UR都市機構は29日、町田山崎団地で「ヤギを活用した除草手法」を実施するのに伴い、見学会「おかえりヤギさん」を行った。住民や大勢の子供たちが詰め掛けた、当日の様子をお伝えしたい。
「ヤギ除草」でCO2の削減
太陽がじりじりと照りつける中、草むらに群がる報道陣。見学場所には、草を手にした子供たちと町田山崎団地の住民も集う。彼らが待つのは、なんとヤギだ。
今回のヤギたちは「ヤギを活用した除草手法」、通称「ヤギ除草」のためにやってきた。草刈り機の使用に伴うCO2排出量の削減や、アニマルセラピー効果、コミュニティ活性化を目指してUR都市機構により実施されているものだ。昨年、同団地では実証実験が行われており、今年は導入地区を拡大している。
ヤギと子供たちが交流
見学会が始まり、音楽とともにやってきたのは4頭のヤギ。スタッフに連れられて草むらに姿を現すと、観客からは歓声が上がった。観客の前に現れるとヤギたちは早速草を食べ初める。旺盛な食欲に見とれてしまった。
見学会には、地域の"子育て園"から園児たちが参加。ヤギに草をあげたり、歓迎の歌を歌ったりしてヤギとの交流を楽しんでいるようだった。
1日で4.5kgの草を食べる
今回のヤギたちは、富山の牧場からやってきた。食欲にもよるが、1日で約4.5kgの草(乾燥状態)を食べるという。現在は1,000平方メートルの敷地に放されているが、今後は定期的に移動を行い、最終的には6,000平方メートルもの除草をする予定だ。
同社の担当者に昨年の反応を伺うと「(ヤギがいる草むらの)隣の棟に住む人は、毎朝ヤギが4頭いるかを数えていたそうです。ヤギが見える橋の上に人が集まり、知らない人どうしが話す様子もありました。去年は、毎日見に来た"皆勤賞"の子供もいたんですよ」と話してくれた。町田市のデータによれば、同団地は65歳以上の住民が4割だという。
同団地が選ばれた理由は、環境がヤギに向いていたことや、もともと雑草の除草に苦労していたことなどがある。今年は同じく東京都町田市の「藤の台団地」にもヤギたちが出張する予定だ。冬は草がないため、期間は11月下旬まで(予定)。同社は今年、ヤギ除草を「多摩平の森団地」でも行うほか(6月4日~11月下旬の予定)、そのほかでも実施を検討中とのこと。なお、一般の人がヤギに触れることはできないようになっている。
どことなく憂いを帯びた顔立ちに、白く整った毛並み……。ヤギたちが草を食べる姿は、見ているだけでも心穏やかになる光景だった。ヤギは"食べては寝て、食べては寝て"という一日を過ごすという。除草が進むのに加えて、ずっと眺めていたくなる姿も見られるというのは、一石二鳥かもしれない。