。プレゼントボックスの周りは身動きもできない盛況で、時間をかけて熱せられたマグマがほとばしるような熱を感じる。おなじみの提供読みで「yamanashi」が登場した瞬間の会場の地鳴りのような歓声。予測がつかない。
ライブの後半には坂上陽三総合プロデューサーが登場したが、一面のオレンジ色と共に飛ぶ歓迎のコールは黄色い。だが、キャストが男のプロデューサーに呼びかけた時は、こんなにいたのか、と思うぐらいの野太い歓声が巻き起こる。いいバランスの会場だ。坂上プロデューサーは、『アイドルマスターSideM』100万DLの突破を報告した。続いて流れたのは「プロデューサー、オレたち、ステージに立ちます!」という宣言のPVで、『LIVE ON STAGE』というタイトルの新作ゲームアプリのプロジェクト始動が発表された。タイトル以外の詳細は一切不明。先行する『シンデレラガールズ』と『シンデレラガールズ スターライトステージ』の関係を考えると色々と期待もしたくなってしまうところだが、ひとまず今日の時点では「ステージでsideMアイドル(キャラクター)たちがステージに立つ新作アプリが出る」ということだけが発表された。
今回のライブは、「幕張イベントホール」という大会場を活かした映像や光の演出が随所にみられるライブになった。元々『SideM』はきらびやかな照明と、逆光が生むシルエットのコントラストを活かした演出を小さなステージでもしてきたイメージがある。だがライブオープニング、レーザーが作り出す色とりどりの星が集い、スクリーンでライブのメインロゴを形作る、という作り込まれた見せ方に、このライブはさらに本気の演出をしてくるぞと身構えさせられた。
光の乱舞からステージに目を戻すと、ステージにはいつの間にかアイドルたちが勢揃い。20人以上のアイドルがステージに立ち並ぶと、キリオの狐面や朱雀の特攻服など、個性豊かな衣装の数々にステージのどちらを向いていいのか迷うほどだ。開幕の「Beyond The Dream」で仲村が「騒げ幕張!」と号令をかけると、会場は一糸乱れぬ大歓声で応えた。ここからはじまる今回のセットリストは、これまでにリリースされてきたユニット曲とソロ曲を、可能な限り網羅していく内容になった。
ユニットごとに見ていくと、DRAMATIC STARSの「STARLIGHT CELEBRATE!」は、仲村のパワフルさや内田の芝居っ気たっぷりの表現、八代の天使のような無垢さ……といった3人の良さ、個性はそのままに、全員のパフォーマンスが自信と鋭さで底上げされた印象だ。このイメージは「DRAMATIC NONFICTION」でさらに加速、内田雄馬の「立ち止まらない」の力強すぎる、パワーを感じさせるフレーズは面白いの壁の半歩手前でかっこよさをキープする際どさだ。その過剰さに会場が酔いしれるほど内田のケレン味がエスカレートする印象がある。
一方、「MOON NIGHTのせいにして」では、新しいDRAMATIC STARSの姿を見せてくれた。80年代歌謡曲めいた楽曲の中で、時折彼らが覗かせる妖艶さ、色っぽさ。八代がつややかに笑い、客席のテンションが煮詰まったところでジャケットプレイを見せながらの内田の「おいで」の一言に、会場は熱い叫びと切ない吐息で応えた。今日のDRAMATIC STARSは、セクシーだった。
FRAMEは質実剛健という言葉がしっくり来るユニットで、コミカルでヤンチャな濱健人と、パワフルで力強くセクシーな熊谷健太郎、さらにパワフルな増元拓也という組み合わせ。なんだそれ、という感じなのだが、「勇敢なるキミへ」で増元の「歩く特撮ボイス」「強制的に全部持っていくパワーボイス」を一度体験すればわかるはずだ。笑ってしまったのは、野上翔ソロの「サイコーCOUNT UP!」で増元たちFRAME組もステージに登場したのだが、バックダンサーとして踊っているだけでもFRAMEから吹き上がる「肉体そのものが持つエネルギー」は健在で、ものすごく存在感があったのが面白かった。
