左からジュニアコース優勝のチョ・シェン・ジュンさん、オープンコース優勝の横田ユースケさん

東京・台場のガンダムフロント東京にて18日、バンダイが展開するプラモデル「ガンプラ」の作り手世界一を決める公式コンテスト「ガンプラビルダーズワールドカップ2016 世界大会」の表彰式が開催。15歳以上の一般部門であるオープンコースで日本代表・横田ユースケさんがチャンピオンに輝いた。日本代表が同大会で優勝するのは、2013年以来の3年ぶり2度目となる。

2011年にスタートした「ガンプラビルダーズワールドカップ(以下、ガンプラW杯)」は、日本、中国、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、北米、イタリアの13の国と地域で開催。現在ベトナムでも公式大会が開催されており、決勝戦には今後さらに参加国が増える見通しだ。

世界大会決勝戦では、15歳以上のオープンコースと14歳以下のジュニアコースそれぞれの各国代表が集結。従来より「工作」「塗装」「アイデア」の3つが採点の基準として明示されてきたが、今年から3要素それぞれ100点の計300点を持ち点とした各審査員の点数も公開されるようになった。審査員を務めたのは、バンダイの"川口名人"こと川口克己氏、同じくバンダイの安永亮彦氏、模型雑誌『ホビージャパン』の木村学編集長、『モデルグラフィック』の古屋智康編集長、さらに『機動戦士ガンダム00』などのメカデザイン手がけた海老川兼武氏がゲスト審査員として参加した。今年は2012年大会より激戦を見守ってきたガンダムフロント東京が2017年4月で営業終了することが発表されたこともあり、最後の"聖地"での戦いというメモリアルな大会となった。

オープンコース、ジュニアコースそれぞれ1~3位の結果と得点は以下。

オープンコース
1位 横田ユースケ(日本) 「永遠の絆 ~義経・弁慶 新しき国へ~」 工作455 塗装445 アイデア435 合計1335点
2位 ヴィチャユス・エイアム・オン(タイ) 「LOVE LOST」 工作413 塗装417 アイデア435 合計1265点
3位 ワン・チャンビン(中国) 「Destination」 工作393 塗装410 アイデア425 合計1228点

1位 横田ユースケ(日本) 「永遠の絆 ~義経・弁慶 新しき国へ~」

2位 ヴィチャユス・エイアム・オン(タイ) 「LOVE LOST」

3位 ワン・チャンビン(中国) 「Destination」

ジュニアコース
1位 チョ・シェン・ジュン(台湾) 「OVER WAR」 工作380 塗装408 アイデア346 合計1134点
2位 藤本拓真(日本) 「ストライク&ダークマター」 工作325 塗装360 アイデア395 合計1080点
3位 ワン・ユン・スィン・ジュリアン(香港) 「Reborn」 工作350 塗装347 アイデア375 合計1072点

1位 チョ・シェン・ジュン(台湾) 「OVER WAR」

2位 藤本拓真(日本) 「ストライク&ダークマター」

3位 ワン・ユン・スィン・ジュリアン(香港) 「Reborn」

オープンコース1位に輝き、檀上でコメントを求められた日本代表・横田さんは、「本当にこのトロフィーだけを目指してきました。『ガンプラ』は世界中で愛されていて、それはすごく素敵なこと。でも『ガンプラ』は日本で生まれたものなので、このトロフィーは日本のモデラーがもっていてほしい。そういう思いを抱いてきた日本のモデラーは僕だけではないのではないか。その願いを自分の手で叶えることができたのが何よりうれしい」と大会、そして賞にかけてきた熱い思いを語った。

現在29歳で、2008年ごろから本格的にプラモデルの製作を始めたという横田さんは、昨年は本選1次で敗退。2回目の挑戦でチャンピオンとなった。今年は「勝てるものを作る」ため、普段の作風を封印し、源義経と弁慶が出会った五条大橋を再現した世界観の構築に力を入れた作品に。日本代表決勝戦が「勝てる日本代表」を選ぶことも目的とされていることから、ひと目で日本らしいモチーフを選んだ。着想は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のガンダムグシオンのキットを見た時にひらめいたという。背景の桜の木は約4000もの花を紙で制作し接着するなど、すみずみまで作りこまれている。

