男女がセックスすれば妊娠すると簡単に考えている人も多いかもしれませんが、実は妊娠は、さまざまな条件が整わないと成立しない奇跡のような出来事です。月経がある女性なら誰でも妊娠できるかと言うと、そんなことはありません。また体の発育が不十分な場合や、逆に高齢な場合など、妊娠できたとしてもリスクが高くなる場合もあります。では、妊娠するためには、女性の体にはどんな条件が必要なのでしょうか?

「子宮の機能と環境が整っていること」は絶対条件

通常、月経がある数十年の間、女性の体では、周期的に脳、下垂体、卵巣からホルモンが分泌され、排卵が起こり、これに反応して子宮内膜の増殖や月経が起こっています。このサイクルがきちんと機能していることが、妊娠に不可欠な条件です。

細かく言えば、妊娠が成立するためには、排卵から着床(妊娠成立)まで女性の体では次のような条件が必要と言えます。

・ 卵子が完全に成熟し、排卵が起こること
・ 排出された卵子が、卵管に取り込まれること
・ 卵管で卵子が精子と出会って受精し、受精卵が細胞分裂すること
・ 受精卵が子宮内で、子宮内膜にきちんと着床すること

例えば、排卵が起こらなかったり、子宮内膜の状態が良くなかったりと、このうち1つでも条件が欠ければ、妊娠に至ることはできません。もちろん、パートナーに精子があり、その精子が健全で、卵管までちゃんとたどり着けるかどうか、という条件も必要です。

年齢のほか、体重もリスクの原因に!?

上記の条件すべてをクリアすれば、妊娠は成立します。しかし、女性の年齢や体重など体の状態によっては、妊娠しにくくなる場合があります。医学的には35歳以上の初産の場合を「高齢出産」と定義しており、女性が自然に妊娠しやすい年齢は20歳から34歳くらいまでと言われています。

体重に関しては、日本肥満学会の判定基準では、体格指数(BMI)が「18.5未満」をやせ、「18.5以上25.0未満」を標準、「25.0以上」を肥満としています。そうした場合、体重が多すぎると排卵障害の原因に、少なすぎると卵巣機能の低下につながり、妊娠の可能性が低くなるとされています。やはり標準体重の範囲内が妊娠しやすいと言えるでしょう。BMIは、体重を身長の二乗で割ることで出せますので、まずは自分の値を確認してみてくださいね。

また妊娠が成立した場合でも、年齢や体重によっては、リスクが高くなる場合があります。妊娠するには、若ければ若いほど良いと思うかもしれませんが、15歳以下の少女が妊娠した場合は、妊娠高血圧症候群や早産、貧血の可能性が高くなり、胎児が貧血や低体重児となるリスクも高まります。逆に35歳以上の女性が妊娠した場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、難産のほか、胎児の染色体異常症の危険性も高まるとされています。

一方、やせ型の女性(BMI18.5未満)が妊娠すると、胎児への栄養供給がうまくできず低体重児になったり、切迫早産になったりする可能性が高いといわれています。逆に肥満傾向のある妊婦(BMI25.0以上)の場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などが発生するリスクが高くなることや、産道に脂肪がつきすぎて胎児が通りにくくなり、難産や帝王切開の原因になることもあります。

正常かつ順調な妊娠のためには、今回紹介した「体の条件」をできる限り整えておくことが大切です。もちろん、思い通りの年齢や体重で妊娠することは難しいことですが、知識を身につけておくことで、少しでもリスクを軽減し、理想の体に近づけることはできるのではないでしょうか。

※画像は本文と関係ありません

善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など