私たちの身の回りのモノが、続々とインターネットに繋がる時代がやってくる。家電製品のほか、家具、洋服、乗用車といった生活必需品に加え、街角の公共サービスなどにも”IoTデバイス”が組み込まれ、私たちの暮らしを便利に変えていくことが予想されている。そのような来たるべき未来に向けて、企業側はどのような準備を進めているのだろうか――。インターネットイニシアティブ(IIJ)は19日、IoTサービスに関する記者説明会を開催。今後の展望を明らかにした。

IIJは19日、IoTサービスに関する記者説明会を開催。IIJ代表取締役会長の鈴木幸一氏(右)らが登壇し、今後の展望を語った

IoTに必要な技術をワンパッケージで提供

IIJは日本のインターネット黎明期を支えてきた、いわゆるインターネット事業者の老舗。最近ではスマートフォン向けに格安SIMサービス「IIJ mio」などを展開している。同社では現在、IoTの必須技術をワンパッケージにして企業に提供するB to Bサービスの準備を進めている。様々な業種に向けて安価なサービスを提供していくという。IIJのこうした取り組みは企業の負担を減らし、ひいては国内のIoTサービスの普及を早める可能性がある。

IIJでは、企業向けにIoTサービスを安価に提供する。今回の施策は国内のIoTサービスの普及を早める可能性がある

IIJが企業向けに提供するのは、(1)インターネット回線によるコネクティビティ、(2)独自開発したIoT対応のゲートウェイ機器、(3)機器の管理やビッグデータの解析などを行うプラットフォームの基本機能の3つ。2016年にトライアルサービスを開始し、2017年に本格的なビジネス向けサービスとして展開する予定。利用料金は試算中で、すべて含めても月額1,000円ほどになるという。

IIJが提供するのは、(1)ネット回線によるコネクティビティ、(2)IoT対応のゲートウェイ機器、(3)機器の管理やデータの解析などを行うプラットフォームの基本機能

IIJクラウド本部 服本部長の染谷直氏は「多くの企業がIoTで何をしたら良いか、何ができるかを考えている。しかしIoTを活用したサービスを実現するには、幅広い領域における技術が必要になる。このため1社ではイノベーションを起こせないでいる」と、いま企業側が抱えているジレンマを指摘する。IIJによるコネクティビティ、ゲートウェイ機器、プラットフォームの一括提供は、IoTサービスの開発に挑む日本企業を強力に後押しすることだろう。

「IoTはまだ発展途上のテクノロジー。今後いくつか乗り越えなければいけない課題がある」と話す、IIJクラウド本部 服本部長の染谷直氏

IIJクラウド本部 ビッグデータソリューション課長の岡田晋介氏は、同社が提供するサービスの強みについて解説した。まずコネクティビティについては、現在120万回線の利用者を抱えるIIJ mioの運営能力をアピールする。「2020年には700万回線まで増やすべく、設備投資を続けている。MVNO事業者だからこそ実現できる、IoTに最適なモバイル環境、ネットワークサービスを提供していきたい」と岡田氏。

「これまでのネットワークの常識を破壊しながら、新しい世界をつくる作業が必要になる」と話す、IIJクラウド本部 ビッグデータソリューション課長の岡田晋介氏

2020年には全世界で約500億、国内だけでも27.5億ものデバイスがネットにつながる(つまりIoT化する)ことが予想されている。デバイスが増えればメンテナンスの手間も増える。そこでIIJのサービスでは、大量のセンサーを自動で管理できるシステムを用意した。人の手を介さずに状態を監視できるほか、障害の予兆も検知できるという。

この日、IIJが発表した内容は概念的なものが多かった。今後、段階的に具体的な情報が発表されていく見込みだ。岡田氏は「IIJの将来に向けてのIoTサービスの取り組みに、今後ともご期待いただければ」と話していた。