【インタビュー】

停滞するPC市場で何故、アップルだけが勝ち続けているのか? - Vice PresidentのBrian Croll氏にその戦略を聞いてみた

稲葉雅己  [2016/02/05]

先頃、米国の市場調査会社であるGartnerとIDCが2015年のPCマーケットシェアを発表。2社の調査によると、多くのメーカーが業績を悪化させる中、アップルが主要メーカーの中で、唯一、前年比でプラス成長となっていたことが明らかになった

そんな折、米AppleのVice President Product Marketing OS iOSであるBrian Croll氏が来日。アップルが好調な理由はどこにあるのか、話を伺ってみた。

米AppleのVice President Product Marketing OS iOS・Brian Croll氏

アップル製品は、それぞれ腕に着けられるもの、バッグに入れて持ち運びできるもの、デスクに置いて使用するものと、用途に合った機器をセレクトできるというのが、ベーシックなコンセプトだ。そして、それらが単一のOSで統合されるのではなく、それぞれの役割に合ったOSを利用するのが特徴となっている。これについて、Croll氏はこう説明する。

Croll 我々の一連のプロダクトには、それぞれ独自性があり、それぞれの役割を果たしています。それは、一つ一つ異なるカテゴリーが存在しているということでもあります。統合するのではなく、代わりに私たちはそれぞれに素晴らしいデバイスを用意して、それらを一緒に使えることを良しとしています。

例えば、タブレットの形をしているが、ノートブックPCと同じOSを搭載するという製品がマーケットには存在する。だが、アップルはそのようなデバイスを中途半端なものであると考えているようだ。モバイル機器で括られてしまうとしても、iPhoneにはiPhone、iPadにはiPad、MacBookにはMacBookとしての意味と価値を持たせているのである。また、Croll氏は「妥協は良いデバイスを生みません」と力説する。製品の完成度において、一切の妥協がないのもアップルの特筆すべきポイントの一つである。

この日は、特に、Macにフォーカスする形の回答が多かったのだが、最初に日本市場とMacについて語ってくれた。

Croll Macは過去10年間、我々の業界を牽引する立場を担ってきましたが、特に日本に於いての成功を祝福しており、深い関係が構築できてきたという認識でおります。たとえば、アメリカ以外で初めて、実店舗のアップルストアがオープンしたのが東京・銀座です。プロダクトにも長い歴史があります。日本で開発されたPostScript環境がデスクトップの分野で、セールスを拡大するのに大きく貢献してくれたというのがありつつ、1986年のMacintosh Plus発売時には、日本向けに設計されたオペレーティングシステム「漢字Talk」を利用できるようにしました。我々が、国際化、ということを考える時、最初に想像するのはいつも日本だったのですね。良いプロダクトを日本市場に送り込むということを常に考えていました。

Apple Store, Ginza

実際、90年代の日本で、出版やデザインの世界における制作の方法論を一変させてしまったのがMacであった。筆者もMacがなかったら、今の仕事には就いていなかっただろう。当時、Macはクリエイティブな仕事に携わる者の必携デバイスだったのである。その確固たるポジションは世紀を跨いだ現在でも変わっていない。

Croll 先ほどの国際化ということで言うと、「絵文字」は完全に日本からの発信ですよね。さらに言うと、昨秋リリースした最新のMac OS、「OS X El Capitan」では、日本向けのフィーチャーがいくつもあります。「クレー」「筑紫A丸ゴシック」「筑紫B丸ゴシック」「游明朝体+36ポかな」という4種類の日本語フォントを追加しました。これらの新しいフォントはRetinaディスプレイにマッチすると自負してます。また、「ライブ変換機能」も日本語向けのフィーチャーとして注力した機能です。

