消費税の増税や物価上昇で、「貯蓄ができる状況ではなくなってきた」と感じている人も多いだろう。こうした中、これまでに身に付いた時間の使い方や人付き合いの仕方を変えることで、「お金が貯まる人になれる」と教えてくれるのが、田口智隆氏の著書『お金が貯まる人が捨てた37のこと』(フォレスト出版、1,300円(税抜))だ。今回は、同書をもとに、この厳しい時代にどうやってお金を貯めることができるようになるのか、田口さんにお伺いした内容を紹介したい。

田口智隆氏は、28歳の時に自己破産寸前まで膨らんだ借金を、徹底した節約と資産運用によりわずか数年で完済。その後は資産を拡大し、34歳の時にお金に不自由しない状態「お金のストレスフリー」を実現した。独立してファイナンシャルインディペンデンスを設立し、現在は個別のマネー・カウンセリングやセミナー活動を行っている。著書に『お金の不安が消えるノート』(フォレスト出版)などがある。

『お金が貯まる人が捨てた37のこと』著者の田口智隆氏

――大企業以外は賃金があまり上がらない中、消費税が増税されたり、物価が上昇したりする状況が続いているのですが、田口さんは、これからの日本の経済環境はどんなふうになると思われますか?

これまでは「デフレ経済」が長く続いていたので、動かなくてもよかったわけです。ですが、物の値段が高くなって前と同じ物を買うのにも余計にお金を出さなければいけないということになってきて、動かないことがよかった今までと比べると、何か将来に向けて動き出さなければいけない、そういう時代になってきていると思います。

あとは、日本国内だけでなくて、海外でも働くという考えを持てる人と、日本国内でしか仕事ができないという人とで、大きな差が出てくる、そんな時代がやってきていると思います。日本でも稼ぐことはできるし、海外に行っても稼げるような自分になれるかどうか、そうしたことも問われてくる時代になっているのではないでしょうか。

――なるほど。今までは特に自分から動かなくてもよかったのが、これからは何らかのアクションを起こさなければならなくなってきているわけですね。田口さんがご執筆された『お金が貯まる人が捨てた37のこと』という本では、まず「捨てる」ことを提唱されていますね。捨てるというのは、動くということにもつながるのでしょうか?

捨てないとなかなか動けないということがあるんです。デフレ経済からインフレ経済に変わっていく中で、捨てるというのが、自分のお金の使い方だったり、稼ぎ方だったり、時間の使い方だったり、そうしたことを変えることにつながるわけです。

今までのものを持ったまま新しいものにつなげていくのは難しい。簡単にいうと、全ての人が自分が生まれてから今の年齢に至るまで、いろんなものを身に付けているわけです。それらが今の行動や考え方につながっているわけで、コップに水が入っている状態です。

いままでの自分のやり方だったり、考え方だったり、お金の使い方、人間関係、時間の使い方、その方の年齢になるまでやってきたことが、コップの中の水です。今までは正しかったかもしれないが、デフレ経済が変わってきている現状で、今までのやり方どおりではまずいかもしれない。しかし、何か新しいことをするにあたって、今までと同じものを持ったままというか、抱えたままやることは難しい。そこで、現状を変える第一歩として、「捨てる」という発想が生まれてくるわけです。

――確かに、年齢を重ねるごとに、自分を変えるのは難しくなりますよね。そこで、お金の使い方や人間関係を変えるために、まず今までのやり方を捨ててみると。

僕の場合だったら、昔、週末は競馬に誘われたら行ったりとか、こういうことをしているときはお金は貯まりづらい。その状態を保ったまま、新しい状況で何か新しいお金がたまる方法を探し出そうとしても、アクセスを踏みつつブレーキを踏んでいるような状態になって、非常に難しい。

そこで例えば、ギャンブルをやめたり、何回かに一回かは飲みにいくことを断ったりすることで、これまでの人間関係や習慣を一部やめてみる。やめるということは、今あるものを捨てるということなので、始めやすいかなと思います。こうした経験をもとに、『お金が貯まる人が捨てた37のこと』を執筆したのです。

――この本を読ませていただいて、目から鱗のものばっかりだったのですが、皆が持っているようなお金に関する常識、たとえば、お金持ちは収入が高い人だという発想とか、日々の赤字はボーナスで補てんすればいいとか、結構みんなが普通に思っているような常識を、まず突き崩してますよね。

