このところ中堅やベテラン俳優に独占されつつあった主演俳優の座が、20代の若手にも戻りつつある。菅田将暉(22歳)、染谷将太(23歳)、窪田正孝(27歳)、池松壮亮(25歳)らが鬼気迫る熱演で引き付ける一方、かつて登竜門だった月9ドラマに福士蒼汰(22歳)や高良健吾(28歳)が起用されるなど、視聴者の期待感も高い。

そして迎えた2016年。トップシーンに迫り、躍り出るのは誰なのか? ここでは最近の出演作や、今後出演予定が発表されている作品をもとに、「ゴールデンタイムの連ドラ主演」を目指す11人の若手俳優を挙げていく。

「月9主演にまっしぐら」の3人

左から中川大志、坂口健太郎、志尊淳

1人目は、ここに挙げるのがはばかられるほど実績十分な中川大志(17歳)。『家政婦のミタ』(日本テレビ)で名前を打ったあと、『GTO』(フジテレビ系)、『夜行観覧車』(TBS系)、『水球ヤンキース』(フジテレビ系)、『地獄先生ぬ~べ~』(日本テレビ系)などに出演。昨年は『監獄学園-プリズンスクール-』(TBS系MBS)と『南くんの恋人』(フジテレビ系)で深夜ドラマの主演を務めた。今年の『真田丸』(NHK)で大河ドラマも3回目の出演となるなど、ゴールデンタイムへの主演に向けて、まさに機は熟した状態。ベビーフェースなのに、感情を一気に吐き出すような爆発力も持ち合わせている。

2人目は、"塩顔男子"ブームを作った坂口健太郎(24歳)。モデルとしての活動歴は長いが、昨年から俳優としての活動を本格化。それまで演技経験は1度しかなかったにも関わらず、6作もの映画に出演してキャリアを重ねた。さらに、秋には『コウノドリ』(TBS系)で連ドラデビュー。そして今年は、1月から月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、4月から朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)にメインキャストとして出演するなど、クールなキャラを武器に、国民的俳優の座へ突き進んでいる。

3人目は、王子様キャラのど真ん中をゆく志尊淳(20歳)。『ミュージカル・テニスの王子様』や、特撮ドラマ『列車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)、そして昨年は、学園ドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)、月9ドラマ『5→9』(フジテレビ系)に出演するなど、順調すぎるほどのステップアップ。人知れず難病に悩む役や、坊主頭で復讐心に燃える悪役で幅を広めた一方、映画『先輩と彼女』では主演として持ち前のイケメンキャラを演じた。すでに固定ファン層はいるだけに、「今年その幅をどれだけ広げられるか」が鍵を握る。

すでに実績十分でコメディもOK

左から大野拓朗、桐山漣、高杉真宙

4人目は、緩急をつけた役作りが光る大野拓朗(27歳)。2010年のデビューからすでに20作を超えるキャリアを積み、昨年はより意欲的な挑戦で足場を固めた。大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)では勇ましい幕末の志士を、深夜ドラマ『LOVE理論』(テレビ東京系)では主演としてユーモアたっぷりに非モテキャラを演じた。さらに、ゴールデンタイムのドラマ『三匹のおっさん2』(テレビ東京系)にも出演するなど認知度を上げ、今年3月からは朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)に出演予定。ドラマ内のコメディパートを担う予定で、大人気キャラになる可能性もある。

5人目は、元"正統派イケメン"キャラの桐山漣(30歳)。約10年・50作超の俳優経験を持つが、これまでは『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(フジテレビ系)のような"使い勝手のいいイケメン"という起用が多かった。しかし昨年、時代劇『まんまこと』(NHK)でのしっとりとした演技で新境地を開く。秋には深夜ドラマ『永久就職試験』(日本テレビ系)に主演し、コメディセンスも披露したほか、今年1月のドラマ『傘を持たない蟻たちは』(フジテレビ系)でも主演として落ち目のSF作家を演じる。"残念なキャラ"としての需要が増えているのは、単なるイケメンキャラからの脱皮に成功したからだろう。

