映画『TOKYO TRIBE』が8月30日から公開をスタートした。監督は園子温、主演は俳優・鈴木亮平とラッパー・YOUNG DAIS。漫画家・井上三太の『TOKYO TRIBE2』の映像化、そして世界初の"バトル・ラップ・ミュージカル"と公開前からさまざまな話題で注目を集めている。竹内力、窪塚洋介、中川翔子、叶美香、大東俊介、染谷将太、佐藤隆太、市川由衣…豪華キャストがずらりと並ぶ中、19歳のヒロイン・清野菜名の存在感も負けてはいない。
清野が演じているのは、高い戦闘スキルを持つスンミ。劇中では、華麗な立ち回りで敵を次々となぎ倒し、軽々とバク転や回し蹴りなどを披露している。幼少期から運動大好きな活発少女で、あることをきっかけにティーン誌でモデルデビュー。そこから挫折を経験し、事務所移籍を機に女優に転身するも厳しい現実が待っていた。
しかし、今年は『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』、『ねこにみかん』、『ヌイグルマーZ』などのほか、待機作には『進撃の巨人』(2015年公開)、『少女は異世界で戦った』(2014年9月27日公開)と脇役ながらも出演作が急増。そして、本作で"アクション女優・清野菜名"の存在を多くの人が知ることとなる。芸能界デビュー、モデルから女優への転身、そして深い悩みとコンプレックス。才能が開花し始めた、清野菜名の軌跡をたどる。
――ここまで本格的なアクションだとは思いませんでした。
アクションはとにかく量が多かったので、覚えるのが大変でした。撮影前に1カ月ぐらいをかけて、みっちり練習しました。
――高校はアクション部に所属していたと聞きました。それは部活?
そうなんです。芸能向けの学校だったので、ギターやドラム、ボーカル、殺陣、アクション、演技、ダンスのそれぞれ授業があるんです。だから、部活もヒップホップ部とかガールズ部とか、一般的なものはありません(笑)。私は、単純にアクションが好きだったので、アクション部に入っていました。活動は週1ぐらいのペースでしたが、高校の3年間は在籍していました。
――アクションに興味を持ったきっかけは?
高校に入る時に愛知県から上京してきたんですが、地元が結構な田舎で。人目を気にすることなく、大好きな運動をすることができていました。でも、東京に来た時に、周囲の目を気にしてしまって、のびのびと運動することができなくて…。
――本当に運動が好きなんですね。
はい(笑)。毎日毎日、運動したいんです。上京してそんな状況だったので、すごくストレスが溜まった時期があったんですが、その時にたまたま観たのが映画『バイオハザード』。そのミラ・ジョボヴィッチさんのアクションにハマってしまって(笑)。でも、それがきっかけでアクション女優を目指したのではなくて、ストレス発散のためにはじめたのがアクションレッスン。そこは1年間しか習えなかったのですが、卒業する頃に「アクション女優になりたい」と思うようになりました。
――小学校では市内の陸上大会のソフトボールで活躍、中学校でも陸上の全国大会に出場。物心ついた時から運動が好きだったわけですね。
保育園の時からずっと大好きです。ドッジボールも常に男子とやっているような女の子でした(笑)。
――そして、中学の頃から雑誌『ピチレモン』のモデルとして活躍。そのイメージとかけ離れた活発少女だったんですね。
小学校6年生の頃、休み時間にオーディションごっこが流行っていて、椅子を並べてよくやっていました。ある時、友達が本当にオーディション用紙を持ってきて、それが『ピチレモン』に応募したきっかけでした。もともと、なりたかったのはスポーツ選手か芸能人。そういうなんとなく思っている程度の薄っぺらい感じの憧れでした(笑)。
――初めての演技は?
その後、今の事務所に移って『桜欄高校ホスト部』というドラマで初めての演技を経験しました。その時は…あまり楽しさを感じることができなくて。ワークショップは数回通ったことはあったんですが、演技レッスンをほとんど受けたことがない状態。とても人見知りなので、殻に閉じこもっちゃって、ワークショップでも何にも身につきませんでした。演技がうまい人がたくさんいる中での自分。それ以来、演技をすることがコンプレックスになって、見られたくないというか、恥ずかしいというか…。自分はできないからやりたくない。ずっとそういう思いがあって、そんなことも見て見ぬふりの時期が続いたんですが、この作品が変えてくれたような気がします。今は演じることが本当に楽しいです。今までは出演作が決まるとうれしいんですけど…自分の作品は見たくなかった。
――なぜモデルから女優になろうと?
身長が高いわけでもないですし、そういうところから見てもずっとやり続けることは無理なんじゃないかなという思いがありました。活躍している先輩方を見ても、私はそうはなれないと。それで、身長やスタイルも関係なく勝負できるのは何かと考えたら演技なんじゃないかと。この時もまた、浅い感じの理由で(笑)。いざ、はじめるとすぐに現実を知るわけですが…。
――まずは飛び込んで、そして現実を知る。でも、実際に耐え抜いてやり遂げているわけですから、かなりメンタルは強いタイプ?
いえ、結構弱いです(笑)。この作品のオーディションは去年の6月ごろだったんですけど、結果が出るまでは本当に何の仕事もなかったので、夏は実家に遊びに帰る予定でした。自分は将来どうなるんだろうと漠然とした不安があって…結構悩んでいた時期でした。