北近畿タンゴ鉄道は5月25日、水戸岡鋭治氏デザインによるリニューアル車両「丹後くろまつ号」(以下、くろまつ)の定期運用を開始した。松をモチーフとした漆黒のボディーに金色やえんじ色のラインが施された「くろまつ」は、とても大人らしい落ち着いた印象を与えてくれる。車内にはキッチンが備え付けられているため、食事や飲み物が車内で楽しめるのだが、そんな「くろまつ」では一体どんなグルメが用意されているのだろうか?

水戸岡鋭治氏がデザインした「丹後くろまつ号」

「海の京都」を食でも表現

そもそも「くろまつ」のコンセプトは、「『海の京都』の走るダイニングルーム」というもの。地域の憩いの場として、また、移動そのものを楽しむ旅として提案されている。車内には2人がけテーブル5つと、4人がけテーブル5つが配置されており、食事を楽しみながら、流れ行く景色もゆったりと味わえる空間となっている。

なお、デザインを手がけた工業デザイナーの水戸岡氏は、JR九州77系客車「ななつ星in九州」や和歌山電鐵2270系「たま電車」などもデザインした、日本の鉄道史を語る上で欠かせない存在。個性的ながらも元気の出る車両デザインが、「くろまつ」にも生かされている。

洗練された「くろまつ」の内観

スイーツ・ランチ・地酒の3コース

「くろまつ」は1、2、3号がある。福知山駅から天橋立駅行きの「くろまつ1号」、天橋立駅から豊岡駅行きの「くろまつ3号」、豊岡駅から西舞鶴駅行きの「くろまつ2号」を1日3本、金土日曜日・祝日に運行している。

1号から3号まで、それぞれ味わえるものが異なる。1号は「スイーツコース」で、福知山の現地から取り寄せた和洋菓子がメインとなっている。3号の「ランチコース」では、旅館「佳松苑(かしょうえん)」の総料理長監修によるランチを提供。そして2号は「地酒コース」となっており、京都の13蔵から厳選したという日本酒と料理が味わえる。

では、それぞれのコースではどのようなものが楽しめるのだろうか。

くろまつ1号 スイーツコース(大人4,000円、小人3,600円)
丹後くろまつ1号のスイーツコースは、「季節のタルトレット」「丹波栗の和のモンブラン」「手作りアップルパイ」が週変わりで提供されている。さらに、テイクアウト用に「丹波産大納言小豆のきんつば」や「丹波黒豆入りカップケーキ」も用意。北近畿タンゴ鉄道を担当している依知川展和さんによると、スイーツに力を入れる福知山市から取り寄せたおすすめ和洋菓子を、車内で存分に楽しんでもらうことをコンセプトにしているという。

1号の「スイーツコース」では、福知山市から取り寄せた和洋菓子がそろう

くろまつ3号 ランチコース(大人1万円、小人9,400円)
もっとも支持を集めそうなのがこの3号のランチコース。全室スイートルームで豪華部屋食を楽しめることで知られる旅館「佳松苑」の深野総料理長が監修した、ちょっとぜいたくなランチを味わえるコースになっている。

メニューの一例を挙げると、「へしこと新鮮野菜のサラダ」「丹後若布の新緑スープ」「京都牛のローストビーフ」「タンゴの海山の幸の和風パエリア」「くろまつオリジナルデザート」「食後のコーヒー」など。料理そのものは、"地元料理人による地元食材を使った料理"にこだわっているという。また、ツアー中、地元の食材などを久美浜駅での駅市で堪能できるというお楽しみも用意されている。

3号の「ランチコース」では、地元料理人による地元食材を使った料理が楽しめる

くろまつ2号 地酒コース(大人5,000円)※講座付き(大人8,500円・月4回隔週土日)
大人限定で提供している2号の地酒コースは、「夕暮れの風景とともに海の京都の13蔵から厳選された日本酒とお料理の相性を体感するコース」と名づけられたもの。ただ酒を味わうのではなく、SAKEソムリエによって地元の食材と酒との相性も考えられている。こだわりは、沿線にある13の酒蔵の様々な地酒。ゆっくりと体験してもらいたいという思いで企画したそうだ。また月4回(隔週土日)、SAKEソムリエによる講座が受けられる。

2号の「地酒コース」では、沿線にある13の酒蔵が自慢の酒を提供

これらの各コースにおいて、「地元沿線の素材や食材の良さを、地元の人たちにはあらためて感じてもらい、域外のお客さんにはその素晴らしさを体験してもらいたい。『くろまつ』を通じて丹後、丹波、但馬沿線のファンになってもらいたい」と依知川さんは語る。

「くろまつ」では乗務員がサービス提供時の揺れに対応する訓練を行うなど、動く列車の中でも乗客へ最適なサービス提供ができるように努めている。ノスタルジックな雰囲気の中で味わう食事と列車旅。ぜひ堪能してみたいものである。

※記事中の情報は2014年7月取材時のもの。価格は全て運賃や特別車両料金、飲食代、サービス料を含むパッケージ料金(税込)

(c) 北近畿タンゴ鉄道