6人目は、少女にも見えるほど中世的なルックスの高杉真宙(19歳)。穏やかな外見とは裏腹に、演技では骨太なところを見せる。昨年は『ゴーストライター』(フジテレビ系)でヒロイン役の母に反発する息子役を好演し、昼ドラ『明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン』(フジテレビ系東海テレビ)では最年少主演に抜てき。何度となく涙を誘うような熱演を見せた。今年1月のドラマ『スミカスミレ』(テレビ朝日系)では、お調子者の僧侶役に挑戦するなど、硬軟織り交ぜた演技はズバ抜けたものがある。「ファブリーズ」CMで見せる親しみやすさも含めて、ゴールデンタイムの主演に近い存在と言えるだろう。

昨年爪あとを残し、今年が勝負

左から葉山奨之、吉沢亮、竹内涼真

7人目は、昨年朝ドラ『まれ』(NHK)でヒロインの弟役を演じた葉山奨之(20歳)。その他にも、『夏ノ日、君ノ声』で初主演を果たしたほか『流れ星が消えないうちに』では波瑠(24歳)の亡くなった元恋人役、『あしたになれば。』では友だち思いの高校生役で出演するなど、映画での活躍が目立った。秋には単発ドラマ『サマー・ストーカーズ・ブルース』(フジテレビ系)の主演に起用。コミカルなストーカー役で、脱力感あるムードを作り上げた。同世代にはイケメンが多い中、「まっすぐさ」「純粋さ」で視聴者を引き込める葉山は貴重だ。

8人目は、昨秋のドラマ『オトナ女子』(フジテレビ系)で篠原涼子(42歳)に恋する後輩社員役を演じた吉沢亮(21歳)。同作ではさわやかな笑顔で大人女性の心をガッチリつかんでいた。今年は映画『さらばあぶない刑事』『オオカミ少女と黒王子』への出演が決定。連ドラも1月に『ダメな私に恋してください』(TBS系)、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系)へのゲスト出演、2月に『武道館』(フジテレビ系・BSスカパー!)へのレギュラー出演を予定。これまでは助演が多かったが、いつ連ドラ主演のオファーが来てもおかしくない。

9人目は、ドラマ『下町ロケット』(TBS系)での熱演が記憶に新しい竹内涼真(22歳)。デビュー作は、1話60秒×10話のミニドラマ『車家の人々』で、2作目が『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日系)でいきなり主演を務めた。そして3作目が『下町ロケット』。デビュー2年にも関わらず、後編ではガウディ開発のチームリーダーを務め、熱く挑む姿で感動を呼んだ。大抜てきが続いて一気に名前が知れ渡ったが、もともと東京ヴェルディユースに所属していたアスリートであり、身体能力を生かした役柄への出演も期待される。

計り知れないパワーとポテンシャル

左から佐野岳、村上虹郎

10人目は、その竹内を上回りそうな身体能力を持つ佐野岳(23歳)。昨年秋の『オールスター感謝祭』(TBS系)「赤坂5丁目ミニマラソン」、『最強スポーツ男子頂上決定戦』(TBS系)で連続優勝。『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日系)で主演を務めたときも、「歴代最高の身体能力」という声も挙がるほどのポテンシャルを持っている。昨年秋はドラマ『下町ロケット』(TBS系)にも出演し、ベテラン俳優たちの中で若手開発者として熱い演技を見せた。佐野の魅力は、射るような鋭いまなざしと、相反するような天性の明るさ。まだ若いが、学生役より、社会人役での起用が多くなりそう。

最後の11人目は、父に村上淳、母にUAを持つサラブレッド・村上虹郎(18歳)。2014年の映画『2つの窓』で主演として俳優デビューを飾った翌年も、映画『忘れないと誓ったぼくがいた』で主演。ドラマでも昨年、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系)でじんたん役を演じるなど、とにかく主演が似合う。今年も映画『ディストラクション・ベイビーズ』に出演予定。美少年ながらインパクトのある顔、何かを訴えかけるような表情などで「ただものではない男」のムードを醸し出し、とても18歳には見えない。その存在感はまぎれもなくスターのものだ。

彼らは年齢もルックスもバラバラだが、その可能性は無限大。切磋琢磨しながら成長する姿を追いかけてみてはいかがだろうか。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超える重度のウォッチャーであり、雑誌やウェブに月間20本超のコラムを執筆するほか、業界通として各メディアに出演&情報提供。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。