現在大変話題になっている猫付きマンション。飼い主のいない保護猫の譲渡活動などを行うNPO法人キャットガーディアンが考案した猫のための保護システムだ。今回は、実際に猫付きマンションに住んでいる人と、その愛猫に会いに行ってきた。
猫付きマンションとは
保護されている猫たちを、保護猫カフェから預かり、一緒に暮らすことができるのが猫付きマンション。猫を飼うのはもちろん強制ではなく、入居者の自由。猫を希望した入居者は、キャットガーディアンが運営する保護猫カフェから、一時預かりの形で、猫(1歳以上の成猫)を引き取ることができるのだ。猫を預かっている際の食事代や医療費などは入居者負担となる。
そして、もし引っ越しをした際など猫と暮らすことができなくなった際は、キャットガーディアンに猫を返すことができる。(もちろん、猫をそのまま引き取ることを選ぶ人もいる)。
真黒な猫ちゃんが出迎えてくれた
訪れたのは中野区にあるマンション。実はこのマンション、もともと猫付きマンションであったわけではない。
猫付きマンションの基本的なシステムは前述したとおりであるが、実は、猫付きマンションでなくとも「ペット可マンション」であれば、このシステムだけを利用して猫と暮らすことができる。ペット可のマンションに暮らす人は、自分が望めば、猫だけをキャットガーディアンから預かることが可能、という訳だ。
今回は、このように「システムだけを利用した」マンションにお邪魔した。亀山さん、澤さん、寺澤さんのご友人3名がルームシェアをして暮らしている3LDKのお部屋だ。
呼び鈴を鳴らすと、家主さんたちが出迎えてくれるとともに、玄関まで愛らしい黒猫がやってきてくれた。この家に暮らす、キャットガーディアン出身の猫・ふみちゃんだ。
家主さんたちにインタビュー!
――今回はインタビューをお引き受けいただきありがとうございました。早速出迎えてくれたふみちゃんですが、「ふみ」という名前の由来は何ですか?
「3月23日にやってきたので、仮の名前で"ふみ(=23)"と名付けたんです。ところが、その後動物病院に連れて行ったところ、登録のため"お名前は?"と聞かれ……(笑)。その瞬間、仮の名前である"ふみ"が本名として昇格したんです」(亀山さん)
――なるほど(笑)。でも呼びやすいし、可愛い名前だと思います。ふみちゃんは、どんな猫ですか?
「体重が3.6キロとメス猫らしく小柄なんですが、ひき戸を開けられるほど力もちです。いや、本当に女の子なんですけどね(笑)。
それと人が大好きで、玄関先や、窓の所で我々の誰かが帰ってくるのを待機しています。結構甘えん坊ですね。
しかし逆に、結構大人びたところもあって、病院では割と平然としています。先生に"フシャー"と軽く威嚇することはありますが、あとは結構じっと静かにできてますよ」(亀山さん)
――猫付きマンションのシステムを利用する際は、保護猫シェルターから猫を自分で選び、引き取るそうですが、たくさんの猫がいる中で、なぜふみちゃんを選んだのでしょうか。
「ルームシェアをしている3人全員の膝に乗ってきたのが、ふみだけだったからなんです(笑)。大塚にある保護猫カフェを訪れ、どの猫を迎え入れるかを3人で決めに行ったんですね。その際、3人全員の膝に乗ってきた猫がふみだった。誰か一人ではなく、3人全員と仲良くしてもらえる猫の方が、一緒に暮らすのに良いだろうと思ったんです」(亀山さん)
――そもそも、猫付きマンションのシステムを利用しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
「去年の頭に、3人でルームシェアをしようという話になったんですね。で、今の3LDKに引っ越すことになったんです。この家は、もともとペット相談の物件。そこで、猫と一緒に暮らしてはどうか、という話になったんです。
