ローランド金沢の「頭脳パン」(126円)。レトロなパッケージが石川ではおなじみ

皆さんは、頭がよくなると言われているパン「頭脳パン」をご存じだろうか。これは石川県金沢市にある製粉会社・金沢製粉製造の「頭脳粉(ずのうこ)」を原料としたパンで、県内のパン屋さんやスーパーでは定番商品だ。一体どんなパンなのか、なぜ頭がよくなると言われているのか、本当に頭がよくなるのか。気になる頭脳パンについて探ってみた。

脳の働きをよくするあの成分を使用

頭脳パンの始まりは1960年にさかのぼる。当時、白米とパンの主食論争が繰り広げられる中、大脳生理学者の故・林髞(たかし)博士が、「胚乳部分にビタミンB1が多く含まれるパンの方がよい」と唱えていた。脳の働きに必要なエネルギー源・ブドウ糖を分解するには、ビタミンB1が必須。そのビタミンB1を豊富に摂れば、脳の働きが活発になるというのだ。

そこで金沢製粉など全国の製粉・製パン業者が集まり、その理論に基づいてビタミンB1を多く取り込む製法で作った小麦粉「頭脳粉」を開発した。一般的な小麦粉100gに含まれるビタミンB1は約0.1mgだが、頭脳粉には約0.17mg以上含まれている。これが「頭がよくなる」と言われる理由だ。

頭脳パンは発売当初、画期的なパンとして人気を集めたが数年で下火に。しかし、金沢製粉だけが頭脳粉の製造を続け、何度かのブームをへて現在に至る。今では金沢製粉が唯一の頭脳粉製造業者になった。現在、県内外の製パン会社に卸しており、各メーカーは同じ頭脳粉を使いながら、それぞれ独自の頭脳パンを販売している。

映画にも登場した頭脳パンはこれ!!

地元では、元祖・頭脳パンと言われるレーズン入りのシンプルなパンが定番だ。そこで今回、石川県内で販売されている「頭脳パン」をいくつか紹介していこう。

まず、金沢市内にあるパンとお菓子の製造会社「ローランド金沢」の頭脳パンは、まさに昔ながらのレーズンパン。大きさは時代に合わせて以前よりは少し小さめになっているものの、パッケージは発売当時のままで、そのレトロな姿を見ただけで懐かしむお客さんが多いという。

そんなローランド金沢の頭脳パン、実は2011年公開の映画『はやぶさ/HAYABUSA』に登場している。竹内結子さん演じる主人公の研究員が頭脳パンをかじるシーンがあり、パッケージもドーンと出てくるのだ。映画を見て「あっ、頭脳パンだ」とうれしくなった石川県民も多かったようだ。

ローランド金沢の頭脳パン

手頃な大きさで食べやすいのも魅力

パッケージ裏面には頭脳パンの説明書き

博士風のキャラクターも目印

老舗パン屋さんこだわりの頭脳パン

金沢市内のパン屋さん「パンブラザース アベ」の「頭脳パン」(168円)は、風味と香りを出すためしっかり焼いてあるのが特徴。ラム酒に漬けたというレーズンをアクセントにソフトに仕上げてある。昔から変わらないおいしさで、年配のお客さんを中心に「懐かしい」と買っていく人が多いそうだ。

パンブラザース アベの頭脳パン

シンプルだけど味わい深い

ちなみに、パンブラザース アベを始め何社かのパッケージには、「頭脳パン連盟」という文字が入っている。頭脳パン連盟とは、頭脳パンを開発する時に参加した製粉業者などで結成された任意団体のこと。50年以上がたった現在は実態もなく活動もしていないが、パッケージだけに当時の名残が残されている。

開発当初の名残が感じられる「頭脳パン連盟」の文字

イギリスパン型の頭脳パンも

白山(はくさん)市のパン工場「ナカシマパン」の「頭脳パン」(158円)は、イギリスパンのように四角くて山型なのが特徴。実は、食パン用の小さな型を使って焼き上げているため、このような形になっているとのだとか。県内のスーパーなどで販売されていて、昔ながらのパッケージと形や味に惹かれて買っていくお客さんが多いという。

ナカシマパンの頭脳パン

サイズが大きめで1個食べるだけで大満足

ナカシマパンの頭脳パンは、薄緑色のシールが目印

これら3つの頭脳パンは県内で作られているが、頭脳粉は県外にも卸されていて、埼玉県の伊藤製パンでは1992年から頭脳パンを製造している。形や味はかなりアレンジされているが、現在も関東圏のスーパーやコンビニ、大学の売店で販売されていて、関東出身の人や学生時代を関東で過ごした人の中にも「頭脳パンは青春の味」という人がいるそうだ。

「頭がよくなる」はあなた次第!?

とにかく「懐かしい」という声が聞かれた頭脳パン。そのような感想を持つ人は、何度かブームになった頃に学生時代を過ごし、当時よく食べていたという人が多いようだ。

「頭がよくなる」という点については、パッケージに「毎日食べてよく勉強して優秀な成績をあげてください」と書いてある通り、「あくまでも努力が必要」という声が聞かれた。しかし、当時受験生だった人などを中心に、頭脳パンが将来に向かって頑張る気持ちを後押してくれたことは間違いないようだ。

昔ながらのおいしさで石川県民を魅了する「頭脳パン」。これからも毎日の食卓で、また、学生さんたちの味方として愛され続けていきそうだ。