――販路が拡大した2015年9月頃は、問題も重なった時期でしたね。スマートフォンでの技適未取得問題と、4Kディスプレイの販売延期と。

大変でしたね。声をかけてくださっていた量販店の皆さんの温かいサポートもあってどうにか販売がスタートできました。

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4Kディスプレイ「Q-display 4K50」は製品出荷が延期することに(スマホ・ディスプレイともに2015年9月に問題が発生)

まず、4Kディスプレイ「Q-display 4K50」は、今だから言えるのですが、生産工場が量産直前にサムスンに買われたことで、UPQ分のディスプレイパネルを提供できない、という事態になっていました。そこから急遽、工場を変更し、サンプル開発からやりなおすということをしていました。

さらに、不幸と言っていいとは思うのですが、4Kディスプレイやリビングチェアは、他の商品と違い大型なので、航空便ではなく船便で運ぶんです。ですが、台風のために、商品を運んでいる船が待てど暮らせど連絡がつかなくなる事件があって。

通関後に荷受する大型トラックも何台も用意していたんですが、荷物は届かない。トラックの手配は一回解除してしまうと、すぐ再手配というわけにいかないし、費用もかさみます。

その後ようやく船と連絡が取れて事情を聞くと、予定の航路からだいぶ押し流されて、連絡がとれた日からあと4日かかると。そんな時期に、中国は国慶節(※中国の祭日)に入ってしまい、発送側と連絡が取れない。結果、発売を延期することになってしまいました。

そして同じ2015年9月、SIMロックフリースマートフォン「UPQ Phone A01」の技適未取得の問題が並行していました。こちらに関しては、2つの問題が同時に発生しており、ひとつは発送予定日より先に、製品がご購入者様に届いてしまった点です。認証番号取得の完了日=発送開始日だったので、未取得なのにも関わらず、製品を届けてしまったのです。

もうひとつは、端末にマーキングしている認証番号が音声通話に対応していないものであるという点でした。

スマホの件が発覚したのは、総務省から私宛への電話連絡でした。大変な問題です。てんやわんやのなかで、まず何をするべきか整理していきました。実際の温度感では、「整理」なんてかわいいものではなかったのですが。

まずはすぐ総務省に向かい、その場で中国の工場に電話をして状況を確認しました。

――大変な状況だったと思いますが、とても興味深い話です。

認証番号については、申請をUPQ側で行い、サンプル端末を中国工場から中国にあるラボに渡しテストレポートを作成し、そのレポートを日本の登録証明機関に提出し、番号を発行してもらいます。生産工場、ラボ、登録証明機関それぞれに連絡を取った結果、ラボからのテストレポートも申請していた番号も正しく音声通話、データ通信両対応になっているが、番号発行のところで音声通話に対応しない番号になっていた、ということがわかりました。

関係者全員が気づかず、確認が漏れたまま誤った番号が印刷されてしまったという状態でした。登録証明機関は日本ですが、中国の工場とラボを経由して私に届くので、遠回りであることが何より問題でした。反省を踏まえ、これ以降、直でやりとりを進めています。

正しい番号とレポートが届くのがどのくらいかかるかを確認すると、ラボのレポートまでは正しくできているので、3日~4日で発行できそうだとわかりました。日本の登録証明機関の社長さんと電話をつないだまま、即日中国に飛び、工場とラボを回り申請書を作成して、その足で総務省に報告にむかいました。

同時にすでにご購入者様に届いている製品は回収して、正しい技適のナンバーのものをご返送するという流れをとりました。

――対応機種の製品回収袋に使われた伝票が手書きだったことが、ネットで話題になっていました。

そうなんですか? 宛名は、最速で対応するために手書きで書きました。発覚したのが土日だったので、配送業者が営業していなくて。お休みでも開いている営業所をかけずりまわって、あるだけの伝票をもらって、手書きに。これが一番速かったんです。

あの頃はもう……気力だけで全員生きてましたね(笑)。でもこの作業が終わるまでは倒れられないし、作業が終わって初めて総務省へ報告ができる。

複数の困難が同時に発生してしまいましたが、ここは踏ん張らないと、というのが私達の共通の意識でした。UPQ全員、もう必死で走りながら。結果、緊急時の対応能力と馬力はついたとは思います。誰も倒れず、よく頑張ってくれたと思います。

*  *  *

後編では、2016年9月10日に発送開始となる、折りたたみ式電動バイク「UPQ BIKE me01」の開発背景について紹介していく。