でも、ずっとルームシェアをする訳ではないでしょうし……。ルームシェア解消となった際、猫はどうすればいいのか……。そこで、猫を預かる形式の、猫付きマンションのシステムを使わせてもらうことになったんです。このシステムならば、転居などの理由で猫を飼い続けることができなくなったら、元々いたキャットガーディアンの猫シェルターに戻すことができますから。
そして、ふみをこの家で預かっている間は、シェルターのケージが一つ空く。そうすれば、まだ保健所などの場所にいる猫が一人助かるんです。私たちは、一時的であれ大好きな猫と一緒に暮らすことができますし、そうすることで猫の保護活動に協力することが可能になるんです」(亀山さん)
――なるほど。猫と暮らすことそのものが保護活動につながるんですね。
実際に暮らしてみて……
――実際に猫と暮らしてみてのご感想を教えてください。
「もうね、ふみの存在自体が幸せですね。いてくれるだけで本当に嬉しい。帰ってきて、にゃーと一言もらい、迎えてもらえる。最高です。声も抜群に可愛いです」(亀山さん)
「ふみ、って呼ぶとしっぽで返事をしてくれます。そういうところも可愛いですね。でも、ふみ、って呼ばなくても返事をしたりすることも……」(澤さん)
「最近ちょっとぽっちゃりなのですが、こっそり"デブ"って呼んでもしっぽで返事しますね(笑)」(寺澤さん)
――逆に驚いたことなどありますか?
「昔は犬と暮らしていたんですが、猫が犬と随分違うことに驚きましたね。夜行性であることとか色々……。ふみをシェルターから引き取る時に、東京キャットガーディアン代表の山本さんに猫の飼い方などはしっかり教わっていたので、知識としては知っていましたが……。犬とあまりに違うんですね、猫っていうのは(笑)。でもその違いもまた魅力的です」(澤さん)
「あ、あと耳があまりに良いので驚きました。ツナ缶を開ける時の音とか、ふみはよ~く聞いてますね(笑)。かなりそーっと静かに開けるんですが、すぐに台所までやってきて、もらえるのを待機しています」(亀山さん)
――大変だったことなどもありましたら教えてください。
「寝不足になるのは結構大変ですね(笑)。ご飯を要求されて明け方に起こされたり……。あと、私は書家でもあるので、書道の邪魔をされたりしますね。文鎮なども好きなようで、キラキラ光っているのを見ていたりします。いや、その様子はすごく可愛いですけど……(笑)」(亀山さん)
――ふみちゃんの一番可愛いところはどこだと思いますか?
「チャームポイントは、やっぱりマロ眉ですかね(笑)」(寺澤さん)
「あと、体型もかわいいです。ぬいぐるみみたいで。何かの童話に出てきそう」(澤さん)
「一日一日、ぜーんぶかわいいです。ツイッターも、ほとんどふみの写真ばっかりを投稿しています」(亀山さん)
――これから猫マンションに住むことを考えている人に対してメッセージをお願いします。
「猫付きマンションはたくさん紹介されていますが、別に、猫付きマンションと規定された物件以外でも大丈夫なんです。システムだけ利用することも十分可能。
ペット可の物件であることはもちろん大前提ではありますが、高齢の方であるとか、大学4年間だけ猫と暮らしたいとか……。猫付きマンションのシステムは、そういったニーズに合致すると考えています。
そして、猫付きマンションのシステムを利用してシェルターから猫を引き取ることで、シェルターのケージが一つ空くんです。そうすれば、そのケージにまた別の猫を保護することができる。猫の保護活動に、こうした形で協力することができるんですね。とても良いシステムだと思います」(亀山さん)
――最後に、ふみちゃんに対してメッセージをどうぞ。
「毎日可愛いね。でも、少し寝かせてね。愛してるけど寝かせてね」(亀山さん)
「ちょっとは運動しましょう(笑)」(澤さん)
「大好きだけど、たまには静かにしてね(笑)」(寺澤さん)
――ありがとうございました!