2位になったヴィチャユス・エイアム・オンさんは昨年大会のチャンピオン。前回は『新機動戦記ガンダムW』に登場したウイングガンダムとガンダムエピオンの戦闘シーンを彫刻で作り上げる彫刻家の工房というストーリー性、ポージングともにハイレベルな作品で審査員に「どこをとっても満点」と言わしめた。今年の作品「LOVE LOST」は、一番下にレイアウトされた女性に始まるストーリーを、破壊された地面や車、おびただしい数のMSで表現した力作。ポージングを組み合わせた圧倒的な造形力と、車のエアバッグなどの緻密な作りこみ、小さなストーリーを積み重ねた見ごたえのある作品で、ヴィチャユスさんの作家性が存分に発揮されたものとなっていた。

採点結果を見ると、横田さんとヴィチャユスさんのアイデア評価は同点。『ホビージャパン』木村編集長は、横田さんの作品について「オリジナルのガンダムを作って、それをジオラマと組み合わせるというのは本来はとてもリスキー。どちらの作りこみが甘くても減点の対象となるが、工作・塗装ともに減点するところがまったくなかった。さらにメイドインジャパンという日本のモチーフが分かる世界観もよかった」と評した。結果として横田さんの作戦が奏功し、さらに横田さん自身の普段の強みである工作・塗装の技術が差をつけ優勝につながったようだ。

ジュニアコースでは、日本代表の藤本拓真さんが2位に。5連覇していたファイナリスト常連の畑めいさんをおさえての日本代表だっただけに、「自分が日本チャンピオンになって大丈夫か不安でしたが、結果を残せてうれしい」と胸をなでおろした。

年々レベルアップしていく「ガンダムW杯」。今大会で審査員が口々にこぼしていたのが「採点の難しさ」だった。バンダイの川口勝社長が冒頭、「見た瞬間、果たしてこれはガンダムだろうか、と思いました。それぞれの国の風土・文化と組み合わさって、アート作品として独自の進化をしている」と発言している通り、従来の基準だけでは測りきれない作品が登場している。それは、川口名人の「似た方向性の作品がないので、採点が非常に難しい」という発言にも見て取れた。そういった流れを受けて基準の明示・得点の公開だったと推測されるが、一方で採点基準は応募作品の豊かさにも直結する。今後、大会の広がりを受けて、基準や採点方法の整備がさらに必要になっていくかもしれない。

授賞式後には、2017年3月5日に撤去を予定されている実物大ガンダム立像を背景に各コースチャンピオンのフォトセッションが行われた。次大会に応募するか問われた横田さんは「次大会で連覇の可能性に挑戦できるのは僕だけなので、その気持ちが高まっていけば……」と意欲を見せた。

オープンコース

ランス・グェン(オーストラリア)「トランザム」

ツイ・マン・スィン(香港)「バルバトス ミュージアム」

エイドリアン・ダマー(インドネシア)「ウイングゼロ "ディヴァータ"ライズ オブ ジャターユ」

リカルド・フォルニ(イタリア)「ライツ オブ ザ ノース プロトタイプ セブンセブンセブン」

レオン・コック・シング(マレーシア) 「ザ ラスト バトル オブ ウイング」

ティム・ハーキンス(北米)「ゼータプラス シーワン[ビーエスティー] ハミングバード バージョン グリム リーパーズ」

マーク・メディアヴィロ(フィリピン)「グレイズ アイン カスタム:バラウィス」

ベンジャミン・ウォン・ユアン・ジュン(シンガポール)「和 ピース ライダー」

イ・ジンホ(韓国)「カモフラージュ、ジオンズ ニュー ウェポン」

デニス・シュウ(台湾)「ザ レジェンド」

ジュニアコース

ベニー・マー(オーストラリア)「デューク オブ ジ インフェルノ レルム、バルバトス ノワール」

パン・チョンシャン(中国)「アビス レッド ナイト」

クリスチャン(インドネシア)「アイランド オブ ザ ブラッド」

オン・シン・イー(マレーシア)「ピンキー ウイング ガンダム フェニーチェ リナーシタ」

アンジェロ・デラ・クルーズ(フィリピン)「ジオニック フロント "アクシズ ウォーズ"

グレッグ・テイ・イー・シアン(シンガポール)「ビースト オブ ディストラクション」

キム・カンウ(韓国)「ザ コンペティティブ スピリット」

パチャラ・オランリクスパック(タイ)「ゴー ファイト!! ファイナル ウォー」

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