扶桑社はこのたび、金森重樹さんが執筆した『100%得をする ふるさと納税生活』(税込価格 : 1,404円)を発売した。同書では、金森さん自身が体験した"ふるさと納税生活"を紹介。『ふるさと納税』をすることで、食費にかかるお金はゼロであることや、『ふるさと納税』の仕組みなどを分かりやすく解説している。今回は、同書の内容や"ふるさと納税生活"の実際などについて、金森さんのご自宅でインタビューした内容を紹介したい。
『ふるさと納税』とは、自治体への寄付金のことで、個人が2,000円を超える寄付を行なったときに、住民税のおよそ1割程度が所得税と住民税から控除される制度。寄付した自治体からはその自治体の特産品がもらえることが多い。ふるさと納税は生まれ故郷でなくてもよく、しかも複数の自治体に寄付することが可能。1年に何回でも寄付できる自治体もある。
不動産投資会社などを経営する金森さんは、この制度を通じて、各自治体の特産品を取り寄せており、その特産品のおかげで、年間の食費はゼロ円という。
金森さんが納めている住民税は数千万円、節税がきっかけで『ふるさと納税』開始
――『ふるさと納税』を始めたきっかけを教えてください。
妻がテレビを見ていて、ふるさと納税が節税になるって言ってたから調べてくれないかという話になって、それで調べたのがきっかけです。
――金森さんが『ふるさと納税』に興味を持たれたのは、節税がきっかけだったんですね。
特に住民税です。住民税を節税できるシステムは他にありませんので。所得税はいろいろありますけど。ダイレクトに住民税が引かれるのってふるさと納税ぐらいですからね。
――なるほど。金森さんはかなりご収入が多いということですが、納税額はいくらぐらいなのでしょうか?
数億です。
――すみません立ち入った話だと思いますが、住民税っておいくらぐらいですか?
住民税は、どれぐらいでしょう…年によって違いますが、数千万円です。
――そのうち、ふるさと納税の制度を利用して節税できる金額っていくらぐらいなのでしょうか?
数百万円ぐらい節税できています。
――ふるさと納税で節税できるとお知りになって、どうされましたか?
「ふるさとチョイス」というサイトの方に問い合わせしました。その方に初年度は年間計画を作ってもらって、とりあえず200万円ぐらいやることにしたのです。
――200万円!
それで今年はだいぶ慣れてきましたので、去年失敗したものはやめたりして、今年は多分320万円ぐらいをふるさと納税する予定です。
『ふるさと納税』は納税ではなく寄付
――本を読んでびっくりしたのですが、ふるさと納税は、実際には納税じゃなくて寄付金なんですよね。
例えば、自分の住んでいる自治体に納税する場合、本来は住民サービスを受けることを前提に、住民税を納めてるわけですよね。
――はい。
他の自治体に住民税を支払ってもそこから住民サービスを受けるわけじゃないので、理由がないから、納税はできないという話なんです。それで寄付金という形をとってるんですね。
――なるほど。そうすると、なんとか寄付制度っていう名前にして違うネーミングにしたほうがいいと思うんですけど、金森さんはどう思われますか?
単純な寄付金だと、単なる寄付金控除だけって思われてしまいますけど、ふるさと納税は税額控除もあれば特例分控除もあるっていう意味では、ちょっと違う名前にしておかないと、わからなくなるということもあるのではないでしょうか。
――なるほど。
寄付金控除は所得税に対する寄付金の控除ですけど、住民税の税額控除と特例分控除っていうのは、他の寄付金控除制度にはないので、「寄付金」にしてしまうと、システムがわからなくなるというか、システムが違ってくるというか。そこでふるさと納税というネーミングにしたのだと思います。
毎日『ふるさと納税』の特産品が届く生活、年間計画も作成
――金森さんはいつからふるさと納税を始められたのでしょうか?
去年から始めたばっかりですよ。でも去年は100箇所以上やりました。
――100箇所以上!?
今年はもう、ほとんど毎日品物が来ます。
――毎日来ますか?
年間で200本ぐらい。
――100箇所以上っていうのは、100の自治体ってことですよね。それって選ぶのだけでも大変だと思うんですけど。
年間計画を組んでもらってます。ただ、食べたいものは妻と一緒に選ぶこともあります。
――何が一番オトクですか?
お得というか、例えば3本4本される方だったら、必ず消費し切るものじゃないともったいないので、まずやっぱり主食のお米じゃないでしょうか。
――なるほど。
お米だと必ず消費し切るし、普通の家庭だと、年間60キロぐらい消費すると思いますので。
――なるほど。
それから肉、魚に進んでいきます。冬だと牡蠣とかアワビ、夏はうなぎとかあります。
――本には、金森さんの御宅の食費は『ふるさと納税』の特典で年間0円ですませているとありますけど、本当ですか?
