『BanG Dream!』(通称『バンドリ!』)の3rdライブ「BanG Dream! 3rd☆LIVE Sparklin' PARTY 2017!」が2017年2月5日、東京ドームシティホールにて開催された。同ライブにおいて、『バンドリ!』4thライブ「BanG Dream! 4th LIVE(仮)」を8月21日、日本武道館で開催することが発表された。
本ライブにはTVアニメ『バンドリ!』の主人公バンド「Poppin' Party」より、戸山香澄役の愛美(Gt.&Vo.)、花園たえ役の大塚紗英(Gt.)、牛込りみ役の西本りみ(Ba.)、山吹沙綾役の大橋彩香(Dr.)、市ヶ谷有咲役の伊藤彩沙(Key.)の5人、そしてシークレットとしてスマホゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』に登場するオリジナルバンド「Roselia」の5人がサプライズ出演を果たした。
『バンドリ!』は、ガールズバンドでステージを夢見る少女たちを描く作品で、放送中のTVアニメ『バンドリ!』や、今春サービス開始予定のスマホアプリ『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』といったコンテンツと、出演声優自らがガールズバンド「Poppin'Party」として活動するリアルライブのクロスオーバーが特徴の作品だ。
本当の「シンクロ」の準備は整った
TVアニメの放送がいよいよスタートした『バンドリ!』。クロスオーバーにおける2次元側の柱が動き出したことで、演者とキャラクターが一緒に走り続ける本作の真価が見え始めるライブとなった。
人気声優がライブでバンドとしてすべてを生演奏するというアイデアはコロンブスの卵だ。今まで誰もやらなかったのは、ライブの頭から終わりまで声優自身が演奏し、新曲をアップデートして……というプランが実現困難なレベルで大変だからだろう。たとえば一朝一夕に身につけるのが難しいドラムを担当する役者として、子供の頃からドラムに親しんでいる大橋彩香という声優がたまたま今の時代にいた。そんな様々な幸運に恵まれて現実になっているのが『バンドリ!』というプロジェクトだ。この日もライブの開幕からアコースティックコーナー、アンコールまで含めて、全てキャスト本人たちが生演奏するのである。
そして、大きな区切りでは3回目となる今回のライブの印象を言葉にするなら、「間に合った」ということに尽きると思う。
最新ナンバーのひとつ「走り始めたばかりのキミに」で、西本がスーパーなベーステクを見せるとぴっと指を振り、それを受け取ったかのように大塚の見せ場が来る。大塚と愛美が向かい合わせでセッション感を出すと、そこからズバリのタイミングで愛美がソロボーカルでキメるパートにつながる。ステージに、バンドとしての呼吸が生まれ始めた。
「Poppin'Party」のメンバーは、キャリア、楽器経験、知名度もそれぞれに違う。だからこそ、フレッシュなメンバーは時に劇的な進化を見せる。カバー曲「Little Busters!」では、大橋と伊藤がボーカルを担当した。こと、ボーカルの分野における大橋の歌唱力、表現力は誰もが認めるところ。ところが今日の伊藤の歌い上げの説得力はぐいぐい迫ってくるようで、とてもふたりのバランスがよく感じる。終盤の伊藤のソロパートで大橋が楽しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていたが、これはむしろ(ライブでの)普段の伊藤の姿に重なるものだ。この一年、一番がんばって一番伸びたであろうメンバーが、これまでで一番の歌と演奏を見せたライブが、特別なものにならないはずがない。日本武道館ライブの決定をあらためて知らされた伊藤は、顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
後述するが、このライブは中盤に一度、空気の全てをゲームオリジナルバンド「Roselia」に完全に"持っていかれた"。そんな場の空気を、「Poppin'Party」は今までと全くアレンジを変えた「ティアドロップス」の、真っ赤な雷鳴が轟くようなイントロ一発でねじ伏せ、塗り替えて見せたように感じた。「Roselia」という最強のライバルをステージのどてっぱらに叩き込むセットリストは、今の「Poppin'Party」の存在と力量に対する信頼から生まれたものだろう。
キャラクターを演じた経験が演奏を変え、練習を重ねステージに立った経験が演技を変える。そんな高い次元のクロスオーバーを可能にする領域に、アニメ放送が始まったタイミングで彼女たちが届いたように思うのは、運命的に思える。全ての力と汗をドラムに注ぎ込んだ大橋は、沙綾を意識しながら演奏できたことを喜びながらも、武道館ではもっとできることがあるはずと、さらに高みを見据えた。愛美は「香澄に引っ張ってもらうばかりでなく、これからは一心同体で進んでいきます。それが、日本武道館で、見れます!」と約束した。望みでなく、意気込みでもなく。その覚悟が、日本武道館でどう花開くのかを見届けたい。