FRAMEは、「MISSION is ピースフル」で、会場外周を回るトロッコに乗って登場。客席の近くをFRAMEカラーのトロッコでぐるりと一周しながらボールを投げるパフォーマンスは、ちょっと怖く、何より客席に近く、本人たちにも忘れがたい印象を残したようだ。トロッコでアイドルが近くに来た際、感激で泣いてしまう観客がいたりするのが、男の子アイドルならではだなぁと思った次第だ。
進化した映像演出をフルに生かしていたのが彩で、「和風堂々! ~Wonderful NIPPON!~」では「いよーっ」「華村屋!」といった客席との掛け合いや、キリオが繰り出すダジャレのような掛詞がスクリーンに文字でビジュアル化されるのが面白い。パフォーマンス面で目を引いたのが華村翔真役のバレッタ裕で、見るからに身体のコンディションの仕上がりがいい。長身の彼がすっと両手を広げて身体を傾けるだけで、なんというか、届く。動きやダンスが見栄え良く、大きいのである。ビジュアル面でもバレッタと中田は目元にひいた朱もあでやかで、ド派手な演出に負けない華があった。「声の芝居」のポテンシャルを見せつけたのが山下大輝で、お面をつけて登場した彼がキャラ声で一声叫べば、そこにいるのは猫柳キリオそのもの。舞台が大きくなるほど、声と演技で間が成立する彼の強みが生きるはずだ。
「喝采! ~花鳥風月~」では背後のスクリーンに金の紙吹雪や新年をイメージさせるアイコンが次々と登場。「月と舞え」の歌詞に合わせて巨大な月が投影されたのには目を奪われてしまった。
それぞれの衣装でステージに登場した時から、白の長ランに刺繍を染め抜いた神速一魂の存在感は際立っていた。掛け合いが最強楽しい「オレたちの最強伝説~一世一代、破羅駄威棲!~」では、ライブスペシャルバージョンとして「ファイヤー! ファイヤーファイヤー!」「セイヤー! セイヤーセイヤー!」のコールアンドレスポンスを大量追加。リズミカルなドラムに乗せて熱い掛け合いが繰り広げられた。
神速一魂のパフォーマンスは腕を打ち付け合い、スローモーションで殴り合いととにかく暑苦しいのだが、今回印象に残ったのは玄武・深町寿成の静かなる熱さだった。朱雀役の益山は、間奏で二段蹴りを見せたりとにかく飛んだり跳ねたり、孫悟空のように暴れまわる熱さなのだが、深町を背を向けていたのが振り返り、ぐいーっと会場を見渡してメンチを切る表情感がメチャメチャ玄武していて、ソリッドでかっこいい。「バーニン・クールで輝いて」は深町もまた青く燃える炎であることを体感できたステージだった。
Legendersの「Legacy of Spirit」は、歯車と時計のイメージの中、3人のシルエットが妖しく絡み合う姿がみどころ。大舞台で足元までが見えることで、汐谷のズバッズバッと音を立てそうな鋭い足さばきもきちんと見えるのがとてもうれしい。「さあ! さあ! さあ!」と順番に手を差し伸べる姿は歌劇のようだが、問題はそのあと。駒田の「幕張の海! お見事でした!」のような芝居がかった台詞は、至近距離のライブハウスだとギャグっぽくなってしまうのだが、大きな舞台で歌っている間はただただかっこよく、しっくりと響く。こちらも思わず「あんたも見事だったよ!」と言いたくなる。
そんなLegendersだが、ファーストユニットDRAMATIC STARSとJupiterから連綿とつながる『SideM』ユニットの中では一番歴史が浅く、投票で選ばれたという特殊な成り立ちもある。それだけにメンバーからは、(プロデューサーさんたちに)認めてもらえるのかどうかが不安だった、といった言葉も漏れた。「String of Fate」では、このステージに立つ運命を3人が力強く掴み取る姿が強く印象に残る。駒田の官能的な腰使いと情感豊かな歌い上げの落差、誰より熱く想いを語り、情にもろいところを見せる笠間の姿も印象に残った。ライブのラストは汐谷が「ペンライトー星月夜よりも煌めいて この瞬間心のなかに閉じ込めよう」とたおやかに一句詠んで締めくくった。