基本的には全部それでまかなえますね。
――1年間まるまる、『ふるさと納税』で食費をまかなっている方は、日本で金森さんただ一人なのでしょうか?
たぶん、年間計画までたてて『ふるさと納税』をする人が他にいないということではないでしょうか(笑)
やっぱりハードルがすごくあって、結局ふるさと納税をやっても寄付金控除の手続きを受けない人ってすごくいて、多分全体で言うと、3分の2ぐらいはいるんじゃないでしょうか。
――確定申告の時にということですか?
はい。やっぱりサラリーマンの方って確定申告するの面倒臭いですから。
分かりにくい『ふるさと納税』の申告の仕方を著書で分かりやすく解説
――寄付金控除ができるっているのを知らない?
できると知っていても、やるのが面倒臭い。源泉徴収で年末調整されるサラリーマンの方は、自分で確定申告書を書き起こすことってめったにないので。
住宅ローン減税を受けてる人は、年収3000万以下なら住宅ローン減税が使えますので、その人達は必ず確定申告をやるんですよね。だから、そういう人だったらどのみちやってるから、添付するだけでできるからそれはそれでいいんですけど。何にもやってない人は、面倒臭いんだと思います。
だから、単純にちょっと高いお取り寄せグルメになって、損しちゃったなってことになるんですよ。
本に書いてるように、寄付金の計算式が面倒臭いし、ある一定の金額までで控除しきれない部分が出てくるっていうのがわかりにくいですから。
――わかりにくいですよね。
そこで、この本には、詳しくマニュアルとして書きました。計算のやり方は僕が自分の例で示しました。
――確かに、わたしもこの本を読ませて頂いて、やってみようかなと思いました。本で紹介されていた長野県の阿南町の米はもう締め切ってましたね。やはり人気なんですね。
旬のものは季節の前に手続きするのがいいですね。マンゴーとか、佐藤錦とかはわりと早く終わりますんで。
――計算すると、私だとだいたい大体2万4千円とかです。
それだと、だいたい1本1万円なので、2本米を頼むとかがいいですね。
――米・米。
10キロ+10キロっていうのを選んでいくのが一番いいですね。20キロっていう。
――わかりました。このふるさと納税って、阿南町の例を出されていましたが、阿南町は還元率100%ってありますが、収益度外視っていう?
阿南町の場合は農家から買い上げるからです。魚とかも直接買い上げるところもあるみたいで、やっぱり自治体なので、地元の生産者を支援するっていう意味合いが大きいですからね。
嬉しかった特典は「祢保希(ねぼけ)のタタキ」、地ビールも毎月届く
――今までで一番嬉しかった特典ってなんですか?
祢保希のタタキとか結構良かったですね。高知の司という料理屋で東京では祢保希というブランドでやっているところがあるんですけど、そこのカツオのタタキがすごく良かったです。あとは佐藤錦なんかは子どもたちは楽しみにしてますね。
――そうなんですか。毎日プレゼントが届くみたい?
来ますね。朝必ずピンポーンってきますね。
――そうなんですね。
お酒ももう定期的に、地ビールなんかも毎月届きますし。完全に生活の一部に組み込まれています。
――そこまでなると、一種の達人ですね。
年間計画を立ててやってますから。ただ、野菜とかは面白くて、先日は山菜ですね。タラの芽が送られてきました。妻がつまみとして揚げて食べました。
――おいしそうですね。
あんまり山菜系って、都心だと店頭に並ばないじゃないですか。
――なるほど。そういうものが届くこともあるんですね。それも年間計画で決めてるんですよね?
そう、山菜セットみたいな感じで。
(ピンポーン♪)
いま、ふるさと納税ギフトが来ました。
――いま来たんですか?
ひっきりなしに来ますよ。
(受け取り対応)
自治体にとって『ふるさと納税』のPR効果は大、サラリーマンの人にもオススメ
――どうでしょう、制度として金森さんが活用されて、すごくいい制度だなと思われます?
思います。
――どういう点がいいんでしょう?
