とろ~りやわらかバニラアイスの中に、ほっくり甘いあんこがぎっしり! 全国の甘い物好きをトリコにしている福岡県・久留米発の「あいすまんじゅう」。今では全国区の商品だが、実はあんこ以外に福岡ゆかりの商品もラインナップされていることをご存知だろうか。そこで今回、人気の秘密と誕生秘話に迫ってみた。
お菓子作りの発想から生まれた規格外アイス
「あいすまんじゅう」は久留米市に本社を構える丸永製菓の商品で、今から53年前、京都で和菓子の修業を積んだ菓子職人だった先代社長のもと、和菓子づくりの発想から誕生した。同社は現在、アイスクリームメーカーとして様々なアイスクリームを製造しているが、前身はあんこからおかきまで作る永渕製菓所だったという。
昭和35年(1960)、家庭用冷蔵庫の普及とともに"アイスキャンデー"が出現すると、「将来性がある! これなら売れる!! 」と直感した先代は、早速アイスキャンデーを作ろうと決意。「当時、アイスキャンデーはたくさんあったので、普通に作っても売れない。それなら他にないおもしろいものを! という精神で全社員一丸となり、饅頭を作っていた感覚をそのままアイスクリームで再現したようです」とマーケティング・販売促進部の永渕寛司さんは言う。
開発当時は、中のあんこだけがカチコチに凍ったり、外のバニラアイスがなかなか溶けなかったりと、現在の「あいすまんじゅう」のような食感に至るまで、なかなか大変だったという。「形状は四角いバー状が普通なので試作品も作ったのですが、食べた時のあんこのインパクトが弱かったようです。『多少重くて食べにくくてもあんこのインパクトを大事に』と、和菓子らしさにこだわったところ現在の梅鉢型として発売になりました」(永渕さん)。
確かに、ずっしりと重く食べ応え満点の「あいすまんじゅう」。福岡の県花・梅をモチーフにした現在のかわいいシルエットは、そんな菓子職人魂が原点なのだ。
練乳やクリームチーズなど地元・九州の乳製品も配合
こうして昭和37年(1962)に誕生した「あいすまんじゅう」の人気はうなぎ登り! 平成7年(1995)には販路を拡大し、全国で愛される商品となった。現在、53歳となりアイスクリーム界の大御所的存在だ。「昔から変わらないおいしさ」というのがファンの声で一番多いそうだが、毎年、材料の配合や製法など少しずつおいしさへの改良を重ねている。
ちなみに2015年は、バニラアイスの周りをクリームの層で薄くコーティングしているとか。「お店で買っていざ食べる時、少しでも溶けにくくなるようにしました。一般の方にはなかなか気付かれない工夫です」と永渕さん。
また、バニラアイスにはクリームチーズや九州と北海道で作られた練乳をたっぷり使用。あんこの味を決める小豆は北海道産など、材料にもこだわりが多い。全てはアイスクリームが持つリッチなコクと、食べた時の甘さと満足感を大事にしているからこそである。
袋をあけずに少し待ってから食べるのがポイント!
ピーク時には1日20万個以上も生産され、夏はもちろん季節に左右されずに売れ続けている「あいすまんじゅう」だが、これまでには「あいすまんじゅう餅入り」や小豆を練りこんだアイスであんこを包んだ「小倉あいすまんじゅう」、さらに「プリンあいすまんじゅう」など、様々なフレーバーが展開されてきた。
オーソドックスな「あいすまんじゅう」 |
そして現在は、福岡県産八女茶を使用した「あいすまんじゅう八女抹茶」、福岡が世界へ誇るブランドイチゴ・あまおうを配合した「あいすまんじゅう博多あまおう」の3種類を展開。9月からは、国産栗味のアイスであんこを包んだ秋冬限定の「あいすまんじゅう和栗」も発売している。味は変われど、全て140円である。これらは全て全国展開されているが、「もしかしたら東京には出荷が少ないのかも」とのこと。見つめたらぜひ即買いしていただきたい。
福岡県産八女茶を使用した「あいすまんじゅう八女抹茶」 |
福岡が誇るあまおうを配合した「あいすまんじゅう博多あまおう」 |
9月からは秋冬限定の「あいすまんじゅう和栗」もお目見え! |
最後に、永渕さんに一番おいしい食べ方を尋ねてみたところ、「袋からすぐに出さずに、しばらく待つ。するとアイス全体が少し柔らかくなって、クリーミィであんこも絶妙な食感になりますよ」とのこと。この方法で食べると、工場で出来立ての味と食感に限りなく近くなるそう。ぜひお試しを!
※記事中の情報・価格は2015年8月取材のもの。価格は税込