2回にわたって、Windows 8からWindows 8.1 Updateまでの特徴を大まかに紹介してきた。第1回や第2回と重複する部分もあるが、ここで改めて考えてみたい。Windows 8 & 8.1(Update)はダメなOSなのだろうか。

第1回 : Windows 8の悪いところ、良いところ
第2回 : Windows 8.1(2013年) & 8.1 Update(2014年)の改良点・新機能
第3回 : Windows 8.1 Updateのできばえを再考する

確かにWindows 8は野心的なOSだった。それまでデスクトップ環境を主として使ってきたユーザーにとって、スタート画面は使いやすいものではない。Aeroグラスの廃止やモダンUIは結局のところ慣れの問題だが、必ずしも欠点とは言い切れない。また、Windowsストアアプリもローンチ直後と相まって、選択肢はかなり少なかった。

だが、デスクトップ環境ならマルチディスプレイにすればスタート画面は大きなキャンパスとなり、Windowsストアアプリの全画面表示もさほど気にならない(前提条件が存在すること自体、マイナス面であることはその通り)。Windowsストアアプリもその後は充実し、デスクトップPCで使うメリットは少ないが、タブレットであれば利便性の高いアプリケーションや、息抜きできるゲームもそろってきた。

あまり知られていないのが、タブレットでWindows 8を使ったときの利便性だ。タッチ操作でアプリケーションを切り替え、必要に応じてペンや指で手書きする直感的な操作には感心させられる。タブレットを中心にしてWindows 8を開発したからこそ、デスクトップ環境と相いれない部分が生じ、そこがダメなOSといわれる大きな理由の一つなのだろう。

Windows 7とWinodws 8の無線LAN接続時間を比較したグラフ。スキャン時間などを短縮し、10倍以上もスピードアップしている(Microsoft Build 2011のスライドより)

これも前回までと繰り返しになるが、Windows 8は脆弱(ぜいじゃく)性の緩和機能を強化するなど、セキュリティ面も大きく改善された。Windows Vistaで実装したASLR(アドレス空間のランダム化)も、Windows 8で実行時に確保するメモリー領域のランダム化によって、外部からの攻撃が成功してしまう危険性を大幅に低下させている。

カーネル内部に目を向けても、無効なポインターを悪用する攻撃を防止するためのNULLポインター(通常無効なメモリーアドレス)の利用を原則禁止し、プロセッサが持つSMEPやPXNといった機能を用いて、脆弱性攻撃によるコード実行を抑止した。カーネル内のDEP(データ実行防止)を導入したのも、Windows 8からである。セキュリティ面でも、最新技術を搭載したOSを使うメリットは大きいのだ。

OS別のマルウェア感染率(マイクロソフトセキュリティインテリジェンスレポート第14版より)

Windows 8.1はカスタマイズで使いやすくなる

OSはカスタマイズすることで使いやすくなる。これはWindows 8.1に限った話ではない。ただWindows 8.1の場合は(特にデスクトップ中心のユーザーにとって)、これまでのWindowsと比べて、使いやすくするまでのカスタマイズ必須度が高い点が問題だ。

最大のネックといえるスタートボタン/スタートメニューについては、「Classic Shell」に代表されるスタートメニュー復活アプリケーションで解決できる。Classic Shellの場合、クラシックスタートメニュー、Windows XP風のスタートメニュー、Windows Vista / 7風のスタートメニューから好きなものを選べる。

「Classic Shell」をWindows 8.1 Updateにインストールした状態。「Win」キーを押すとWindows 7以前の見慣れたスタートメニューが現れる

また、「フォルダーウィンドウを閉じたときに、ウィンドウサイズや位置を記憶しなくなった」のも悪名が高い。これはWindows VistaからでWindows 8.1でも同様だが、「ShellFolderFix」をインストールすればよい。

ShellFolderFixは、2009年にファーストリリースしたGeorg Fischer氏作のオープンソフトウェアだ。独自のデータベースを用意し、フォルダーを閉じるときに保存したウィンドウサイズ/位置データを、同じフォルダーを開く際に参照する仕組みである。Windows XPまでの挙動と完璧に同じとはいかず、Windows 7向けのソフトウェアではあるものの、筆者の環境ではWindows 8.1 Updateでも問題なく動作している。

「ShellFolderFix」のオプション構成。おすすめは「When navigating to a new location」のドロップダウンリストを「Temporarily use window as is」。最初に開いたウィンドウサイズと位置だけを保存するXPライクな設定項目だ

Microsoftのソフトウェア全体に共通していえることが、ファーストリリースは骨子を生み出したに過ぎず、そこから一歩ずつ改善する点だ。ちょうどWindows 8が8.1に、Windows 8.1が8.1 Updateへと歩みを進めてきたように、である。この3年間で、Winodws 8.xは確実に完成度を高めた。

2015年7月29日に無償アップグレードが始まるWindows 10は、旧来のスタートメニューとスタート画面を融合した"新"スタートメニューを実装し、Internet ExplorerはMicrosoft Edgeへとリニューアル。仮想デスクトップやAeroグラスライクな透過効果など、デスクトップ環境の強化が目覚ましい。今さら「Windows 8.xへアップグレード」とはいわないし(企業ユーザーは状況が異なるかもしれない)、個人として「ダメなOS」と評価しているユーザーが多いことも承知の上で述べると、Windows 8.xは、デスクトップを主たる作業場として使っている筆者にとって遜色ないOSである。Windows 8.xは巷(ちまた)の声ほどダメなOSではないとまとめたい。

Windows 10 Insider Preview ビルド10130。まだまだ未完成な部分は残るが「新しいWindows」の方向性を示している

阿久津良和(Cactus)