普通では絶対覚えない町の名前を覚えました。特に、何回やってもOKのところはしょっちゅう頼むので、全然知らなかった町の名前が自然と覚えられます。
――やはりそうすると、最初の狙いの、自治体のPR効果にはなるんですね。
なると思います。
――なるほど。そうすると、金森さんとしてはこの本もお書きになりましたし、サラリーマンにもどんどん利用してほしいということでしょうか。
そうですね。使い方をどういうふうにやるかっていうのを家庭で相談してプランを考えて。いろいろやってもらえればなって思います。
『ふるさと納税』での地域振興の実現へ力を尽くす
――そうなんですね。
ただ私個人としては、実はお得だからやっているというわけでもないのです。第3セクターの地方の潰れそうな卸売市場があって、町に特産品を開発してもらって、ふるさと納税の資金でその卸売市場を再建しようと計画しています。自治体の復興といった趣旨でやってるんですよ。
さらに今提案しているのは、都会で働いている女性がふるさと納税することで地方の男性と集団お見合いをするような仕組みを構想しています。そうすると、夫婦が定住すれば住民税も納付されますし、そこで子供が増えれば人口の過疎化も防止できるし。そうした意味では、私は『ふるさと納税』で得をしようとか、そういう感じとはまるっきり違うんですよ。
――そうなんですね。地域振興ということを金森さんがお考えになるというか、力を入れたいと思わせるきっかけというのは?
やはり地方に行ったらわかりますけど、寂れてるというか。結局郊外にでっかいショッピングセンターとかがあって、駅前とかは全部潰れちゃって、店番はおばあちゃんがやっているとか、そういうことが多いじゃないですか?
――はい。
だからそれを、ふるさと納税という制度で地域にお金が還流できるんだったら、それをもう少し過疎化対策とか、地域復興とかに活用しないと、都会ばっかりが潤って地方が寂れてるんじゃ、結局ごはんって誰が作ってくれるんだっていうことです。誰が作ってくれるご飯で生きているの? という問題意識です。コメも作ってくれないよとか、漁師さんもいなくなるとかなったら、結局はまわりまわって都会の人間なんて最悪の状態になるでしょということです。
私はもともと、地方でメガソーラーの開発をやっていたりとか、あとバイオマス発電なども今やりつつあります。結局地域が潤わねば自分たちの首を締めるってよくわかってますので。
――金森さんはそういう問題意識を持たれているのですね。
あまりにも地方がさびれると、東京にも地方から人材が入ってきていたのに、地方が完全につぶれると誰も東京にも来なくなります。
――なるほど。その一つの手段がふるさと納税という。
ちょっとした図書館もできるし、いろいろなことができそうじゃないですか。
――そのメガソーラーとかも土地はあるからやれそうっていう?
そう。今実際群馬県の太田市なんかは自治体が率先してメガソーラーの建設やってますからね。
――なるほど。サラリーマンの人もふるさと納税をどんどんやってみたほうがいいですか?
やってくれたほうが地域の復興になりそうです。
――いろんな自治体に寄付しても、引かれるのはたったの2000円なんですものね?
そうです。だから結局お取り寄せグルメの2000円だと思ってもらえれば。年会費2000円払えばいくつやってもいいよっていう話なんですよね。
別に10口やったから10倍かかるって言う訳でもないので。2000円×10じゃないので。
――やればやるほどお得といえばお得?
そうです。だから、限界値までやらないともったいないですね。
取り寄せたものを実際に見せていただいた!
――では、今まで取り寄せたものを実際に見せていただけますか?
(準備中)
――結構取り扱い注意のものが多いですね。
あとはエゾシカとか、ジビエ系が結構多くて。地方は。北海道とか。ちょっとしたイノシシとかね、くじらとかね。
――これ岩手っぽくないですか? 二戸のはちみつ。
そうですね。カレー系もあるんです。あとは茶そばとかそうめんとか。あとは地ビールですね。ジュース系とか。
――すごいですねえ。
調味料とかも。とりあえず乾物と冷凍モノを出すので。あとは溶けるもの。
――岩手や北海道も結構ありますね。
スイーツとかも毎日来ます。ケーキとか焼き菓子とかも。今朝来たのは焼き菓子。
――日本中のグルメが集まっている感じですね。コシヒカリ! そばも。
あとはスムージーとか。博多の鍋セット。鍋はセットできますね。これは上士幌町。あとは醤油系。毎月来ますね。この醤油は美味しかったので取り寄せました。
――あとから?
そう。これめちゃくちゃおいしいんです。かつおだしつゆっていう。豚しゃぶ鍋についてきたんですけど、あまりにおいしいので取り寄せました。
――そういう効果もあるんですね。
そういうお買い上げ効果もあるんですね。
――毎日届いたら本当食費全然いらないですよね。
いらないですね。全然かからないです。
――すごいですねえ。全国各地の。
毎日おもいっきり消費してます。じゃないと冷凍庫とかパンクしちゃう。
(撮影終了)
――今日は本当にありがとうございました。
いかがだっただろうか? 節税がきっかけではじめたふるさと納税が、いつしか金森さんがもともと取り組んでいた地域振興に結びついていく過程を感じてもらえたのではないだろうか。
皆さんもぜひこの本を読んで、ふるさと納税にチャレンジしていただけたらと思う次第である。