2011年10月、日本に上陸したSNSサービス「LinkedIn」。全世界に2億7700万人以上の会員を抱え、日本でも現在100万人が登録しているという。このサービスが有名になったのは、「会員を直接ヘッドハンティングできる」「就職・転職の形が変わる」といった印象によるもので、「転職用SNS」ととらえられていることも多い。

上陸から2年経った今、LinkedInの実態はどうなっているのか。気になる人材採用の今後…そしてぶっちゃけ既存の採用媒体についてどう思ってますか? といった疑問を、同社の日本オフィス代表代行 杉本隆一郎氏へフランクにぶつけてみた。

LinkedIn日本オフィス代表代行 杉本隆一郎氏

黒船・LinkedInの手ごたえは?

--日本でサービスを開始してから2年が経ちますが、手ごたえはいかがですか?

おかげさまで順調にユーザー数、そして利用度合いも高まっています。100万人のビジネスプロフェッショナルが登録して、オープンに自分のことを話しながらつながりあうネットワーキングは、他にないものだと思いますし、着実に根付いてきているんじゃないかと感じています。

--会員の方は、どのように利用されているんでしょうか?

大きく2つあります。1つは自己紹介のツールです。自分が何のプロフェッショナルなのかを表現していく手段として使用し、それをきっかけに同業他社や関わる方との情報交換や、ビジネス開拓のコンタクトツールとして利用されている方が多いですね。2つ目としては、会社ページやニュース、ビジネスリーダーが参画するブログなどを通じて情報収集できる場として使っていただいています。

いろいろなビジネスのパートナー探しや、個人的な営業活動が行えるサービスのため、その一部として人材採用や、逆に就職する会社を見つけに行く…という役割も担うことになります。

--何か新しいビジネスが生まれたという声が届いたりしますか?

会社を起ち上げるための投資家にプレゼンする場を設けられたとか、海外の会社が日本のビジネス慣習をリサーチしたりだとか、日本の会社が海外に出ていくときの訪問相手を探すとか、声をいただいていますね。これまでは人のつながりが足がかりになっていたものが、リアルな接点にとどまらないコンタクトをとれるようになっています。

--例えばライターが取材相手を探したりも…

もちろんです(笑)。自分がコンタクトしたい方にたどり着くまでの行程が短縮化できますので、様々なことが効率化できると思いますよ。

LinkedInって何のサービスなの?

--改めてお伺いしますが、LinkedInって就職・転職サービスじゃないんですか?

ビジネスとして、サービスの半分を占めているのが、採用のソリューションなんです。そのために、求人媒体なのか、転職SNSなのかと気にされて、認知が広まったという経緯があります。2年かけて「そうじゃないのかな」とわかっていただけたのではないでしょうか。中のコンテンツを見ていただいて、誤解をとくことができたのではないかと思っています。

--ビジネスの内容をもう少し詳しく教えてください

採用のソリューションについては、既存の「求人広告」や「人材紹介」とは形が違いまして、LinkedInの中に専用サイトを作ってブランディングしたり、メンバーのデータベースに対して採用担当の方がコンタクトをとれるライセンスを提供したりしています。

LinkedInのなかの企業ページ

マーケティングソリューションというのは、メンバーの業界や役職に対するターゲティング広告の提供です。IT企業の方が情報システムの管理職向けにプロモーションを打ったり、海外の特定の国をターゲットにして広告を打ったりできます。

3つ目は会員向けの「プレミアム契約」で、サービスは基本無料ですが、有料アカウントにアップグレードすることで、メンバーにメールを送れるようになる、プロフィールの閲覧制限が緩和されるなど、機能を拡張できます。営業職の方、ヘッドハンター、メディアの方など、個人としてコネクションを増やしたい方が利用されていますね。

潜在層へのアプローチ

--LinkedInの人材採用ソリューションと他媒体の違いとは?

一般的な採用手法として、自社の採用サイト、求人広告メディア、成功報酬型求人メディア、データベース検索&スカウトサービス、人材紹介など多く存在しますが、大半は転職意向のある方に対してコンタクトをとる方法です。対してヘッドハンティングなどは、転職活動に積極的じゃないけど、いい話があれば…という潜在層の気持ちをいかにしてもっていけるかというものです。一般的には、潜在層にコンタクトすることの難易度、価値が高いと思います。

そんな中でLinkedInの特徴は、メンバーの80%が潜在層であること。採用担当の方がデータベースに直接コンタクトをとれますので、注目されています。社内で求人要請があったときも即日アクセスして、スカウトメールを出すことができる。これまで応募者を集めて面接するまで数週間かかっていたものが、大幅に短縮されます。なおかつ、もともと自分から声をかけた候補者なので、途中で落とす率がかなり低くなります。

もちろん、このアプローチは1対1のコミュニケーションなので、年間採用100人、200人といったニーズを担うのは難しいと思います。採用担当者の皆さんに求められるのは、募集ポジションのバックグラウンドをしっかり理解して、どのチャネルをつかって採用活動を行うか見極めることだと思います。

日本の採用媒体に対する思いって…

--すごくいいことづくめに聞こえますが、採用担当の目利きは重要になってきますね。

そうですね。今採用に関わってる方々の主な仕事内容を見ると、候補者の日程調整や、選考進めるための部門調整のウェイトが大きくなってしまっている部分があるでしょう。候補者を直接口説くとなると、不得意分野に感じる方もいるかもしれません。

しかしマーケットの変化に伴って、改めて会社の顔として自社の魅力を伝え、かつ社内の事業マネージャーにも候補者のアピールをできるような人が求められています。新卒採用においては、説明会や大学訪問など発信が当たり前になってきていますが、中途採用だとあまり一般的なスキルではないように思います。

--ぶっちゃけ、現在の日本の採用媒体についてまどろっこしいと思ったりされないですか…?

企業が学生さんに特化した情報を発信できる、学生さんが複数の情報を一気に見れる、というメリットは大きいと思います。ただ各社が自社サイトなどでも情報発信をしていますので、独自性のあるコンテンツは必要なのではないかと思いますね。今まで求人媒体がエントリーの窓口を担っていたと思うのですが、ほかの接点もできてくると思いますので、どこに強みを持つのか、求められるのではないでしょうか。