Windows 10は常に進化するOSだとMicrosoftは説明している。そして、Windowsの最終バージョンという声もリリース前から聞こえていた。Windows 8.1までは更新プログラムによってバグフィックスを行い、セキュリティホールをふさいできたが、Windows 10では「累積的な更新プログラム」として提供している。
更新内容を気にしないユーザーには大差ないように見えるが、その内容を細かく追いかけようとすると少々難しくなる。ちなみに、日本マイクロソフトの「Windows 10の更新履歴」では2016年4月リリースのビルド10586.218までしか日本語化されていない。よって、6月にリリースした「KB3163018 (ビルド10586.420)」に関しては、米Microsoftの「Windows 10 update history」で確認する必要がある。
KB3163018では「Internet Explorer 11」「Microsoft Edge」「Cortana」「Grooveミュージック」の音楽再生機能、「マップ」といったアプリケーションに加え、OSの音楽再生機能、Miracast機能、エクスプローラーの信頼性が向上した。さらに、バルーンによる通知が画面左上に表示される問題、NICを変更した際にVPN機能が正しく動作しない問題を修正し、「ナレーター」が箇条書きリストやハイパーリンク、画像情報を読み取る能力が向上している。他にも「ナビゲーション」(筆者注 : マップのナビ機能と思われる) のロケーション取得遅延問題改善や、移動プロファイル使用時のInternet Explorer 11のパフォーマンス向上など、改善や修正は多岐に渡る。
具体的な内容はナレッジベースのKB3163018で確認できるものの、Windows 10 update historyだけでは、カーネルモードドライバーやSMBサーバー、グラフィックコンポーネントなどにセキュリティホールが存在することは把握しづらい。ここは「常に進化するOS」という概念が関係する。「Windows 10のサービスオプション」を読んでみると、内容をこと細かく説明し、ブランチやリングといった概念についても言及していることがわかる。
Windows 10に限らず、現代のソフトウェア開発はアジャイル化が進み、ドキュメントを残すよりも先にコードを書き、サービスを実現するスタイルが主流だ。エンドユーザーにとって「何が変わった」という情報は、トラブル発生時に問題を切り分けるのに役立つため、すこぶる重要である。だが、日本語コンテンツが2カ月遅れでは厳しい。このような傾向はWindows 10に限らず、SurfaceをはじめとするMicrosoftの製品やサービス全体に言えるのだが、開発の進行にドキュメントが追いついていない形だ。
筆者は以前のウォーターホールスタイルで開発していたWindows 7やWindows XPがよい、と述べているのではない。だが、その頃はドキュメントがほぼ必ず存在し、「こんなバグが残っていたのか」と毎月のナレッジベースに目を通すことができていた。現在もナレッジベースは公開されているが、自動翻訳機能を用いて日本語化しているため、意味不明な部分も残っている。日本マイクロソフトには、Windows 10ユーザーのためにドキュメントの更新頻度向上を目指してほしい。
阿久津良和(Cactus)