新しい日本語フォントの追加は、さりげないレベルのアップデートに思えるが、ユーザーエクスペリエンスの向上という意味では重要な意味を持っており、文字が見やすくなるというだけで、さまざまな局面における作業がとても効率的になるし、なんと言ってもRetinaディスプレイに映えるのだ。特に4K、5Kのディスプレイを搭載したiMacでじっくりご覧いただければと思う。

「OS X El Capitan」では、4種類の日本語フォントが追加された

日本語の「ライブ変換機能」は、OS X El Capitanで採用された機能の中でも突出したハイライトで、ひらがなでテキストを入力していくと、次々に変換が自動的に行われ、漢字に変換するのに、一語ずつスペースキーを押さなくても良くなったことによって、タイピングが早い人にはもちろん、筆者のように異様に長いセンテンスを用いた文体を身上としている書き手にとっては、思考を中断させられることなく、一気呵成にテキストを認められるようになり、間違って表示される変換候補を前に苛立ちを覚えていたのも、嘘のように霧消するのである。こうした機能を逸早く利用できるのは、我々日本のユーザーにとって、とても喜ばしいことだ。

さらにCroll氏は、こう続ける。

Croll 私達の市場における占有率は、過去5年間で2倍に成長させることができました。これは日本のマーケットシェアということを考えますと、非常に歴史的なことです。我々は常にMacを良くしていこうと考えていますし、また、これからも品質の向上を図っていきます。

スペック、デザイン性に秀でたハードウェアと使いやすいOSにあわせ、アップルは優れたアプリケーションを数多く用意している。ワープロの「Pages」、表計算の「Numbers」、プレゼンテーションには「Keynote」というオフィススイートに、動画編集の「iMovie」、音楽制作の「GarageBand」といったクリエイティブツール(これには「写真」も入れて構わないだろう)のほか、「メール」「マップ」「メッセージ」「メモ」にWebブラウザの「Safari」などなど、あらゆるユーザーに向けたアプリが揃っている。

Mac用に用意された純正アプリケーション群。iOSアプリと同様のものが並ぶ

Croll Macの中には様々なアプリケーションが付属してきます。今は、とても多くの方がMacを使っているなと感じています。10年、15年前はクリエイティブな人だけがMacユーザーだったのですが、現在では本当にあらゆる人々がMacを使っています。

その背景には、やはりiPhone/iPadの存在がある。前出のアプリはiOS/Mac OSともにラインナップされており、それらはApple IDに紐付いてiCloudで利用することができる。つまり、使いたいファイルやメッセージ、メールなどにあらゆる状況からアクセス可能となる。iOS端末で使ったアプリを同様にMacで使えるというのは、生産性という面でとてもメリットが大きいとも感じる。そして、操作性の高いiOS端末が入り口になっているなら、同じように使えるから、とMacへ誘導するのはとても理にかなったことであるし、実際、同じ感覚で使える。デバイスやOSが異なっていたとしても、操作法はその機器の特性にあわせたものとし、基本的な使用感だけは同様にすることで、圧倒的にユーザビリティを高めているのである。

Croll ハードウェア、OS、アプリケーションの3つをiCloudがまとめて、そして次の段階に押し上げてくれます。その結果として、プロジェクトを開始して、iMacにそれを移行して、それを完成させることが可能になりました。

iPhoneを買った人は、次もまたiPhoneを購入するといわれているが、Croll氏の謂いでは、Macもまた同様で、一度使ったら継続して使用する傾向があるとのことだ。昨年、オリコンが発表した携帯電話メーカーに関する顧客満足度調査では、ダントツでアップルがナンバーワンだったが、パソコンの分野でも似たような状況になっているということなのだろう。

Croll氏は最後に「ハードウェアとソフトウェアを一緒に改善していくことが非常に大事になります。そうして初めて、素晴らしい体験を提供できると考えています」と語った。両輪で進める開発に、さまざまなサービスが加わり、まさに全方位型の戦略を展開しているのがアップルなのである。一度使ったら手放せなくなる魅力に溢れている理由はそういったところにあるのだ。

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