本誌でもすでに報じているように、Microsoftの新CEO (最高経営責任者)としてSatya Nadella (サトヤ・ナデラ)氏が登用された。興味深いのは、Bill Gates氏がTechnology Advisorとして積極的に開発や経営に参画すると発表された部分だ。創始者であるGates氏、営業畑のSteve Ballmer氏、そしてソフトウェアエンジニア出身ながらもエンタープライズ部門を牽引してきたNadella氏の関係は、ローマ時代の三頭政治を連想させる。

Nadella氏のリーダーシップは未知数なだけに、新たな未来図を描き産み出す能力が備わっているか現時点で不明だ。"IT界の巨人"にたとえられる、Microsoftが次なる第一歩をどのように踏み出すのか、今後も注視したい。

Windows 8.1 Update 1でマウスの利便性が戻ってくる

さて、2014年3月や4月といったリリース時期がささやかれている「Windows 8.1 Update 1(仮称)」。ネット上には、Build 9600.16596がリークされ、いくつかの情報が明らかになってきた。本レポートではおなじみの著名なMicrosoftウオッチャーPaul Thurrott氏をはじめ、海外では多くのWindows 8.1 Update 1に関する機能報告が掲載されている。今週はこれらの情報を一度整理してみよう。

今回リークされたバージョンは2014年1月14日にビルドされたものだ。一見するとデザイン面の変更は少なく、新機能やバグフィックスなどを含めた修正が中心となっている。

検索ボタンと電源ボタンがスタート画面に追加

スタート画面にはユーザーアイコンの横に、検索ボタンと電源ボタンが並ぶようになった。前者は検索チャームを呼び出すボタンであり、後者はスリープやシャットダウンといった項目をメニューから選択するためのボタンだ。

Windows 8のプレビュー版が公開された当初から、電源に関する操作方法がわからない、という不満の声が上がっていた。今回の新機能はマウス操作を前提に強化したのだろう。

タイルにコンテキストメニューが追加された

スタート画面のタイルを右クリックするとアプリバーが現れていたが、Windows 8.1 Update 1の場合、コンテキストメニューが現れるようになった。項目を確認すると上から<Unpin from Start>、<Pin to taskbar>、<Uninstall>、<Resize>が並んでおり、マウス操作で、アプリケーションのピン留め操作とアンインストーラーの実行、そしてタイルサイズの変更が実行可能になるようだ。

<Resize>のサブメニューには、Small/Medium8/Wide/Largeの選択肢が用意されていた。今回は検証できないが、タッチ機能を備えるデバイスでは従来どおりアプリバーが現れるはずだ。

新しいアプリの通知とアプリビューの表示サイズが変更可能に

Windows 8からWindows 8.1への変更点として、インストールしたアプリケーションがスタート画面に自動的にピン留めされなくなったことがある。そのため、アプリビューを<インストール日順>に変更しないと、直近にインストールしたアプリケーションを探すのが難しかった。

この点を踏まえてWindows 8 Update 1では、スタート画面とアプリビューを切り替える部分に新しくインストールしたアプリケーションの数をメッセージで表示するようになった。また、アプリビューに関する設定チャームの「タイル」に、<Show more apps in Apps View>というスイッチも加わっている。これは、アプリビューのアイコンサイズを小さく表示するという機能だ。確かにフルHDクラスの解像度でアプリビューを見ると、間延びした印象があったため、ユーザビリティを考慮した改善といえよう。

「PC設定」にディスク容量が加わる

「PC設定」にも新たな項目が加わっている。日本語版でいうところの「PCとデバイス」に「Disk space」という項目が加わり、ディスク全体の空き容量がグラフで確認できるようになった。また、Windowsストアアプリが占める容量や、ドキュメントやメディアファイルが占める容量が数値で示される。さらに「検索とアプリ」の「アプリサイズ」へのリンクが用意される。

タスクバーでWindowsストアアプリの管理が可能

デスクトップに目を向けてみよう。噂どおり、タスクバーには起動中のWindowsストアアプリが並んでいる。これは「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」ダイアログに加わった新項目<Show Store apps on the taskbar>によって左右され、有効な状態ではバッグラウンドで動作するWindowsストアアプリもボタンとして並んでいた。

また、Windowsストアアプリもデスクトップアプリと同じようにタスクバーへのピン留めが可能だが、フルスクリーン表示であることに変わりはない。ただし、自動的に消えるタイトルバーが追加され、左上に現れるアプリケーションボタンからは、<Close>、<Minimize>、<Split Left>、<Split Right>といった項目を選択できる。

まとめ : ラピッド&リリースを具現化した改良版

ほかにもMicrosoftアカウントでサインインした場合は、SkyDrive改めOneDriveのアイコンが通知領域に加わりInternet Explorer 11のバージョンを11.0.3に更新するといった変更点が見受けられた。

現時点で確認できたのはこの程度だが、ラピッド&リリースの言葉が示すとおりWindows 8.1 Update 1は大規模な変更はなく、ユーザーニーズに応えて整合性を図った改良版である。

そもそもタブレットでの操作に主眼を置いたモダンUIを、キーボード&マウスなどで構成されたPCに適応させることは難しい。AppleはiPadに搭載するOSとして、Mac OS Xを改良するのではなく、iOSを開発したことを見ても明らかだろう。2012年夏にリリースされたWindows 8から数えると、ずいぶん遠回りした印象を受ける。

もちろんこれらの改善がすべて正式Windows 8.1 Update 1に反映されるか定かではないが、現在Windows 8.1を利用しているユーザーにとっては歓迎すべき存在になりそうだ。

阿久津良和(Cactus)