ローコスト型が定番だったビジネスホテルも、現在では多様化している。そのポイントのひとつが朝食だ。今回注目したのが、「スーパーホテルLohas池袋駅北口」の無料朝食。筆者は全国各地のビジネスホテル無料朝食を体験・レポートしてきたが、過去に例のないほどの驚くべき内容だった。
ローコスト型がハイクラスブランドを展開する時代
そもそも、現在のビジネスホテルはどのような流れにあるのか。東横インやスーパーホテルなどに代表されるローコスト型のほか、現在ではリッチモンドホテルやドーミーインといったハイクラス型の躍進がみられる。朝食でビジネスホテルを選ぶという利用者は多いが、伝統的なローコスト型は無料、ハイクラス型が有料という逆転現象もみられるようになっている。なお、無料朝食とはいっても有料朝食との対比表現であり、宿泊料金に転嫁されているのが実情だ。
ハイクラス型に注目が集まる中、最近になってローコスト型がハイクラスブランドを展開する例がみられるようになった。例えば、全国最大規模のチェーンであるルートインは「ホテルルートイングランド」ブランドを、マイステイズチェーンも「マイステイズプレミア」として充実施設のホテルを展開している。
ルートインは無料朝食が大人気のチェーンで、にわかに無料とは信じがたい内容のビュッフェ朝食を提供してきた。一方、ハイクラス型のルートイングランドでは有料だ。やはり、ローコスト=無料、ハイクラス=有料の図式である。
ローコスト型の一翼を担ってきたスーパーホテルも、今回紹介する「スーパーホテルLohas」という、ハイクラスブランドを展開している。都内でも東京駅至近の「スーパーホテルlohas東京八重洲中央口」や「スーパーホテルLohas赤坂」など広がりを見せているが、ハイクラス型とはいえ、そこはスーパーホテルであり、無料朝食の提供を堅持している。
快適空間で焼きたてを味わう
では実際、他のLohas店舗とは異なるアプローチでトライしている「スーパーホテルLohas池袋駅北口」の無料朝食を見てみよう。ザッと見回しても、産地に気遣った有機JAS認定の野菜があふれるサラダコーナーやバラエティーに富んだ温製料理など、選ぶのに迷ってしまいそうだ。
無料朝食ではまず見かけない、オレンジやグレープフルーツといったフルーツ類も豊富。焼き魚やベーコン、ソーセージもただ大皿に並んでいるのではない。ロースターも設置されており、ゲスト自身であぶって熱々をおいしく食べられる。
パンのコーナーには、食パンを投入すると回転して焼かれてくるトースターの採用など、見せ方も秀逸だ。ご飯も白米・五穀米・おかゆと3種類。何より明るいインテリアの朝食会場は居心地がいい。食材もレイアウトもインテリアも、一つひとつにこだわりを感じられる。
このような、スーパーホテルLohas池袋駅北口の新たなトライは、利用者の圧倒的な支持を受けている。宿泊者全員に無料で提供する朝食としては驚きの内容であり、ハイクラス型の有料朝食ならば1,000円程度のレベルだろう。もう一度言おう。これが"無料"である。ビジネスホテルは朝食戦争とも言われているが、他チェーンが追随するのか、スーパーホテルが独走するのか。今後も無料朝食の進化から目が離せない。
※記事中の情報は2016年10月のもの
筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)
ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」