一方、High×JokerはDRAMATIC STARSを除けば唯一のファーストライブ経験者であり、もっとも古いユニットのひとつでもある。「5人」という『SideM』最多構成のメンバー数は、合同練習の手間も苦労も倍加するということでもある。そんな彼らのかつてのファーストインプレッションは「野上翔のユニット」だった。伊瀬谷四季としての表情が目まぐるしくいれかわり、感情がダイレクトに伝わってくる野上のパフォーマンスは初見の視線を引き寄せずにはいられない。
だが、「JOKER➚オールマイティ」で5人のシルエットがステージ最上段に登場すると、真紅に染まる会場にタオルが鮮烈な防風を巻き起こす。その風は5人から吹いていた。チームで磨いてきた表現の中で、千葉の弾けた笑顔がいい。永塚のキュートな仕草。渡辺が繰り返してきた「ひろひろだよ~!」がここまで認知されて愛されていること。白井がドーナツを食べるお茶目な仕草をズバリとカメラが抜くまでどれぐらいリハで試行錯誤したのだろうか。クラップで、コールで会場を盛り上げ、ステージ狭しと駆け抜ける姿は間違いなく『SideM』の切り込み隊長だった。「HIGH JUMP NO LIMIT」の一糸乱れぬダンス、細かくリズムを刻むステップもたゆまぬ練習量を感じさせる。個人的には永塚と肩をぶつけあっていたずらっぽく笑ったり、体力的にハードな時間帯に最高にお調子者なエアギターを見せつけた千葉の熱量が目を引いた。
また、激しいダンスのイメージが強いHigh×Jokerだけに、「OUR SONGS -それは世界でひとつだけ-」で歌に全ての想いを込める姿と、スクリーンを流れていく彼らの思いでを感じさせる映像にはぐっと来るものがあった。
多くのユニットが参加した今回のライブ初日だが、個人的にパフォーマンスで一番鮮烈な印象が残ったのはAltessimoだった。「The 1st Movement ~未来のための二重奏~」で、燕尾服のような衣装の2人がステージで優雅に一礼すると、背後のスクリーンには黄金の音符が乱舞していく。光り輝く音符と旋律に包まれながら、2人の歌声が時に響き合い、時に溶け合うステージは幻想的ですらあった。
「Never end 「Opus」」は2人の歌声が時にぶつかり合い、時に溶け合う歌と歌の、真剣勝負。時折2人がステージで交錯する時に、高まった感情が噛み合い、すれ違うことを感じる。歌声だけでは伝えきれない、感情と表情と、全てを使って表現しぶつけあう魂のせめぎあいがそこにはあった。そんな2人だが、パフォーマンスが終わると想いを誠実に語る永野と、その成長を見守る土岐の関係性がとても好ましく感じられた。
そして、F-LAGS。「夢色VOYAGER」で巨大なフラッグを手に登場した彼らは、時にハンドフラッグに持ち替えるORIGINALなステージを披露。アイマスライブで、小道具を用いるナンバーは実は非常に少ない。「プロデューサーさん、お待たせしました! 出航ですよ!」の叫びでも分かる通り、スクリーンに映し出されるイメージは大海原。船の甲板に両足を踏ん張り、ゆったりと振り回す巨大なフラッグのイメージだ。
「With...STORY」も、航海に出る船から大きく大きく対岸に手をふるようなゆったりした雄大なリズムは変わらない。全出演者の中で唯一の「女性」である三瓶だが、実はこの曲でハイトーンのパートを担うのは浦尾で、三瓶は力強く説得力のある中庸の歌声を、センターポジションで担っている。僕たちはひとりじゃない、大切な仲間がいると叫ぶ三人を、赤白青のトリコロールが優しく照らしていた。三瓶のリクエストで下手は青、上手は赤、センターは白の三色に染め上げられた会場は、忘れられない風景になった。
その光景に、三瓶は涙が止まらない様子だった。女の子アイドルとして、男の子アイドルとして秋月涼の人生を背負ってきたからこその言葉を重ねた三瓶は最後に「プロデューサーさん、僕はここにいるよ!」と叫んだ。その言葉に心動かされた仲間たちの様子。そして、涼が歩んできた女性アイドルとしての歴史にも深い愛情を持ってチームでいてくれる徳武、浦尾の様子に、秋月涼と三瓶由布子がこの場所にいてくれて、今の仲間たちに囲まれている奇跡に感謝したいと感じた。
