米国時間6月13日、Appleの開発者向けイベント「WWDC 2016」が開幕した。その基調講演では、iOS 10をはじめ各OSの最新版が披露された。本連載では、その中でとくに注目すべき機能や開発環境について紹介していく。まずは「写真」だ。

WWDC 2016の基調講演で、iOS 10 写真アプリの画像認識技術について説明するクレイグ・フェデリギ氏

写真とカメラは、スマートフォンの世界において最もアクティブで重要な機能と位置づけられている。AppleはiPhoneのカメラを、世界で最も簡単なうえに、高画質でコミュニケーションに適したツールであることをアピールしてきたし、実際にその評価に違わない性能を発揮している。

しかし、写真の体験はカメラの撮影だけでは完結することはない。すなわち、撮った写真をどのように振り返り、また活用して楽しむのかという問題を避けて通ることはできない。iOS 10の写真アプリには、その点にフォーカスした新機能が搭載された。

Appleが提唱する「端末での機械学習」とは

モバイル時代のキラーコンテンツである写真に対しては、競合他社も機能強化に努めている。

Google フォトは、撮影した写真をすべて無料でバックアップし、自動的に顔認識を適用したり、被写体や色などで分類する機能を提供している。機械学習によって、写っている犬の犬種や、パスタの具や麺の種類までも判別するほどに進化してきた。Googleはこうした画像認識技術をGoogle アシスタントに取り込み、例えばチャットアプリ「Allo」で送られてきた写真に返信する候補を提案するなど応用している。

Facebookでも機械学習によって写真の中身を理解する取り組みを進めている。例えば2016年4月の開発者会議F8ではアクセシビリティ機能のデモとして、目の不自由な人が投稿する際にどんな写真が共有されているか音声で説明する機能を披露している。

AppleもiOS 10で写真の内容の理解に取り組んでいる。顔の認識はMacのiPhoto時代から行われてきたが、これに加えて、写っている対象やシーンを識別する機能を取り入れた。

写真アプリでは顔認識のほか、被写体やシーンも解析。日時や位置情報を組み合わせて、写真をプロファイリングする

ただし、Appleはブランド全体を通じてセキュリティとプライバシーの強化を掲げている。そのため原則として、学習の対象をデバイス内に保存されているユーザーデータに限り、そのユーザーデータを生成したアプリの中で利用することを表明している。

この姿勢は、米国のビジネス向け市場で拡大を狙うAppleにとって、崩すべきではない重要な価値となっている。写真の認識についても、ユーザーデータを超えて学習することはないと推測できる。つまり、GoogleやFacebookと比較して、緩やかな進歩になるかもしれない、ということだ。

iOS 10が一般向けにリリースされるのは今秋の予定だ。よって、写真の認識精度を試すには尚早だが、iPhoneやiPadユーザーが画像認識の恩恵を受けられるよう期待したい。