現場の声を取り入れた機能群

実際の利用現場を想定した機能を数多く搭載しているのも、FZ-E1の特徴である。

FZ-E1では、音声通話機能を搭載しているが、本体前面に配置した100dBAの大音量ツインスピーカーによって、騒音の多い環境下でもクリアに相手の声を聞き取ることができる。

「一般的な工事現場などの騒音の大きさは、約80dBA程度だといわれる。ツインスピーカーを前面に配置して、ハンズフリー通話時もしっかりと音声が聞こえる環境が実現できる」(二文字屋参事)

また、ノイズサプレッサー機能を採用。3つのマイクで「声」と「ノイズ」を自動で切り分け、ノイズ成分を抑えることで、雑音などが多い現場でも、通話相手に音声が聞き取り易いようにしている。耳に当てて通話する場合と、そうでない場合とを判断して、3つのマイクが、声とノイズを拾う役割が変わるという仕組みも採用している。

3つのマイクのうち1つは本体下部に搭載。100dBA対応の大音量スピーカーも前面に搭載されている

さらに、手袋をしたままでタッチ操作ができるという現場での利用を想定した機能も見逃せない。

これは「高感度近接検知タッチパネル」と呼ぶもので、静電容量式タッチパネルを採用。「これまでは寒冷地や、荷物を持ち運ぶために防寒用・作業用手袋が必要な現場で、操作のたびに手袋や軍手をはずすという手間があった。タッチパネル用の手袋でなくても使用でき、手袋を外さなくても、画面が水で濡れていても操作できるメリットは大きい」(二文字屋参事)

高感度近接検知タッチパネルでは、手袋をしたままでタッチ操作できる

【動画】手袋をしたままTOUGHPAD FZ-E1を動かす様子(※音が出ます)

また、500cd/平方メートルの高輝度、高コントラストのHD液晶を搭載。外光低反射構造との組み合わせにより、太陽光下でも視認性を確保し、屋外での作業をサポートする。ハンドストラップやホルスターなどを用意している点も、現場での作業支援という点で見逃せない要素のひとつだ。実際、ハンドストラップを使ってみると、ハンドストラップなしで持つよりも不思議と軽く感じる。作業現場ではこの感覚は、より効果的だといえるだろう。

なお、2月の製品発表当初は、ハンドストラップおよびACアダプターはオプションだったが、標準で搭載することにしたという。現場からこれを標準で使いたいという要望が多いことが背景にある。また、ACアダプターは、ハンドヘルド端末においては別売りが標準であること、レットノートやTOUGHBOOKのACアダプターがそのまま利用できることから付属しない方針だったが、「発売前に改めて顧客の声を聞くと、ACアダプターを標準で添付して欲しいという声が多かった」(二文字屋参事)ことから、これも標準添付を決定した。その結果、2月の発表時点での想定価格は130,000円前後としていたが、150,000円前後の設定に変わることになった。

ハンドストラップは標準搭載になった。接続部分はネジ止めされているが、ユーザー側で取り外し可能。専用ケースは別売となる(写真は北米向け仕様のモデル)

もうひとつのこだわりがバッテリ駆動時間だ。

FZ-E1では、6200mAhという大容量スマホに比べても約2倍のバッテリ容量を実現。これにより、約14時間の連続駆動、約1000時間の待ち受け時間を達成している。

「一度外出したら充電できる場所に戻ることができないという場合にも、十分利用できる環境を整えた」

さらに2.6A充電により、一般のスマホの2倍強の速度での急速充電を行えるようにした。「1.2時間で50%の充電が可能」(二文字屋参事)という能力を発揮する。

加えて、電源を切らずにバッテリパックを交換できるホットスワップにも対応。作業を中断せずに長時間の連続駆動を可能とした。バッテリパックは、手のひらサイズの大きさで、約130gという重さ。500円玉20枚にも満たない重さだ。スペアを持ち歩いても苦にならない。

バッテリパックの技術サンプル

また、オプションで用意したクレードルには、本体を置いて充電するだけでなく、同時にバッテリパックも充電できるようにしている。本体の着脱が片手だけのワンタッチ操作なのも現場指向のFZ-E1ならではの発想だ。クレードル側には、イーサネットポートやUSBポートも搭載している。

オプションのクレードル。前面中央にあるスイッチを押すと、端末が上部に押し出される

そのほか、細かなこだわりとして、36種類のバーコードの読み取りに対応するとともに、暗い場所でもバーコード読み取り可能なライトおよび照準器を搭載。「1次元、2次元のほとんどのバーコードの読み取りに対応できる。また、複数種類のバーコードが混在している場合にも、読み取り時間が落ちることなく、素早く認識することができる」という。

バーコードセンサーは上部に搭載。36種類のバーコードの読み取りが可能で、倉庫内など暗い場所でもスムーズにバーコードを認識する

800万画素のリアカメラと、130万画素のフロントカメラを搭載。1mの距離を100lxで照らすことができる高輝度フォトライトの採用により、夜間や暗所での静止画や動画撮影も可能なカメラ機能のほか、セキュリティ面では、米国政府調達基準でもあるFIPS-140-2(レベル1)に準拠した暗号モジュールを活用。端末内部およびmicroSDカードに保存したデータや、VPN/SSL通信の内容を暗号化することで、業務データを保護することができる。

本体背面。800万画素のリアカメラは左上に搭載