今回のライブでは他にも多くのソロ曲が歌われた。仲村の「THE FIRST STAR」は清涼感のある新しい天道輝像を感じさせたし、「Happy-Go-Unlucky!」を歌った濱が、龍が不運でも前向きでいられる理由をこの日の会場の笑顔に見つけていたのは感動的だった。まだソロ曲が存在しないアイドルは、ダンサーとして他の曲に参加することでステージを盛り上げた。その光景を見て思ったのは、種種雑多な衣装のアイドル同士を組み合わせると、それぞれのユニットとはまた全く違った個性を見せてくれることだ。DRAMATIC STARSとHigh×Jokerが一緒に歌った「夜空を煌めく星のように」は5人+3人ではなく、揃いの衣装もあいまって、新しい個性を持つ8人のユニットに感じられた。野上と仲村が肩を組んで楽しそうに歌う姿を見ながら、『アイドルマスターSideM』というステージにはまだ無限の組み合わせと可能性が存在することを改めて感じたのだった。
最後の挨拶では、時折涙を交えながら、それぞれのメンバーが今日この日、この場所がどれだけ特別な場所だったかを語った。Legendersの笠間が新衣装の右肩の後ろにある星を示しながら「僕たちはただ存在してるだけじゃ星になれない」と話し、そこがプロデューサーさんが手を置いて、背中を押してくれる場所だと語っていたことが、とても強く印象に残った。
「THE IDOLM@STER SideM 2nd STAGE ~ORIGIN@L STARS~」初日セットリスト
M-01 : Beyond The Dream / 全員
M-02 : STARLIGHT CELEBRATE! / DRAMATIC STARS
M-03 : 勇敢なるキミへ / FRAME
M-04 : 夢色VOYAGER / F-LAGS
M-05 : The 1st Movement ~未来のための二重奏~ / Altessimo
M-06 : Legacy of Spirit / Legenders
M-07 : オレたちの最強伝説~一世一代、破羅駄威棲!~ / 神速一魂
M-08 : 和風堂々! ~Wonderful NIPPON!~ / 彩
M-09 : JOKER オールマイティ / High×Joker
M-10 : THE FIRST STAR / 仲村宗悟 (天道輝 役)
M-11 : ぴんとこな ~蝶よ華よ~ / バレッタ裕 (華村翔真 役)
M-12 : Happy-Go-Unlucky! / 濱健人 (木村龍 役)
M-13 : だいぶ・いんとぅ・にゅ~・わあるど! / 山下大輝 (猫柳キリオ 役)
M-14 : 流る々風の如く~和歌静寂~ / 中田祐矢 (清澄九郎 役)
M-15 : Because / 内田雄馬 (桜庭薫 役)
M-16 : サイコーCOUNT UP! / 野上翔 (伊勢谷四季 役)
M-17 : DRAMATIC NONFICTION / DRAMATIC STARS
M-18 : Never end 「Opus」 / Altessimo
M-19 : String of Fate / Legenders
M-20 : With...STORY / F-LAGS
M-21 : OUR SONGS -それは世界でひとつだけ- / High×Joker
M-22 : MISSION is ピースフル / FRAME
M-23 : バーニン・クールで輝いて / 神速一魂
M-24 : MOON NIGHTのせいにして / DRAMATIC STARS
M-25 : 喝采! ~花鳥風月~ / 彩
M-26 : HIGH JUMP NO LIMIT / High×Joker
M-27 : 夜空を煌めく星のように / DRAMATIC STARS&High×Joker
M-28 : DRIVE A LIVE / 全員
【Encore】
EC-01 : Beyond The Dream / 全員