『お金が貯まる人が捨てた37のこと』

お金持ちのイメージ像というのは、テレビに出てくる人だったりに限られてきます。そうすると、会社の社長さんが多かったりしますので、年収何億となるわけです。お金持ちではあるのですが、一部なので全員ではない。ですが、年収より支出が多ければ意味がありません。誰が本当にお金持ちかというと、本にも書きましたが、年収300万円の人であっても、ちゃんと支出を抑えて貯金をしていれば、お金持ちということになるのです。

――本では、ボーナスで補てんすればいいという考え方を捨てて、ボーナスが支給されたらラッキーくらいの感覚でいた方が賢明だろうともおっしゃっています。アベノミクスで大企業がボーナスを大幅に上げたりして、もしボーナスがなかったらどうするつもりなんですかとお書きになっていますが、ボーナスがあるものだという先入観というか、常識みたいなものがみんなに刷り込まれているというか、そういう考えをうまく捨てることが大切なんですね。

ボーナスをあてにするのはまずいですね。違和感があります。捨てるということは、そうしたお金に対する考え方もそうですが、付き合う人を変える、一緒に時間を過ごす人、付き合う人を変えるということもあります。

――田口さんも塾講師をされているときに、夜みんなを引き連れて飲みに行ったりしていたと書いてあるのですが、勉強になったのは夜型ではなく朝型がいいという部分です。夜になるとお金を使いたくなってしまうのは、一日のストレスが関係してくる。この辺はなるほどと思って、朝、会社に行っても飲みたくないのに、夜になると飲みたくなるという、ある意味不思議だと思っていたのですが、論理的におっしゃっていただくとこういうことだったんだなと。習慣を変えるというのもあるのですが、人間関係を変えるというのが大きいのかなと思いました。

付き合う人間関係も時間に限りがあるわけですから、お付き合いできる人数も自然と上限があります。だから、今までの人間関係で残すべき人もいますが、さらに増やしても時間に限りがありますから、ある人とのお付き合いをする時間を多少削ることで、新しい人と付き合う時間ができるということもあります。

――時間についても言えるということですね。

人と付き合うというのは、時間とお金に絡むわけです。お酒を飲むのも時間を過ごし、飲食店でお金を払うということですから。飲むということ自体が決して悪いことではありませんが、飲む相手を変えることはできます。

――この本でびっくりしたのが、古い名刺を捨てるという部分です。あの人とのつながりはいつか役に立つかもしれないと思って名刺をとっておいても、3カ月連絡をとらなかった人は捨てるとお書きになっていたのですが、田口さんも実践されているわけですね。

名刺を捨てても困らなければいいと割り切ってしまうのです。たくさん持っていても、使わなければ持っていないのと同じです。お金でもいえるのですが、たくさん持っていても使わなければただの紙切れなのです。

『お金が貯まる人が捨てた37のこと』というタイトルで、たくさんコンテンツがあるように見えると思いますが、意外とシンプルかなと思っています。人間関係にしてもそうですし、書いてあることで難しいことはないと思います。

本のベースにあるのは、もったいないということがあるかもしれません。ある人と使っている時間とお金というのは、言い方がきつくなるかもしれませんが、無駄かもしれないということです。それは、皆さん個々人でさまざまなケースがあると思います。

時間とかお金とか、人とのつながりがどういう現状かということを確認するのがいいでしょう。まず現状がわからない限りは、今後どうしたらいいかということもわかりません。お金にしても、人間関係や時間にしても、すべて現状の確認をする、そこからスタートです。

いきなりお金はどういう貯め方があるのか、ということ考える前に、現時点での自分を確認して、ここはとっておきましょう、ここの使い方は無駄かもしれないけど削るとよりストレスになって爆発してお金を使ってしまうのでここは残しておくとか、こっちの分は削れるとか、これはやめますとか、を検討するということです。

――まず現状を確認することから始めるわけですね。

実は、現在の日本の経済状況は自分を変えるのにちょうどいい局面なのです。消費税が上がるとか、物価が上がる。環境の変化に応じて自分が変わっていける人しか残らない、そういう局面に来ているからです。よっぽど鈍感な人は以外は、世の中が変わりつつあることは実感できているはずです。

――わかりました、耳の痛い話もあるのですが、ポジティブに考えると、変わるにはいい局面だということですね。

物価が上がるということは、お給料が同じであれば苦しいことになりますが、自分がそれに対して変わっていく、変わるというきっかけになることはいいことですね。今までどおりやっていても現状維持にはならない、こっちが変わらざるを得なくなったという状況ですので、それは前向きにとらえていいと思います。

――本日は素晴らしいお話をありがとうございました。